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おかしなマイナンバーの議論

デジタル庁創設やマイナンバーカードの普及についての議論が起こっていますが、多くの人が誤解していることがあります。それは、マイナンバーが監視社会を作る、個人情報保護ができなくなる、というものです。

問題なのは番号ではなくアクセス権

2020年現在においては、マイナンバーと監視社会にはほとんど関係がなくなっています。なぜなら、AIなどのIT技術の発達によって、なにも番号で紐づけなくても国家権力が個人を特定し監視社会を作ることが可能になっているからです。問題は国家権力がデーターベースにアクセスできる権利があるか、というアクセス権の問題です。

また個人情報保護の問題も、アクセス権、特に個人認証の問題です。2020年現在では、より安全な個人認証の方法は数多く開発されており、適切な個人認証がなされていれば問題は小さくなっています。逆に適切でない個人認証がなされていなければ、ドコモ口座問題のようなことが起こります。

超単純にITシステムをイメージすると、下記のようになります。マイナンバーが普及するということは、各データベースの項目の一つにマイナンバーが増えるというだけです。

図2

マイナンバーが普及したからと言って、データベースが統合されるわけではありません。マイナンバーがわかったからと言って、そのデータベースや各種のセンサーにアクセスする権利がなければ、何の意味もありません。

国家権力が監視社会を作るためには、データベース等へのアクセス権が必要です。そのためには中国のようにデータベース等へのアクセス権を国家が握る法律を作る必要があります。これはマイナンバー関係なく、一種の憲法問題で、政府がAIで市民を監視することがないように憲法を改正する必要があります

また、アクセス権と、マイナンバーは本質的には関係ありません。マイナンバーをアクセス権を得るための認証のためのID番号として使おうとするから、おかしなことになるだけで、マイナンバーを認証に使わず、より安全な個人認証方式を使うようにすればよいだけです。ID番号とパスワードだけに頼らない安全な認証方式はすでに数多く実用化されています。

なぜマイナンバーを阻むのか?

その理由は縦割り行政と甘い汁を吸うITベンダーにあります。マイナンバーが行政の様々な部分に導入されると、データベースを統合せずとも、アプリケーションの統合が可能になってしまいます。アプリケーションは縦割り行政そのものであり、アプリケーションがバラバラなことでITベンダーの仕事が増えます。アプリケーションを統合されたら仕事にあぶれる行政の部署や企業があるのです。彼らはマイナンバーの導入に強力に反対します。

しかし、行政の効率化ができないことや、無駄にITベンダーに利益をもたらすことで、技術の進歩によって市民が享受できるはずのことが、得られないということがあってよいのでしょうか?

菅新総理や平井卓也担当大臣にはぜひこのような旧弊を打破し、技術の進歩によって市民が幸せになる社会を築いていただけることを期待したいと思います。

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