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ニッチな起業家の”ピボット”について考えたこと

はじめまして。

武道の技を後世に残すために[武工芸]という武道と伝統工芸を組み合わせた美術工芸品を制作している濱崎といいます。

本投稿は、G's ACADEMY 脳内アウトプットしてみた編 Advent Calendar 2024のDAY20に投稿した記事です。
福岡 Dev9期生として2021-2022年に在籍していました。
(G'sアカデミー で学んだことと、卒業後の活動を絡めて記事にしています)

今回はタイトルにあるように、ニッチな領域で起業をめざしている僕が、ピボットを経験して考えたことをまとめています。

今までニッチすぎて事業として成り立たないと言われながらも、自分のやりたい事業をカタチにするために活動を模索していましたが、何度かピボットをしてようやく活路を見いだせるところまで来ました。

ピボット歴は
「スポーツ教室→企業研修→トレーニング器具制作→美術工芸品制作」
はたから見たら右往左往して軸がない感じがすると思います。

G’sアカデミー卒業生には素晴らしい活躍をされている方々ばかりで、まだ事業が成功したわけではない自分ですが、これからお話する内容が 特にニッチな領域で起業を目指している方の参考になれば嬉しいです。

※このあと長々と書いていますが今回お伝えしたいのは
「ニッチな領域の起業でうまくいかないときは、“こだわる”視点を変えるとうまくいくかも」という提案です。

ピボットとは

ピボットとは「方向転換・路線変更」という意味で、ビジネスではサービスや事業の方向性を変えるときに使われる言葉です。

元はバスケットボールでは「ボールを持ちながら片足を軸足として固定し、もう片方の足を動かすステップの”ピボット”」からきていると言われています。

ビジネスのピボットでは ”どこに軸足を置くのか” がめちゃくちゃ大事だと思っているんですが、自分や知人の経験やネットなどの記事を読んでいて、考え方次第で”軸足の置く場所”は変わるものだと感じています。


プロダクトアウト と マーケットイン

新しいサービスを作るときネットで情報を集めると、「プロダクトアウト」「マーケットイン」という言葉をよく見かけると思います。

・プロダクトアウト:自分が作りたいもの、届けたいサービスから考える
・マーケットイン:世の中に受け入れられるのか、売れるのか から考える

「”プロダクトアウト”と”マーケットイン” どちらで考えるのかよいのか」論争は未だにありますが、

事業を大きくしたい野望を持っている起業家やVCなどの投資家は、成功確率の高い”マーケットイン”を推奨しているイメージがあって

“こだわり”が強いニッチな領域で起業を目指している人は想い先行の”プロダクトアウト”の考え方の方が多い印象です

どちらの考え方が良い悪いではなく、その違いがいわゆる“スタートアップ”と“スモールビジネス”の違いなのかなと思っています。

もちろん、スタートアップ型の起業家の方もこだわりを持っています。

今回使っている”こだわり”は、ピボットなど事業の方向性を変えることがなかなかできずサービスに固執してしまう“こだわり”のことを指しています。

僕自身、例に漏れず想い先行で”プロダクトアウト”でサービスを考えるため、ピボットするときもサービスの内容に“こだわって”しまいうまくいかないという経験をしました。

そこから自分が事業をやる意味をもう一度見直すことで視点を変えることができ、”こだわり”を捨てることなく、でも良い方向に事業の方向転換(ピボット)することができました。


what と how と why me

新しいサービスを作るときに「“what” ”how” “why me” を明確にすることも大切」とも言われていますよね。
(G'sアカデミーでは、この言葉達と向き合う期間があります)

ピボットでは ”どこに軸足を置くのか” がめちゃくちゃ大事といいましたが、「what・how・why me」を元に軸足の場所を考えるとわかりやすいと思うので、軽く用語の説明をしておきます。

・what:その事業で解決する課題、問題(どの市場、どの業界で事業するのか)
・how:問題を解決する手段(どんなサービスを提供するのか)
・why me:その事業(サービス)を自分がやる意味

一般的に、解決したい課題(what)と 事業をやる意味(why me)は、なかなか変えることは難しくて、解決する手段(how)は無数にあります。

普通に考えれば、手段(how)は無数にあるため(why me)や(what)を軸に(how)をピボットすれば良さそうですが、なかなか複雑で上手くいかないこともあります


上手くいかなかった当時のピボット

当時の僕は、自分が事業をやる意味(why me)は「武道の価値・魅力が伝わっていない課題を解決すること」だと考えていて、「武道の魅力を伝えるには提供するサービス(how) を<武道>にするしかない」と思っていました。

その結果、
① 野球選手向けに武道を教える事業
→「武道のトレーニング」で野球選手のパフォーマンス向上
how:トレーナーが武道の指導をする

② ビジネス向けにセミナー・コーチを行う事業
→「武道のトレーニング」でメンタルヘルスの問題を解決する
how:トレーナーが武道の指導をする

③ 武道の達人の感覚を身につけるトレーニング器具の開発
→「武道のトレーニング」を一人で行えるようになる
→武道家、スポーツ選手のパフォーマンス向上
how:デバイス・アプリが武道の指導をする

とピボットを繰り返していきました。
③で若干 how が変わっていますが、how に”こだわっている”のがわかります。

これも、「武道の魅力を伝えるには武道を教えるしかない」という考えに固執したのが理由なんだと思います。


how を固定したピボット戦略もある

howを固定してピボットする手法としては、海外の成功しているビジネスを日本に持ってくる(タイムマシン経営)や業界を変えて事業を行う手法もあるので一概にダメとはいえないです。

ただ、howを固定してピボットしてうまくいく場合は、howに“こだわっている“のではなくマーケットインの視点でそのhowが最適だと判断したからだと思うので、今回の”こわだり”とは違うのかなと思います。


why meが明確になるとピボットがうまくいった

ニッチな領域で how に“こだわって” 上手くいかなかった僕ですが、上手くいかないながらもピボットすることで見えてくるものがありました。

それは、自分が事業をやる意味(why me)です。

「武道の価値・魅力を伝える」ことが事業をやる意味 (why me)だと思っていましたが、ピボットしながらも武道を伝える経験をして「武道の何を、誰に伝えたいのか」が僕自身の中で重要であることがわかってきました。

「武道の極意や深い部分を、1000年先の天才・達人に伝える」

濱崎旦志のwhy me(2024年時点)

伝統工芸・職人の業界と同じく、武道も後継者不足が言われていて、無形文化の武道の技術を後世に残すのは大変なことです。
そして、一度失われてしまうと再現することはほとんど不可能です。

1000年後に今の武道家の凄さをどのように伝えていけば良いか、何を残したら1000年後に武道の本当の魅了を感じてもらえるのかを模索した結果、「研究」に行きつきました。

武道の研究:未だ解明されていない武道の価値・技術を科学的に証明すれば後世に残ります

ただ、研究するにはいくつか解決しないといけない問題があります。
抽象的な概念が多い「武道」の研究をするためには資金と時間が必要です。そして、当然ながら研究するだけではビジネスにはなりません。

武道の研究をするために、仲間と資金とデータが自然と集まる「しっかり売上の立つビジネス、市場はないか」マーケット思考で考えてみました。
(この時、はじめてマーケット思考で考えました)

すぐには答えは出なかったのですが、半年ぐらい頭の片隅に入れながら生活をしていたら、ふとした拍子に「武道の技を使った美術工芸品」のアイデアが思いつきました。

海外では「お茶・盆栽・瞑想」など東洋文化・日本文化の魅了が広がってきていて、最近では文化起業家(カルチャープレナー)という言葉も出てきて、文化を軸に事業を展開する起業家が増えてきているそうです。

③のIoTデバイスを使った武道のトレーニングができる事業から
④武道と伝統工芸を組み合わせた美術工芸品の制作(how: 美術工芸品の販売)
と大きなピボットをすることになりました。

武道の技術を美術工芸品にすることで、何百年先にも有形のものとして残り続けますし、美術工芸品を製作する時に武道家の方ともご縁ができますし、売上や武道家の繋がりで研究につなげることができます。
(武道の成果物を美術工芸品したものを「武工芸」と名付けてます)

美術工芸品の市場も一般的にはかなりニッチな領域ですが、今までの事業は投資家や経営者の方に話をしても「?」が何個も飛んでいるような状態だったのですが、ワクワクを伝えられ・かつニーズがありそうだと感じてもらえる事業になりました。

この事業は、はじまったばかりで本格的な市場調査や試作品の制作に取り組んでいるところです。


how に”こだわってしまう”場合の対処法

ちょっと、自分の事業(想い)の紹介になってしまいましたが、僕自身が武道の魅力を伝えるには「武道を教えるしかない」と思っていたところから

  • いろいろある武道の魅力の中で自分が本当に伝えたいのは何で、誰に伝えたいのか(why meのブラッシュアップ)

  • どうやって伝えるのがよいのか(数ある中からhowを選ぶ)

というのを how に“こだわらず”に考えた結果、良い方向に進んでいる実感を持つことできました。

“how”にこだわらなくなったことで、自分が事業をやるべき理由の“why me”のこだわりは捨てることなくビジネスとして成立しそうだというのが、僕の中では目から鱗でした。

僕のように市場などを全く考えずに起業を目指している方は少ないかもしれませんが、提供するサービス(how)に“こだわり”をもっているため、行き詰まってしまっている人もいる気がしています。

  • 想い先行で、伝えたいものをそのままサービスにしてしまう

  • 世の中で流行っている技術を使うという理由だけで、技術の縛りをしてしまう

などhowに“こだわって”しまう理由もいくつか考えられそうです。

また「why meをブラッシュアップしろ!」といわれてもすぐにできるものではないのも知っています。
(僕の場合は、ここまで15年ぐらいかかりました)

僕の場合は

  • とりあえず”今”自分が100%やりたいと思ったもの、作りたいを思ったサービスを作って、上手くいかないときはピボットする

  • ピボットすると、世の中に受け入れられているか、自分が納得しているのか(モヤモヤがないか)感じることができるので、その感じを無視せずwhy meをブラッシュアップしていく

  • why meをブラッシュアップすると、思いつかないと思っていたアイデア(新しいhow)が思いつく

  • 市場調査もしながら「モヤモヤもなく、世の中にもハマった」と感じるサービスができて本格的に走り出す

という流れでした。

今振り返るとこんな感じですが、当時はなにも考えずに思いつくままピボットしていった結果、たまたまwhy meのブラッシュアップができて、運良く活路が見いだせた気がしています。


補足(だけど大切なこと)

僕の場合、幸いにも資金調達も参画してくれる仲間もいない状態で進めることができたので、100%自己都合でピボットすることができたのも良かったです。

もし、VCから資金調達していたり、参画してくれる仲間がいたとしたら、ここまで自由に動けなかっただろうなと思います。
(自分の可能性を信じてくれた以上、その方々の期待に応えることも責任だと思います)

これから事業を立ち上げたいと思われている方は、事業を加速させるためにスタートから仲間や資金を集めるのももちろんアリですが、手応えを感じるまでは一人でピボットするのもいいんじゃないかと思い、長々と書かせてもらいました。

G'sアカデミーでは、同期・メンター・講師・チューター・スタッフの方々などの人との出会いが一番の価値だと思っていますが「技術は何であれ、とりあえず試作品(プロトタイプ)までは一人でなんとかなる」ことを経験できたことも僕にとって非常に大きなことでした。

”とりあえず形にして検証するまでの間は一人でできる” はニッチな領域でスタートする人にとって大きな武器になります。

G'sアカデミーの卒業制作でVCや投資家の方に認められて資金調達しスタートして活躍されている素晴らしい方々ばかりですが、僕みたいに資金調達できなかったことを逆に活かして自分らしくマイペースに活動している人もいます。

この記事が読んだ方がとりあえず作りたいもの・届けたいサービスを作り始めたり、ピボットしながら本当にやりたいことを見つけてくれたら嬉しいです。

僕自身まだまだこれからなので、数年後この記事を書いてよかったと思えるように、頑張ろうと思います。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

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