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中小企業への劣後ローンと無議決権株式の活用を
5月4日の専門家会議の提言で、新型コロナウイルスが1~2年の間持続的に経済に影響を与えることがはっきりしました。当初は終息までの2,3か月のつなぎ資金を確保すれば大丈夫だというのであったのが、1年以上耐えなければならない、というのでは、もはや企業の存続にかかわります。企業活動の本質的な方向転換が避けられません。
しかし、方向転換を行うにしても、そのための資金が必要です。しかも、早期退職等の人員整理を行うと、単に出て行くだけのお金ということになり、返す当てがない、ということになります。これらを単なる融資だけで行おうとするならば、その後長い間融資の返済に追われることになります。その間新たな投資も行えず、企業活動はさらに縮小し、日本経済は長期の景気悪化に苦しむことになります。
ここで検討したいのが、中小企業に向けた政府系金融機関による劣後ローン(資本性ローン)及び、無議決権株式の活用と、中小企業向けの産業再生機構の立ち上げです。
劣後ローンとは、一般の債権より支払い順位が劣るローンであり、一部を資本とみなすことができるので財務状況が良くなります。一方で、利益が出た場合にはより多くの金利を取ることができるので、業態の転換に成功した企業からの収益で転換できなかった企業の失敗を補うことができます。
また、無議決権株式を利用すれば、現状の経営者が経営権を保持したまま安定した長期的な資本となる一方で、企業業績が改善した際に配当を出さなければ経営権に関わるので乱用を防ぐことができます。
現在、劣後ローンは既に日本政策金融公庫のものが存在していますが、使用条件がかなり厳しくなっています。これを緩和するとともに、中小企業向けの産業再生機構を各地で立ち上げ、無議決権株式を用いて企業の変革をサポートしていくことが有効でしょう。優先配当に加えて、買取請求権をつけることで、最終的な処理も可能になります。
これはある種徳政令のようなものです。しかし、税金を単にバラマくのではない点は、企業が変革を促し、利益を上げるようになればお金が戻ってくる点です。長い目で見れば、国庫に与える影響は軽微でしょう。
景気が悪化する中で、デービッド・アトキンソン氏が言うように生産性の向上は避けられません。一方で、中小企業がどんどん倒産し失業者があふれることはだれも望まないでしょう。この機会に、中小企業の生産性の向上が促されるように、上手な資金の流し方を期待したいと思います。