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【中編】~言語の壁を乗り越える旅 オタワ編~ 世界は優しさ以上で想像不可能!? きっと“なんとなく”で出来ている②
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第5章(続き)
鋭いツッコミ
翌日になって。
登校中の私は、いつにもまして上機嫌だった。学ぶのが楽しい。そう思えるのは、レニー先生に巡り合えたからだ。
足取りの軽さに浮かれながら自分の席に向かうと、その隣には既に先客がいた。
昨日の授業で見かけた覚えがある。確か出身は中国と言っていた気がする。彼女とは直接話したことはないけど、同じアジア系の生徒として少なからず印象には残っていた。
それは相手側も一緒だったらしく、彼女のほうから話しかけてくれた。
「あなた、日本人だよね? 下の階のクラスに、前同じクラスだった日本人女性がいるから、良かったら紹介するよ」
彼女からの提案に、私はすぐさま紹介をお願いした。
休み時間に紹介してもらったその女性――瑠美さんは、ご主人の海外転勤に合わせてカナダへとやってきたという。ここでの生活はもう2年になるそうだ。
彼女はこの学校の他に、パイプオルガンの教室に、ジム通いをしているそう。そんな充実したプライベート生活が送れているのは、瑠美さんの旦那さんの稼ぎが良いからだろう。実際瑠美さんが働かなくても問題なく過ごせていると言うのだから相当なようだ。
日本人同士、瑠美さんとは海外話のあるあるで盛り上がる。特に学校での苦労話は、お互い首が取れそうになるほど共感に頷き合う。
その内の1つが、生徒たちの自主性とのギャップ。
周りのみんなが当たり前のように発言をしていく中で、自分だけが声を出せずに縮こまってしまう。そういう疎外感は、瑠美さんも痛いほど味わってきているそうだ。
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