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『仮面ライダークウガ』第6話感想

第6話 青龍 (その2)

 『クウガ』という作品は、クウガが心の動きで変身したり変化したりするライダーなのも、他の登場人物の心の動きも丁寧に描くのがいいですね。

 水族館の休憩スペースらしきところ。明るい時間帯なのか照明なのか、揺らめく水の向こうから明るい光が差している。
 人間体の未確認生命体たちは思い思いに過ごしている。サスペンダーにチェーンのいかつい体つきの未確認生命体などは、何故か逆立ちにいそしんでいる。

 指輪に付けた爪か牙のようなものを見ているバラのタトゥの女。そこへ、足音を響かせて人間体のバッタ型の未確認生命体が戻ってくる。どこか得意気に長口上を述べているところを見ると、もう何人を血祭りにあげたんだとか、クウガと戦ったけどあんな奴大したことないみたいなことを言ったんだろうか(完全に当てずっぽう)。

 それを聞いて「ケッ」と小馬鹿にしたような顔をするウロコ模様のベストとパンツのセットアップの未確認生命体。
 第3号もまた、気に入らなそうに鼻を鳴らす。第1号を見捨てて逃げたのに、よくもそんなエラそうな態度取れるな、お前。

 ご満悦なバッタ型の未確認生命体に、少しだけ柔らかな表情と口調でバラのタトゥの女が話しかける。バッタ型の未確認生命体がどう聞いても「当然だ」と空耳アワーしてしまう何事かを返すと、バラのタトゥの女は満足そうな笑みを浮かべる。

 バッタ型の未確認生命体はますますご機嫌になり、いつの間にかグラスを手に取って立ち上がっていた第3号の手からそれを奪う。その場にいた未確認生命体たちに向け、勝ち誇ったような笑みを浮かべて同じ言葉を何度も繰り返すと、ふと立ち止まってグラスの中の飲み物を一気にあおる。

 ところで、バラのタトゥの女をはじめとする未確認生命体たちは、一体どんな風にここに侵入し、このエリアを占拠し、果ては飲み物まで調達したのか。絵面としてはいかにもなアジト感があるが、背後の大きな水槽で元気いっぱいに泳いでいる魚たちを見ると、ちゃんと営業してる水族館ぽいので、最初この巨大水槽を見た時どんなリアクションしたのかも少し気になる。

 東京都・杉並区内。朝7時前。
 昨日のクウガとバッタ型の未確認生命体が最後に戦ったビルから見える大きな煙突と、風にたなびく煙。そのビルの前に、一台の車がやってくる。
 車から降りてきた一条刑事は、風が吹く中、ビルを見上げたり、周りを見回したりしながら「何故だ……なぜあの時ヤツは逃げたんだ?」とつぶやく。ヒントになるものを探す彼の目は、やがて煙を吐き出す大きな煙突を捉えるのだった。風の中に立つ姿もカッコいい。

 文京区内。朝7時ごろ。
 ポレポレに向かって歩く桜子さんは、浮かない顔をしている。近くまで来て立ち止まり、五代雄介の部屋がある2階に目をやると、くるりときびすを返してしまう。

 ポレポレ店内。
 2階から駆け下りてくるおやっさん。電話の脇に置かれた受話器を取ると開口一番「ダメだねぇ!ほんっとよく寝ちゃってる」と電話の相手に言う。
 五代雄介の様子を聞かれて2階の部屋まで見に行ったらしく、どれほどよく寝てるのかを説明するおやっさん……ここから、おやっさんが五代に何をしたかを具体的に語るのだけど、トリッキーな行動がちょいちょい混ざっていて、もう台本なのかアドリブなのか分からないw

 おやっさんの語りに合わせ、靴も脱がず着替えもせず、まさに帰ってくるなりベッドに倒れこんだという風情で眠っている五代の映像が流れる。
 とにかく何をしてもビクともしないで寝ていることに「アイツがこんなの初めてだ」というおやっさん。

 電話の相手は一条刑事で、警視庁内を歩きながら話をしている。彼はおやっさんに後でもう一度電話をすると言い、五代をよく寝かせてやってほしいと話す。

 電話の向こうでおやっさんに何を言われたのか、一条刑事は「は?」と足を止め、困ったような表情を浮かべる。「あ、いえ、今日は冒険の話は」と丁寧にお断りして電話を切る。
 何故そのタイミングで冒険の話をしようとしたんだおやっさんはw

 再び歩き出す一条刑事の携帯が鳴る。かけてきたのは椿医師である。手術室の中の電話を使い、手術着姿の椿医師が「気になることがあってな。どうでもいいことかもしれないが」と前置きして話し始める。

 警視庁。電話で椿医師の説明を聞いている一条刑事の表情が変わり「何だって」と驚く。

 とある線路沿いのアパート。
 はんてん姿(!)でゴミ出しをしていたみのりちゃんが、アパートの階段の手すりにもたれて、うつむいている桜子さんを見つけてほほ笑む。
 みのりちゃんが名前を呼ぶと、桜子さんは階段の手すりから体を離し、かすかな笑みを浮かべてみのりちゃんに手を振る。

 ここで、みのりちゃんはちゃんと自立して生活していること、五代兄妹と桜子さんは家を行き来するような仲であること、桜子さんがみのりちゃんにとっても慕われていることが分かる。

 豊島区内。朝8時過ぎ。わかば保育園の職員室。
 席に座った桜子さんが五代のことを話したようである。みのりちゃんが「お兄ちゃん、無茶するからな」と相槌を打ちながら、お盆に乗せたお茶を桜子さんの前まで運んでくる。
 客用の湯飲みを桜子さんの前に置き、その隣の席の前に自分の湯飲みを置きながら「自分で歩いていたんなら大丈夫ですよ」と言う。さすが五代の妹と思わざるを得ない。桜子さんにお茶をすすめ、みのりちゃんも座る。

 桜子さんがおずおずと「みのりちゃんは平気なの?」と尋ねる。聞き返すみのりちゃんに「色々あって、五代君あんなことになっちゃって」という桜子さんに、みのりちゃんが思ったことを話す。
「危ない事をしないで、お互いのこと理解しあえないのかなって思うけど、きっとそうできる相手ならそうしてるだろうし、今までお兄ちゃん信じてダメだったことなんて一つもなかったから」
 明るく言ってのけるみのりちゃんに「そうなんだ」とだけ返す桜子さん。

 桜子さんだって五代雄介を信じてないわけじゃないけど、みのりちゃんは身内だからどうというものをはるかに超えた、レベルが違う信じ方である。

 イマイチ元気がない桜子さんに、兄が迷惑をかけたのかとみのりちゃんが尋ねると、桜子さんは首を振り、逆だという。「私、逃げてきちゃったの」およそ普段の桜子さんとはかけ離れているであろうワードをみのりちゃんが繰り返すと、桜子さんがうなずく。そして、それまで誰にも言えなかった思いを打ち明ける。

 五代の助けになるようにしっかりしなきゃって分かって入るけど、色々なことがあって怖くなってしまったこと。五代がケガまでして頑張っているのに、自分だけ逃げたいと思ったこと。

 すると、みのりちゃんが満面に笑みを浮かべて「いいんですよ」とはっきり言う。「いいんですよ、それで」ともう一度言うみのりちゃんに、桜子さんが反論しようとすると、みのりちゃんは続ける。「普通に考えて、普通にすればいいんですよ」……あれ、その言い回しどこかで聞いたような……。

 「普通に……?」と聞き返す桜子さんに、笑顔でうなずいて見せるみのりちゃん。そこへ、園児の一人が職員室の入り口の前に立ち、みのりちゃんに話しかけてくる。「雄介、いつくるの?」
 ハッとする桜子さん。みのりちゃんは笑顔で「さあ、いつかな~?」と園児に笑顔で答える。すると園児は「早く来ないとかくれんぼの鬼してやんないって言っといて!」と叫んでトコトコと去っていく。

 園児の可愛らしい言葉としぐさに思わず微笑む桜子さんとみのりちゃん。「みのりちゃん、あたし行くね」と桜子さんが立ち上がるが、その声にも笑顔にも元気が戻って明るくなっている。
 みのりちゃんも立ち上がると、桜子さんはお礼を言って、右手を握り親指を立てる。みのりちゃんも笑顔で、同じ仕草を返す。

 微笑ましいガールズトークを堪能したところで、その3に続きます。

初出:2021年8月7日 2024年5月2日加筆修正

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