合コン開始まで10分、人数足りないどうなる?!
「ごめん、たけひろ、今日仕事長引きそうで行けないわ(^^;」
合コン開始の19時まで残り1時間。そそくさと仕事を終え、新宿へ向かう途中の車内で送られてきたLINEを見て顔が強張るのを感じる。
(まじか。)
だが、それも一瞬だ。今まで合コンで人数が揃わなかったことはない。
(大丈夫。路上で声掛けするか、Hubで声掛ければ何とかなる。)
一応もう一人の参加者Sに助けを請う。
「すまん、一人キャンセル入って、声掛け頼むわ(;'∀')」
彼は大学時代50回以上合コンを経験してきた猛者で友人は多い。
「まじか!おっけ!!けどあまり期待しないで(笑)」
さて、どうするか。電車内で新宿近辺に住む友人5人には既に緊急招集をかけている。ただ、あまりにも急だ。期待はしていない。
まず、西武新宿付近のHubへ向かおう。靖国通りは最終手段だ。地下へ降り、酒を注文すると同時に客層を確認。
大学生らしき女性2人組が奥のテーブルに腰掛け、欧米系外国人が複数名カウンターに立ちながら飲んでいる、その横で社会人3.4年目と思しき男性2人がテーブルを挟み向かい合う形で座っている。
(一人はいないか。2人組に行こう。)
「あの、今少しいいですか?めっちゃ困ってて(;'∀')」
前置きはいらない。要件を先に言うことで状況が逼迫していることを肌で感じてもらう。変化球よりも直球が心に刺さりやすい。
「え、何ですか?」眼鏡をかけた方の男が困惑気味に答える。
「いや、実は、今日合コンする予定だったんですけど、さっき一人来れないって言われて、もし良かったら来てもらえないかなって。。。」
語尾は濁す。よく自己啓発系の本で「語尾は、はっきり言うことが大事!」とあるがあれは嘘だ。論理的な人間や頭の回転が速い人には有効だが、性格がおっとりしている人や、困っている人を放っておけない優しい人には、(怖い。)という印象を与えかねない。特に初対面なら尚更だ。
「あー、、そうなんですか、ただ僕たちサッカー観に来てて、すみません」
あっさり断られた。まあ仕方ない。次だ次。さっさと飲んで靖国通りのHubに行こう。合コンまで残り30分。
(お!いるいる。)免許証を入り口で提示し、入店しながら店内を一望する。
椅子の無いカウンターで、一人、ジャンボサイズのクールサイダーを嗜むスーツ姿の男性を発見。年齢は30代前半といったところか。
注文した同じくクールサイダーを片手に男性の隣に場所を取る。
「ぁ、お疲れ様でーす。」
グラスを軽く差し出しながら、僅かながら会釈も2回入れ、自然なトーンで話しかける。さっきはいきなり本題に入って失敗した。ここは距離を縮めてから本題に入ろう。
「お疲れ様です。」
グラスを合わせ、一口含む。ゆっくり味わいながら一息着いたところで話しかける。会話はテンポが命だ。ここを外すと居心地が悪くなって仕方ない。
「結構来るんですか?」
「いや、初めてなんですよ。」
「あー、そうなんですか。結構馴染んでるように見えたので(笑)」
「いやいや、よく来るんですか?」
「2週に1回くらいですかね。」
「おー、さすが東京の人は違いますね。」
「こっちじゃないんですか?」
「はい、仙台で普段働いてて、妹の結婚式で来たんです。」
「おー!めでたいですね、おめでとうございます。もうされたんですか?」
「いえ、明日なんですよ、だから今日は都会のBarに行ってみたいなと思って(笑)。だけどもう緊張しちゃって。」
「全然見えないですけどね(笑)てことは、女性を探しに、ですか?」
「いえ、もう結婚しているので―」
あかん、既婚者が合コンに来るわけない。にしても指輪を見落とすのはミス。残り15分。なかなかまずい。店まで歩いて7分。残り8分で外に出て声掛けして男をつかまえて行かなければ大惨事になる。合コンで一番まずいのは人数が合わないこと。これは一回経験して地獄を見てる(これ面白いから今度書くね)。
「あのー、すみません!」
普段ならスルーする男性に声を掛けまくる、かつ小走りで。駅に向かう人ならこれから帰る人だろう。時間はあるはず。合コンやるって言ったら来るでしょ?
しかし、誰もOKが出ない。
「これから飲むんすよ。」
「他で約束あるんで、すみません。」
新宿にいて暇な方がおかしいか。いよいよ焦りがピークに達した。ここまでか。そう思った時、視界に一人の男性が映る。
明らかに挙動がおかしい。歌舞伎町の入り口のドンキ・ホーテを左手に、向かいの豚骨ラーメン屋を見上げ、視線は徐々に上へ上へと上がっていく。見た目は爽やか系の20代半ば、同年代といったところか。
(何か求めてる。)
気が付いたら駅を背に走り出していた。この人がダメだったら女性陣には土下座して謝ろう。これまでの全てをぶつけ全力で合コンに連れて行くと決めていた。
「お兄さん!!この後時間あります?!」
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