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JC論:青年会議所の組織の作り方
LOMの組織をどう作るか、ということに毎年次年度の理事長と専務は頭を悩ませていると思います。組織の作り方を、5ステップで考えていきましょう。
ステップ1:メンバーを知る
青年会議所の組織には確実なものはほとんどありません。専務理事さえいないLOMも現実にあります。理事長一人しかメンバーがいないLOMから、千名を超えるLOMまであります。どんな形でも取りうる、それがLOMの組織です。とはいえ、理事長とメンバーがいるということは確実に言えます。一人のLOMでも理事長兼メンバーがいます。だから組織を考える時には、まずメンバーから考えることが重要です。
どんなメンバーがいるのかを知ることなしに、組織を作ることはできません。同時に、メンバーが変われば組織は変わります。先輩の時にこうだったと言っても、その時のメンバー数だからできたことであって、今のメンバー数で本当にその組織ができるのかを考える必要があります。そもそもLOMの成長過程では様々な組織があったはずです。参考にするなら同じメンバー数の時代と比較したほうがマシかもしれません。
どんな能力と勇気と情熱を持つメンバーがいるのかをじっくり考えてください。その人の経験や人望や魅力はどうでしょうか?キャリアを積んだメンバーが多い時代と、入会してから日の浅いメンバーが多い時代では、組織の形も相当変わるはずです。同じメンバー数でも、経験豊富な熱い情熱を持つメンバーが多かった時代と、JCがなんなのかよくわからないメンバーが多い時代では当然組織も変わらなければなりません。
ステップ2:「やること」を決める
まず組織を考える際に重要なのは、「やること」を先に決めることです。「やること」を決める手順は、「絶対にしなければならないこと」「やりたいこと」「すべきこと」の3つを決めることです。
まずは、「絶対にしなければならないこと」を決めましょう。「絶対に」というのがポイントです。これをしなければLOMがなくなるレベルのこと以外は、「絶対にしなければならないこと」にするべきではありません。これが多ければ多いほど、組織づくりは苦しくなります。公益法人のLOMの組織が苦しくなったのは、法律上この「絶対にしなければならないこと」が他よりも多いからです。
一方で、理事長にはこの「絶対にしなければならないこと」、と決めることができます。後悔しないためにもまずこの「絶対にしなければならないこと」を決めましょう。これだけはやる、と決めなければ、それはおそらくできません。
「絶対に」が決まったら、「すべきこと」ではなく、「やりたいこと」を決めましょう。多くのメンバーがワクワクするような「やりたいこと」、それが組織を1年間引っ張る原動力となります。「やりたいこと」の全くない組織など単なる機械であって、誰もそんな組織に魅力を感じません。
「絶対に」と「やりたいこと」が決まったら、「すべきこと」を整理してみましょう。整理とは、「不必要なものを取り除くこと」です。必要か、不必要かの第一基準は外部に迷惑がかかる、LOMの信用を失うということです。他者に迷惑もかからない、LOMの信用も無くさないのに、「すべきこと」、って本当にあるでしょうか。背景や目的をよく考えて整理してください。
ステップ3:役割を決める
「やること」が決まったら、役職より先に役割を決めましょう。役職というのは、役割を果たすためにあるわけで、役割は常に役職より先にあります。今ある役職も、なんらかの役割が必要だからできたわけです。そして、役割は時代に合わせて新しくできたり、無くなったりします。役割の有無を考えずに先に役職を決めると、その役職が作られた理由となる役割がなくなっていたり、新しい役割が増えていたりして、負担が偏る原因となります。
それでは、LOMにはどんな役割があるでしょうか?考えてみてください。役割は、「やること」から出てきます。「絶対にしなければならないこと」のために、どんな役割が必要でしょうか?例えば「定時総会」は「絶対にしなければならないこと」ですが、総会には、総会の議案を作る役割、総会を設営する役割、総会の議長という役割の3つは少なくともありそうです。そうやって各「やること」から、役割を導き出してください。あれもこれも、ではなく、必要な役割のみを決めていくことが大切です。
ステップ4:役割に人を当てはめる
役割が導き出せたら、その役割をメンバーリストから、誰がその役割をやるべきなのか、誰ならその役割を果たせるか、大まかでいいので考えてみてください。
ここで重要なのは、「この役割はこの人が必要」ということを発見することです。誰でもできるだろうという役割はひとまず置いておいて構いません。JCの組織は大抵階層構造になっていますが、上位の役職者が必ずしも全ての役割を果たせるわけではありません。だから、ある役割を果たすことのできる人が組織の縦ラインのどこかにいないと、または、横断的にサポートできる立場にいないと、役割が果たせなくなります。
例えば、「公益法人の報告書を作る」という役割があり、そのラインに一人も経理のことがわかる人がいない、という状態になると、報告書ができなくなります。公益法人であれば、報告書の作成は「絶対にしなければならない」ことですから、これができないとLOMは行政指導をうけることになります。実際にそのような例もあります。もちろん専門的なことは専門家を頼ればいいですが、自分たちでやらなければならないことも必ずあります。
もちろん「やること」の中には適任が見つからないということもあるでしょう。でも、それは外部との連携を考える機会であるかもしれません。また、「絶対にしなければならないこと」以外は、失敗を覚悟してやらせてみる覚悟も重要です。それ自体が成長の機会ですし、適任ではない、と考えつつ役割を割り当てるからこそ、フォローも重点的に行われるからです。
ステップ5:組織を作り、役職を当てはめる
役割に割り当てるべき人が見つかったら、組織を作って、役職を考えていきましょう。組織を考える上では、実は上から、ではなく、下から考えるほうがうまくいきます。
まず、役割ごとにグループ化して委員会やスタッフのグループ(事務局など)を作りましょう。ここでは、組織階層の上の人しかできない役割は一旦おいておきます。グループができたら、委員長や事務局長といったそのリーダーたる役職ができます。そして、リーダーの役割の一部を担う、副委員長や幹事といった役職ができます。さらに、この時、そのグループのメンバーとして絶対いてほしい人も考えるべきです。この時、絶対に必要という人以外は空けておいて構いません。
グループ化とグループのリーダーが定まったら、そのリーダーを誰が面倒見るのが良いか決めましょう。ここで重要なのは、役職ではなく人です。誰が面倒を見るのが最適かを考えて、まずは役職名を決めずに配置をしてみます。委員長の上ともなると、なれる人が大抵限られているので、そう難しいことではないでしょう。最適な配置が見つかったら、その人に合った役職をつけてみます。この時、副理事長はもちろん、LOMのサイズによっては常任理事や室長と言った中二階の役職もあるかもしれません。役職名は正直なんでもいいので、スタッフ側だと副専務や常務なんてポジションもあるLOMもあります。経験年数やLOMの過去のポジションから適当なものを決めてください。
その後、役職者にしかできない役割を役職に合わせて割り当てていきます。直前理事長や顧問や特別顧問といった人がいる場合は、この時役割を決めていけば十分です。これで大体の職務分掌が完成し、組織が出来上がります。
一通りできたら、残りのメンバーを空いているポジションに割り当てていきます。重要な役割と人が合致していれば、あとは適当に決めていってもそう問題はありません。慣れていないことをするのも良い機会の提供になります。
おまけ:日本JCの場合
日本JCの本会・地区・ブロックの場合、誰が出向者となるかわからない以上、ステップ1、4、5はなかなか難しいように思えます。そこで、日本JCでは、できるだけ詳細にステップ2「やること」とステップ3「役割」を決めることにしています。そして、できるだけわかりやすい「委員会名」や「何をやるのか」の資料を作成して出向者を募集するわけです。わかりにくい委員会名をつけたり、何をやるのかがわからない委員会を作ったりすると、うまく出向者を集めることができず、失敗することになります。