完全なる男尊女卑の世界はない
世界の性習俗という本を読んだ。これが、めちゃくちゃ面白い。
文字通り、世界の性に関する奇習を紹介する本なのだけど、世界の結婚にまつわる考え方や、宗教とセックスの切っても切り離せない関係性、世界各地の性のタブーなど、
知っているものもあれば知らないことも多くて、めちゃくちゃ勉強になる。
例えば誘拐婚や死者と結婚する冥婚、性器を切除する割礼なんかは知っているけど、
旅人に自分の妻を差し出す民族がいるとか、神社や神殿に仕える巫女が、
参拝者や権威ある男性に性的奉仕をする存在であったことなどは全く知らなかった。
これだけ聞くと、やっぱり昔から世界的に女性は虐げられていたのだなぁって思うよね。実際、世界各地の女性は、こうした奇習でかなり辛い思いをしていたらしい。
でも、一概にそれを「男尊女卑」の言葉で片付けることもできないのだということも、同時に強く思ったのだ。
それは、筆者のこの一文からだった。
この一文は、海外の名誉殺人について語られたものだった。
【名誉殺人とは】
「一家の名誉を傷つけるような淫らな行為をした」とされる女性(妻や娘)を、その夫や親兄弟など親族の男性が殺害することを指し、パキスタンや、イラクとトルコに広がるクルド人地域などに多く見られる。
女性が一方的に殺されてしまうこの名誉殺人は、しかし、必ずしも女を抑圧するために男が仕組んだ犯罪と言えないらしい。
なぜなら、殺害の圧力は、女性からも強いから。
「早く殺しなさい。あんた本当に男なの?男なら早く殺しちゃって、名誉を守りなさい」
こうして、父親または親族は家族である女を殺す。殺犯人は、その後良心の呵責に耐えかねて自殺することもあるらしい。
女性の割礼なんかも、性器の一部を切除するとか、とにかく痛そうなことを、麻酔もなしに医者でもない親が行うわけで、とんでもない風習だ。
でも、それもまた、一概に女性が虐げられている悪しき習慣と断罪できないらしい。
なぜなら、女性自身が割礼を切望しているケースがあるから。
割礼後は、普段食べれないごちそうを振舞われたり、周りからちやほやされたりしてとても祝福されるのだそう。
それに憧れを持って、早く割礼をしたいという少女は多いらしい。
それ以外に楽しみがないから割礼を望まざるを得ないという意味では、
相当に抑圧されているんだけどね。現実としては、割礼=なくすべきもの
とは言えないようだ。
そもそも、割礼は男性にもある。
アフリカの地域では、男らしさを植え付けるために少年がものすごい性虐待を受けるらしい。
(儀式だから彼らの中では虐待ではない)
精液を飲まされたり、アナルセックスを強要されたり。。
昔から、男も女も抑圧されてきた。
どちらがどれだけという数でそれを測るのは、ナンセンスな気もしている。
男尊女卑の世界とは、私たちが世界をどう見るかでも、きっと大きく違ってくるんだろう。
私は、自分の会社では女性社員への評価に明らかなバイアス(偏見)があると思っている。
男性社員よりも、管理職昇格に対する見方が厳しいと思うのだ。でも、実際は、男性からも同じような不満が上がっていた。
つまり、
「なぜ女性だけ女性活躍とか人事制度が変わった関係で、飛び級のように昇格してしまうのか?」
確かに、実際にそういうこともあった。私は同じ女性のことだからそれほど気にしていなかったが、抜かされた男性からしたら由々しき問題だっただろう。
実際の構図としては、一方が必ず虐げられているなどという事実はないのだ。