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「京都大学アカデミックデイ2022」見聞録06:14.水銀フリーの未来における水銀リスク?

本記事は『「京都大学アカデミックデイ2022」見聞録05:18.あなたの知らないRNAの世界』の続記事である。

2022年06月19日、私は「京都大学アカデミックデイ2022〜創立125周年記念〜」(以下「アカデミックデイ2022」、ロームシアター京都にて開催)に一般客として参加した([1])。

「アカデミックデイ2022」内の「プロム14 水銀フリーの未来における水銀リスク?」で、日下部武敏 京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 環境デザイン工学講座(以下同講座) 助教(当時、以下敬称略)らは、現在の全世界における水銀による健康リスク、環境への水銀の排出、健康リスクが減少する時期、水銀廃棄物の環境適正な長期管理、および、加速溶出試験による水銀廃棄物の長期安定性評価を紹介した(図18.01,[2])。

図18.01.現在の全世界における水銀による健康リスク、環境への水銀の排出、健康リスクが減少する時期、水銀廃棄物の環境適正な長期管理、および、加速溶出試験による水銀廃棄物の長期安定性評価。
参考文献2から引用。

日下部らは水銀(Hg)、硫黄(S)、および、硫化水銀(HgS)を展示した(図18.02)。また、改質硫黄固化体、エポキシ樹脂固化体、および、低アルカリセメント固化体も展示した。

廃水銀の中間処理・処分方法に関しては廃水銀を硫化設備で硫化し、硫化水銀の固化体を処分すると定められている。伊東 賢生と日下部らは、水銀廃棄物の埋立手法を確立するため、埋立地における水銀の環境リスクを低減させる最適条件として、黒色硫化水銀のセメント固化体を準好気性埋立地の中層部(非滞水部)に処分する手法を提案した。そこで、水銀廃棄物の埋立処分において、さらに水銀の流出リスクの低減化手法を確立させるため、水銀廃棄物固化体に注目し、作成手法の異なる3種類の固化体(改質硫黄固化体、エポキシ樹脂固化体、低アルカリセメント固化体)を用いた埋立実験を2020年7月より開始した。その経過20カ月間の浸出水への水銀流出は、水銀廃棄物固化体を実験槽中央部に埋立処分した場合、いずれの埋立手法においても、水銀流出率は0.000006%以下となり、固化体から浸出水への水銀流出はほとんどないと考えられた(図18.03,[3])。

図18.02.向かって左から、水銀(Hg)、硫黄(S)、および、硫化水銀(HgS)。
図18.03.向かって左から、改質硫黄固化体、エポキシ樹脂固化体、および、低アルカリセメント固化体。

高岡昌輝 同講座 教授と日下部は「京都大学アカデミックデイ2018」でも水銀関連研究を紹介した([4])。

一方、「京都大学アカデミックデイ2017」内の「放射能汚染廃棄物のこれから」で、米田稔 京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 環境システム工学講座 環境リスク工学分野 教授は、土と灰の混合による低濃度の放射性セシウムを含む大量の土壌や焼却灰の処理法、ならびに、ジオポリマー(水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸塩から成る)を使用する高濃度の放射性セシウムを含む少量の焼却飛灰の処理法を発表した。また、(図18.04,図18.05,[5][6])。

米田は「京都大学アカデミックデイ2018」でも放射能汚染廃棄物関連研究を紹介した([7])。

2023年現在、米田研究室は、主に福島第一原子力発電所事故由来の環境放射能のリスク評価と除染対策関連研究に従事している。なお、米田研究室における2023年度卒業論文テーマ全6論文の内4論文は、福島第一原子力発電所事故に関連するものであった([8])。

図18.04.「私達の研究の目的」と「私達の研究内容とこれまでの成果」。
参考文献6から引用。
図18.05.ジオポリマーの原料(水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、および、アルミノケイ酸塩)と固形化物。

私は本記事を執筆することで、水銀廃棄物の環境適正な長期管理、および、放射能汚染廃棄物関連研究を知ることができた。

はっきり言って、水銀廃棄物や放射能汚染廃棄物に関する流言飛語に惑わされる暇があったら、これらの研究に目を通すことで、正確な知識を。学ぶことをお勧めする。

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参考文献

[1] 国立大学法人 京都大学.“アカデミックデイ2022”.K.U.RESEARCH ホームページ.アカデミックデイ.https://research.kyoto-u.ac.jp/academic-day/a2022/,(参照2023年09月11日).

[2] 国立大学法人 京都大学.“水銀フリーの未来における水銀リスク?”.K.U.RESEARCH ホームページ.アカデミックデイ.アカデミックデイ2022.https://research.kyoto-u.ac.jp/academic-day/a2022/a2022-p014/,(参照2023年09月11日).

[3] 国立研究開発法人 科学技術振興機構.“E3 有害物質の溶出と挙動 最終処分場における水銀廃棄物固化体の埋立特性(その2)”.J-STAGE トップページ.廃棄物資源循環学会研究発表会講演集.第33回廃棄物資源循環学会研究発表会.書誌.2022年09月20~22日.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/33/0/33_397/_article/-char/ja/,(参照2023年09月10日).

[4] 国立大学法人 京都大学.“水銀の行方”.K.U.RESEARCH ホームページ.アカデミックデイ.京都大学アカデミックデイ2018.https://research.kyoto-u.ac.jp/academic-day/a2018/a2018-p022/,(参照2023年09月10日).

[5] 国立大学法人 京都大学.“放射能汚染廃棄物のこれから”.K.U.RESEARCH ホームページ.アカデミックデイ.京都大学アカデミックデイ2017.研究者と立ち話.http://research.kyoto-u.ac.jp/academic-day/2017/minoru_yoneda/,(参照2023年09月11日).

[6] 国立大学法人 京都大学.“2017_50_poster.pdf”.京都大学学術情報リポジトリ KURENAI ホームページ.900 京都大学シンポジウム・公開講座等.アカデミックデイ.2017(京都大学アカデミックデイ2017).ポスター/展示.放射能汚染廃棄物のこれから.2017年09月30日.https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/227864/1/2017_50_poster.pdf,(参照2023年09月11日).

[7] 国立大学法人 京都大学.“どうする?どうなる?福島の放射能”.K.U.RESEARCH ホームページ.アカデミックデイ.京都大学アカデミックデイ2018.https://research.kyoto-u.ac.jp/academic-day/a2018/a2018-p026/,(参照2023年09月10日).

[8] 国立大学法人 京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻 環境システム工学講座 環境リスク工学分野 米田研究室.“研究内容”.米田研究室 ホームページ.https://sites.google.com/view/yonedalab/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%86%85%E5%AE%B9,(参照2023年09月11日).

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