ウエルハーモニーのトロミーナを食べる:バリアフリー2021を振り返る その02
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食物や唾液は口腔から咽頭と食道を経て、胃へ送り込まれる。食物などが何らかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態が誤嚥である。誤嚥は誤嚥性肺炎の原因にもなる。
誤嚥に近い状況として、喉頭流入がある。喉頭流入は、食物が喉頭に流れ込むものの、声門より上にとどまり、気管には侵入しない状態である
誤嚥は、様々な病気が原因となって生じる。飲み込みの反射(嚥下反射)が障害される、飲み込む力が弱い、あるいは、食道を通過できないといった状態が、誤嚥を引き起こす。 神経や筋肉の疾患の初期症状である場合もある。また、喉の腫瘍(例.咽頭がん、食道がん)でも誤嚥を生じることがある(1,2)。
誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害により唾液や食べ物、または、胃液などと共に細菌を気道に誤って吸引することにより発症する。吐物を大量に吸引した場合には胃酸による化学性肺炎を起こすことがあり、メンデルソン症候群と呼ばれる。
嚥下機能の低下した高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患、および/また、寝たきりの患者に多く発生する。肺炎球菌や口腔内の常在菌である嫌気性菌が原因となることが多いとされる。
高齢者や神経疾患などで寝たきりの患者では口腔内の清潔が十分に保たれていないこともあり、この場合、口腔内で肺炎の原因となる細菌がより多く増殖してしまう。また、高齢者や寝たきり患者では咳反射が弱くなり嚥下機能が低下する。その結果、口腔内の細菌が気管から肺へと吸引され、肺炎を発症する。また、栄養状態が不良であることや免疫機能の低下なども発症に関与してくる。一方、嘔吐などで食物と胃液を一度に多く誤嚥して発症する場合もある(2)。
高齢者食は特別な食事ではなく加齢に伴って起こる体の変化に適応した食事である。一方、介護食は高齢者食よりもさらに少しずつ弱まった機能を補ってくれる食事である。
介護食では、誤嚥を防ぐためにも食事の形状(食事形態)がとても重要になる。また、生活習慣病を伴う場合はそれぞれの疾患に準じた対応が必要となります。
介護食の特徴を以下に示す。
1.柔らかさが調整され、噛みやすい。
2.口の中でまとまりやすく、飲みこみやすい。
3.1と2に加え、病態(減塩、糖尿病、腎臓病など)に配慮する。
介護食は、弱まった食べる機能を補ってくれる食事であることが大切です。
噛む力が低下している場合は柔らかさを調整した食事、または、飲みこむことが難しい場合はとろみをつけてまとまりやすく、かつ、飲み込みやすいよう配慮された食事であるかを考慮しつつ、安全に食べることが重要となる(3)。
とろみ剤は、飲み物や食べ物を喉へゆっくりと送るために、とろみをつけるものである。
とろみ剤の特徴は以下のとおりである。
1.加熱しなくても、短時間でとろみをつけることができる。
2.使用量の目安が明記してあるので、使いやすい。
高齢者の中には、飲み込む速さが遅く、さらさらとした飲み物が気管に入ってむせてしまう人がいる。とろみ剤はこうした嚥下(えんげ)障害のある人向けのものである。
介護食でとろみが必要な理由は、誤嚥を防ぐためである。
介護食に必要なとろみの役割は、以下の2つである。
1.食べ物や飲み物を喉へゆっくりと送る。
2.食べ物をまとまりやすくし、簡単に飲み込めるようにする。
介護食にとろみをつけることで、飲み込む力が弱い人でも安全に食事ができる(4)。
株式会社 ウエルハーモニー(以下同社)は1992年07月設立の介護用品、介護食品、および、介護機器の販売企業である(5)。
同社はバリアフリー2021/慢性期医療展2021/看護未来展2021(以下バリアフリー2021)で、粘度調整食品トロミーナとゼリー調整食品ゼリーナを展示した(図01,6,7,8)。
図01.粘度調整食品トロミーナとゼリー調整食品ゼリーナ。
2021年08月27日、バリアフリー2021/慢性期医療展2021/看護未来展2021で展示。
2021年08月27日、私はバリアフリー2021で、トロミーナ ハイパータイプ、レギュラータイプ、および、ソフトタイプの試供品を貰った(図02)。
図02.トロミーナの試供品。
上から、ハイパータイプ、レギュラータイプ、および、ソフトタイプ。
撮影日:2021年10月29日。
本記事で、トロミーナの各製品に関して述べる。なお、各製品が付けるとろみの評価食品として、カゴメ株式会社 「野菜一日これ一本」(以下野菜ジュース、9)を使用した。
01.ソフトタイプ(図03,10)
原材料は、デキストリンと増粘多糖類である。
10月29日に喫食。
とろみは付着性が少なく、ベタつかない。
ソフトタイプを加えた野菜ジュースは、薄いポタージュ様のとろみを示す。
図03.ソフトタイプとソフトタイプでとろみを付けたカゴメ「野菜一日これ一本」。
撮影日:2021年10月29日。
02.レギュラータイプ(図04,11)
原材料は、デキストリン、増粘多糖類、および、pH調整剤である。
10月29日に喫食。
とろみは安定している。また、無味無臭でキレがよい。
レギュラータイプを加えた野菜ジュースは、薄いシロップ様のとろみを示す。
図04.レギュラータイプとレギュラータイプでとろみを付けたカゴメ「野菜一日これ一本」。
撮影日:2021年10月29日。
03.ハイパータイプ(図05,12)
原材料は、デキストリンと増粘多糖類である。
10月30日に喫食。
少量でしっかりとしたとろみを示す。
なお、添加後かき混ぜるまでに時間をおくとダマができやすくなる。
ハイパータイプを加えた野菜ジュースは、トンカツソース様のとろみを示す。
図05.ハイパータイプとハイパータイプでとろみを付けたカゴメ「野菜一日これ一本」。
撮影日:2021年10月30日。
私は今回の試食で、トロミーナなどのとろみ剤の特徴だけでなく、その意義も体感した。
上記の意味で、同社には感謝している。
参考文献
1 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会.“誤嚥”.日本気管食道科学会 ホームページ.気管食道科に関連する疾患・症状.http://www.kishoku.gr.jp/public/disease05.html,(参照2021年10月28日).
2 一般社団法人 日本呼吸器学会.“誤嚥性肺炎”.日本呼吸器学会 ホームページ.一般の方へ.一般の方へ インデックス.呼吸器の病気.A. 感染性呼吸器疾患.https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=11,(参照2021年10月28日).
3 株式会社 LIFULL senior(ライフル シニア).“【栄養士が解説】介護食とは”.LIFULL 介護 トップページ.お役立ちガイド.高齢期の食事.高齢期の介護食.https://kaigo.homes.co.jp/manual/meal/senior_nursing_food/nursing_food/,(参照2021年10月28日).
4 株式会社 シルバーライフ.“介護食にとろみ剤が必要な理由|選び方から注意点まで解説”.まごころ弁当 ホームページ.コラム.2018年12月02日.https://www.magokoro-bento.com/blog/201812/toromi.html,(参照2021年10月28日).
5 株式会社 ウエルハーモニー.“会社概要”.ウエルハーモニー ホームページ.http://wellharmony.co.jp/corporation/,(参照2021年10月28日).
6 株式会社 テレビ大阪エクスプロ.“バリアフリー2021/慢性期医療展2021/看護未来展2021 ホームページ”.https://www.tvoe.co.jp/bmk/,(参照2021年10月28日).
7 株式会社 ウエルハーモニー.“粘度調整食品”.ウエルハーモニー ホームページ.http://wellharmony.co.jp/toromi/,(参照2021年10月29日).
8 株式会社 ウエルハーモニー.“ゼリー調整食品”.ウエルハーモニー ホームページ.http://wellharmony.co.jp/jelly/,(参照2021年10月29日).
9 カゴメ株式会社.“野菜一日これ一本”.カゴメ トップページ.飲料.https://www.kagome.co.jp/products/drink/A3363/,(参照2021年10月29日).
10 株式会社 ウエルハーモニー.“トロミーナ ソフトタイプ”.ウエルハーモニー ホームページ.粘度調整食品.http://wellharmony.co.jp/toromi/t-soft/,(参照2021年10月29日).
11 株式会社 ウエルハーモニー.“トロミーナ レギュラータイプ”.ウエルハーモニー ホームページ.粘度調整食品.http://wellharmony.co.jp/toromi/t-reg/,(参照2021年10月29日).
12 株式会社 ウエルハーモニー.“トロミーナ ハイパータイプ”.ウエルハーモニー ホームページ.粘度調整食品.http://wellharmony.co.jp/toromi/t-hyper/,(参照2021年10月29日).