ヨロンの海、太古からいま:地球研オープンハウス2024 訪問記 05
2024年11月03日、総合地球環境学研究所(地球研)は地球研オープンハウス2024(以下同イベント,[1])を開催した。私も一般客として参加した。
「ヨロンの海、太古からいま」で、LINKAGEプロジェクト(以下同プロジェクト)は、以下を紹介した(図05.01,[2])。
1.沖縄島南部地域では地下水中の硝酸性窒素汚染が一部地域で課題となっている。効果的な汚染対策へと結びつけるため、各種安定同位体を用いた窒素起源(化学肥料や堆肥など)の的確な評価手法を開発した。
2.フィールド調査により、石垣島から西表島にかけての石西礁湖では、石灰質の海底底質に吸着したリン酸塩(蓄積リン)がある濃度(閾値)を超過するとサンゴ密度がほぼゼロとなることが判明した。この閾値を目標に設定することで許容可能な陸域負荷量を決定し実行することが可能となり、今後のサンゴ被度の回復が期待できる。
3.地下水資源の不可視性の影響とそのメカニズムを解明することを目的として、水循環に関する意識調査を行った。主要な結果として河川水に比べて地下水は目に見えにくい存在のために関心を持たれにくいことが明らかとなった。
4.沖縄島南部の3D水循環シミュレーションモデルを構築し、地下水流動や土地利用の変遷などの各種の情報を可視化できるプロジェクション マッピング模型を作成し、役場のロビーや地域円卓会議などで活用した(図05.02)。
同プロジェクトは、島の資源利用の多様さと、そのつながりの変遷を解明するため、地域の方と共に在来知に関する「聞き書き」の調査や地域歴史文化資料の収集・記録に取り組んでいる。与論島では住民から提供された約5,000点の写真の中から、「働く」をテーマに1960年代以降の物流や島の暮らしの変化、サンゴ礁の環境変化を考える古写真展の開催と参加型デジタル展示を公開したことを伝えた(図05.03,[3])。
同プロジェクトから、沖縄島南部地域に限らず、河川水に比べて地下水は目に見えにくい存在のために関心を持たれにくいことを気付かされた([4])。
また、与論島の住民の日常生活史を知ることで、日常のありがたさを知ることもできた。
その意味では、同プロジェクトには深謝している。
参考文献
[1] 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所.“地球研オープンハウス2024”.総合地球環境学研究所 ホームページ.イベント.2024年度.2024年11月03日.https://www.chikyu.ac.jp/rihn/events/detail/230/,(参照2024年11月23日).
[2] 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所.“LINKAGEプロジェクト”.総合地球環境学研究所 ホームページ.研究活動.研究一覧.実践プログラム.地球人間システムの共創プログラム.https://www.chikyu.ac.jp/rihn/activities/project/detail/8/,(参照2024年11月23日).
[3] ゆんぬ古写真展事務局.“島の自然と暮らしのゆんぬ古写真展vol.3 -働く-”.島の自然と暮らしを考える ゆんぬ古写真調査 トップページ.https://yunnu-photo.org/vol3/,(参照2024年11月23日).
[4] 環境省.“硝酸性窒素等による地下水汚染対策”.環境省 ホームページ.政策.政策分野一覧.水・土壌・地盤・海洋環境の保全.地下水・地盤対策.https://www.env.go.jp/water/chikasui/post_90.html,(参照2024年11月23日).