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『仮面ライダークウガ』第7話感想

第7話 傷心(その2)

 逆光に映える拳銃。シリンダーを外し(外すって言うので合ってる?)、一発ずつ銃弾を込める。シリンダーを戻すと、カチッという音が響く。
 ここまで全部ドアップなんだけど、絵面とか画角とかライティングとか、銃器類を美しくカッコよく撮ることへの情熱がいつもながら素晴らしい。

 一条刑事が、精悍な表情で銃弾を込めた拳銃を片手で構える。すると「357の6インチか……」と一条刑事とは別のイイ声が流れてくる。隣のブースには杉田刑事がいる。二人は警視庁の射撃訓練場にいる。

 杉田刑事は手にしていた銃を置き、防護用のゴーグルをつけながら「エライもんを支給されたもんだな」と半ば独り言のように言う。一条刑事は構えを解いて銃を置き、「当初予定されていたP230じゃダメだと判断したんですね」と冷静に答え、防護用のゴーグルをつける。

 杉田刑事は耳当て(でいいのかな?これだと防寒用のモフモフしたヤツ思い浮かべちゃう……)をつけながら「しかし、こう長引くとは思ってもみなかったな。お前も、早いとこ長野に帰って彼女の顔でも見たいだろう」と一条刑事に話しかける。

 おおっと、令和じゃセクハラと言われかねないが、平成の作品だからいいのだ。そして一条刑事には長野に帰ると彼女どころか古女房みたいな部下がいるんだ……。

 同じように耳当てをつけていた一条刑事は「いませんよ、そんな」ときっぱり言って、今度は両手で銃を持って構える。杉田刑事も銃を手に取り、構える。

 一条刑事が発砲する。弾は円内には当たったものの、中心部よりはやや右に外れる。撃った後も姿勢が乱れず、余韻を残すように一条刑事が構えを解く。彼をチラッと見て、続けて杉田刑事が発砲する。
 杉田刑事の体が発砲音とともに反動で動く。大きく息をつく杉田刑事。これが本来のこの拳銃の威力であり、通常の人間の反応なんだね。

 手にしていた銃に目を落とし、「これでも太刀打ちできるかどうか」と言う一条刑事。同じように杉田刑事も自分の持つ銃を見て「こんなモンもらったはいいが……」と吐き出すように言う。
 一条刑事に顔を向け、杉田刑事はひときわ厳しい声で「アイツら人間に化けるんだろ⁉」と問いかける。正面の的に目を戻して「それでもオレたちは迷わず撃てるのかねぇ……コイツで」銃を再び構え、杉田刑事が発砲する。いいねえ、ジス・イズ・ハードボイルド!

 杉田刑事の銃弾は、的の円どころか、ボードの右上の隅に当たる。よく見ると左上に弾痕があるので、先に発砲した弾はそこに当たったのだろう。撃つ瞬間にあんなに反動で体が動いたら、そりゃ弾だって外れるわな。しかしそれが通常の人間である。繰り返すが、杉田刑事が普通なのだ。

 「やるしかありません」と決然と一条刑事が言う。そして先ほど受け取ったファックスに、遺跡の東南の滝の近くに、集団の墓のようなものが見つかったと記されていたことを話す。
 杉田刑事が息を呑んで彼に顔を向ける。未確認生命体は恐らくそこから蘇ったという彼に、杉田刑事があえて声をひそめて「集団ていうのは、どれくらいだ……?」と尋ねる。

 「最低でも……」と一度言葉を切り、それまで前を向いていた一条刑事が杉田刑事に顔を向け、思い切ったように「200」と告げる。その数の多さに「何ぃ……⁉」と驚く杉田刑事。

 一条刑事は正面に向き直り、今度は連続で発砲する。さっきと違い、弾は的の円の黒い中心部に当たり、しかも8点、9点、10点とどんどん中心に寄っていく。
 発射の反動にもビクともしないし、連発で撃ってるのに正確性を増していくとか、どうなってるんだよ一条刑事……!という視聴者の思いを代表するかのように、的を見ていた杉田刑事は驚きを通り越して呆れたような表情で彼に顔を向け、半ば笑うように吐息を一つ漏らす。

 一方で精悍な表情ながら、的中したことについては驚きも喜びもない一条刑事。床に落ちるいくつもの薬莢。金属音が重なり、美しく響く。一条刑事は表情を変えることなく、正面を見据えたまま左手で耳当てを外し、右手で防護用ゴーグルを外す。しばし的を見つめると、ブースを出て行く。

 銃弾を撃ち終えてからブースを出て行くまで、何でスローモーションにしたんだろう……ただの一条薫のイメージフィルムじゃん……ひたすらカッコいいだけじゃん……ありがとうございます幸せです……。

 それはそれとして、警察物としても、凄腕キャリアの若手と、現場で鍛えられてきたベテラン刑事が、お互いを認め合ったり心を開いていく様を丁寧に描いていて、そっちでもありがとうございます幸せですと製作サイドの皆様を拝み倒したい。

 射撃訓練場の出入り口に向かう一条刑事。出入り口が開き、先ほどの女性警官が元気いっぱいに一条刑事の名を呼びながら入ってくる。
 立ち止まる一条刑事に、女性警官が長野からの来客を告げる。予想外のことに、一条刑事の聞き返す声が裏返っている。
 女性警官は、訪ねて来たのは遺跡の事件で亡くなった夏目教授の奥さんと娘さんで、是非とも一条刑事に会いたいという旨を伝える。

 話を聞いて小さくうなずき、一条刑事が出入り口の前まで行くと、再び扉が開く。ちょうど男性警官が扉を開けたところで、彼は一条刑事を探していたらしく、その場で用件を伝える。
 捜査一課から出動要請が出ており、恐らくは未確認生命体が関わる事件だと連絡があったという。一瞬考えるようにわずかに顔を動かし、ちょっとだけ待っててくれと男性警官に告げ、一条刑事は射撃訓練場を出て行く。
 顔見知りなのか、女性警官は男性警官にあいさつするように手をあげると、一条刑事の後をついていく。

 警視庁内・対策本部の応接スペース。
 暗い表情で、うつむきがちに黙って座っている大人の女性と少女。夏目教授の妻と娘である。
 二人の前には緑茶が出されているが、一口も飲んだ様子はうかがえない。少女は膝の上に、布に包まれたものを抱えている。それには、桜貝を使った飾りが付いている。

 足早に一条刑事が歩いてくる。その斜め後ろを、小走りで女性警官が付いてくる。さらにその数メートル後から、先ほどの男性警官も追ってくる。
 応接スペースがあるのは広い会議室の片隅で、捜査員が話し合ったり動き回ったりしている。ここでじっと待っているの、ちょっと辛いかも。

 応接スペースまで来た一条刑事が二人に「お待たせしました」と声をかける。夏目夫人と娘は立ち上がり、夫人がその節はどうも、と一礼する。一条刑事も事件後の捜査協力について礼を言って頭を下げる。
 女性警官が小さく何度もお辞儀をして、そっとその場を離れる。ようやく追いついた男性警官は、女性警官がいなくなって慌ててしまい、礼もそこそこにして彼女の後を追ってその場を離れる。芝居が細かい。いいぞ、もっとやれ(だからもうやった)。

  後ろの二人の動きなど知る由もなく、一条刑事は夏目夫人たちに座るよう勧める。再び座る二人と同じタイミングで一条刑事も向かい側の椅子に腰を下ろすと、早速用件を尋ねる。
 夏目夫人が、事件の捜査の主体が長野県から東京に移ったと聞いて、重ねてお願いをするために来たと答える。そして探るように「あの、第0号のほうの捜査、あまり進んでいないようで……」と本題に入る。

 第0号についてはほぼノーヒント状態なので今のところは、と歯切れが悪い一条刑事。
 「亡くなった主人のためにも、その、一刻も早く……!」と夏目夫人がもどかし気に訴える。
 「はい、それは十分に」と対照的に冷静に応じる一条刑事。

 ただでさえしょっちゅう外でパトカーのサイレンが鳴り響いていて騒がしい警視庁だが、隣の会議スペースでは、一条刑事と夏目夫人が話をしている間にも捜査員たちの動きが慌ただしくなり、ついには何人かが小走りで応接スペースの横を通り過ぎていく。
 先ほど出動要請を受けたこともあり、一条刑事は出て行った捜査員たちの後ろ姿を見送り、隣の会議スペースの様子をうかがう。
 ダメだぞ、来客中だぞ一条刑事。

 固いというか苛立たしげに目の前の刑事を見ている少女。少女の表情はおろか、視線にさえ気づかず、一条刑事はじれったそうに会議スペースを見ている。
 眼差しはそのままに、少女がわずかにあごを引く。たったそれだけで、彼女が一条刑事に対して不審感を抱いたり落胆したんだなと分かる。

 一条刑事が隣の様子に気を取られていた間、夏目夫人は自分の気持ちを落ち着けていたようで、口調も穏やかに「このままでは、主人もさぞ悔しかろうと思いまして」と話す。分かります、と一条刑事が相づちを打つ。

 夏目夫人は促すように娘の名を呼ぶ。ミカと呼ばれた少女はゆっくりと抱えていた布……上の部分を丸めて抱えていたトートバッグの中から箱を取り出す。
 ミカちゃんが箱を取り出す間に、夏目夫人は「あの、お役に立つかどうか分からないのですが」と切り出し、娘が出した箱を受け取る。夫の引き出しから出てきたものだと説明してテーブルの上に置く。

 トートバッグに余裕で入るくらいの黒い小型の道具箱である。留め具を外し、遺跡の近くで出土したもののようだと説明しながら、一条刑事から中が見えるように箱の向きを変えてフタを開ける。

 箱の中には綿が敷き詰められていて、その真ん中に槍の穂先のように先端が尖った細長いものが置かれている。一条刑事は箱を手に取り、細長いものを見ながら「金属器か何かのかけらですか?」と尋ねる。

 そこへ、先ほどの男性警官がやってきて、しびれを切らしたように一条刑事に呼びかける。
 チラリと彼を見てから、一条刑事は夏目夫人に顔を向け、直接専門家に見てもらった方が分析が早いだろうと言い、胸ポケットから手帳とボールペンを取り出す。城南大学の住所を教えると言い、手帳の1ページに書き付け、ちぎって夏目夫人に手渡す。無言で受け取る夏目夫人。

 申し訳ないが急いでいるのでと謝る一条刑事を、にらみつけているミカちゃん。はあと答える夏目夫人の声。ミカちゃんの視線が上に動く。こちらこそどうも、と言う夏目夫人の声はどこか釈然としない風でもある。ミカちゃんの視線は今度は横へ、会議スペースの方へと動く。
 ミカちゃんの視線の動きで、一条刑事の動きが分かる。視線ほどには動かない表情が、彼女の心のありようでもある。

 ミカちゃんの眼差しはゆっくりと下に向けられる。テーブルに置かれた箱を手に取り、道具箱のフタをそっと閉じる。

 あれ、なんか超長くなったぞ……?もしかして、第7話って1シーンごとに込められた情報量多くない?と気づいたところでその3に続きます。

初出2021年8月19日 2024年5月2日加筆修正

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