インフルエンザを知る:令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所 一般公開から学んだこと その03
2019年11月09日、私は医薬基盤・健康・栄養研究所(以下同研究所)を訪れ、一般客として令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所 一般公開(以下同一般公開)に参加した(1,2)。
同研究所感染病態制御ワクチンプロジェクトはインフルエンザウイルスをモデルとして、肺でのウイルス・宿主相互作用と病原性の発現機構に関して体系的解析を進めている(3)。
一方、同研究所アジュバント開発プロジェクト(石井健研究室)は感染症やその他免疫関連疾患における核酸(DNA、RNA)の免疫制御機構とその生理学的意義を解明し、ならびに、核酸を利用したワクチン、アジュバント、および、代替免疫療法を開発している(4)。
両プロジェクトは「16.インフルエンザウイルスに感染したらどうなるの?」で、インフルエンザウイルス、特にA型の特徴(5)、2009年に発生した新型インフルエンザA(H1N1)pdm09対策関連情報(2009年の豚インフルエンザ・パンデミック,6)、および、鳥インフルエンザ・パンデミック(7)に関して言及した(図01)。
図01.インフルエンザウイルスってなあに?。
また、インフルエンザウイルスの感染時期(8)と感染機序(9)、インフルエンザの症状(8)、検査法(8)、および、治療法(8,10,11,12)、ならびに、インフルエンザワクチンに関しても言及した(図02,13)。
図02.インフルエンザにかかると?治すには?。
私はインフルエンザに関することを改めて知った。これもまた非常に有意義であった。
なお、参考文献5~14以外のインフルエンザを知るために必須な文献を以下に示す。
青野由利 著.インフルエンザは征圧できるのか.第1版,株式会社 新潮社,2009年11月20日,269 p.
本著は人類と新型インフルエンザA(H1N1)pdm09の間の闘争の記録である。なお、人類とインフルエンザとの戦いはこれからも続く。その理由は、インフルエンザウイルスは鳥、ブタ、および、ヒトの間を行き来することで、変異し続けるためである。
その結果、インフルエンザウイルスは巧みにヒトの免疫機構から逃れ、流行し続ける。当然、抗インフルエンザウイルス薬などによる治療は後手に回らざるを得ない。一方、手洗いやインフルエンザワクチン接種などの予防は「先手」になる。
今村顕史 著.図解 知っておくべき感染症33:原因・症状・予防法.第1版,株式会社 西東社,2015年10月05日,144 p.
本著は感染症(例.インフルエンザ、麻疹)やその予防法の初学者向けガイドブックとして役に立つ。特に、咳エチケットや正しい手洗いの仕方は目を通す価値がある。
亀田高志 著.[図解]新型インフルエンザ対策Q&A:家庭・職場・教育施設での対策がすぐ分かる!.第1刷,株式会社 エクスナレッジ,2009年10月15日,128p.
本著は新型インフルエンザA(H1N1)pdm09等のインフルエンザの基礎知識集として、かつ、家庭、職場、および、教育施設におけるその対策に関する基礎マニュアルとして有用である。
河岡義裕 監修,今井正樹 監修.猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか.初版第1刷,株式会社 ミネルヴァ書房,2018年02月28日,144p.(MINERVA Excellent Series 2 サイエンスNOW!).
本著は主に病原性ウイルス、特に新型インフルエンザA(H1N1)pdm09等のインフルエンザウイルスに言及している。
また、抗原抗体反応などの免疫系のしくみ、ならびに、ワクチンや抗ウイルス薬の作用機序も紹介している。
そして、国家などの組織によるパンデミック対策、ならびに、家庭や個人による防衛策にも言及している。
厚生労働省.“インフルエンザの基礎知識 全体版”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.医薬品・医療機器.インフルエンザの基礎知識.https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/file/dl/File01.pdf,(参照2020年02月17日)
インフルエンザの基礎知識が簡潔にまとめられている。入門用パンフレットとして有用である。
大協薬品工業株式会社.“かぜとインフルエンザ”.大協薬品工業株式会社 トップページ.健康ひとくちメモ.https://www.taikyo.co.jp/memo/vol4/,(参照2020年02月17日)
風邪とインフルエンザの違い、ならびに、風邪の手当が簡潔にまとめられている。
風邪の手当では、安静、栄養補給、および、保温が必須である。特に保温の内、汗をかいた後の服の着替えこそ重要だと私は考える。実際、冬でも汗をかく人は割といるわけだし(14)。
藤村響男 監修,服部綾子 監修,藤野智子 監修,田中富士美 監修.感染対策まるわかりガイド:感染症対応・ケア別手技が身につく.初版第1刷,株式会社 学研メディカル秀潤社,2014年03月30日,121p.
本著は医療従事者、特に看護師用の看護マニュアルの手本として有用であると私は考える。
ヒトの感染防御機構(p.2-24)や細菌の抗菌薬耐性獲得機構(p.25-29)の基礎知識集としても有用である。
余談だが「第2章 「もしかして感染?」で絶対に見逃せない熱・皮膚・訴えの観察と対応策」(p.31-91)を熟読するほど、ワクチンで予防可能な疾患に対しては、ワクチンで確実に予防しようとしか言えなくなる。
拙ブログ内の関連記事
『ウイルスは悪者か:お侍先生のウイルス学講義』を読んで:人類は真剣にウイルスに向き合い続ける必要がある
『恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド』を読んで:人類と病原体との死闘は永遠に続く。
『グローバル感染症 必携70疾患のプロファイル』を読んで:感染症自体よりもデマの方が遥かに恐ろしい!
『0歳からのワクチン接種ガイド ワクチンで防げる子どもの病気』を読んで:ワクチンで防げる病気(vaccine prevented disease:VPD)は確実にワクチンで予防しよう
『微生物の図鑑 ミクロの世界の住人たち』を読んで:デフォルメ化した微生物は個性が光っている。
参考文献
1 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所一般公開の開催について【11月9日(土)】”.医薬基盤・健康・栄養研究所 ホームページ.医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ.2019年07月01日.https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2019/07/005997.html,(参照2020年02月15日).
2 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“(当日の企画を掲載しました)令和元年度 医薬基盤・健康・栄養研究所一般公開の開催について【11月9日(土)】”.医薬基盤・健康・栄養研究所 ホームページ.医薬基盤研究所(NIBIO)のお知らせ.2019年11月05日.https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2019/11/006087.html,(参照2020年02月15日).
3 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“研究テーマ”.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 感染病態制御ワクチンプロジェクト ホームページ.https://www.nibiohn.go.jp/regulation-intractable-infectious-diseases/research/index.html,(参照2020年02月15日).
4 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所.“研究概要”.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 石井健研究室(アジュバント開発プロジェクト) ホームページ.http://www.nibiohn.go.jp/adjuvant/research.html,(参照2020年02月15日).
5 トニー ハート 著.中込治 翻訳.恐怖の病原体図鑑:ウイルス・細菌・真菌(カビ) 完全ビジュアルガイド.初版第3刷,株式会社 西村書店,2011年06月15日,p.30-31.
6 厚生労働省.“新型インフルエンザA(H1N1)pdm09対策関連情報”.厚生労働省 ホームページ.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html,(参照2020年02月15日).
7 厚生労働省.“鳥インフルエンザについて”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症情報.動物由来感染症.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144461.html,(参照2020年02月15日).
8 塩野義製薬株式会社.“インフルエンザ − インフルエンザへの理解を深め、正しい知識や予防法を身につけましょう!”.シオノギ製薬 トップページ.患者・ご家族の皆さま.病気の知識.http://www.shionogi.co.jp/wellness/diseases/influenza.html,(参照2020年02月15日).
9 ネイチャー・ジャパン株式会社.“インフルエンザウイルスが細胞内に侵入する新たなしくみを発見!”.Nature Asia ホームページ.Nature Careers.特集記事.2011年03月10日.https://www.natureasia.com/ja-jp/jobs/tokushu/detail/227,(参照2020年02月15日).
10 クラシエ製薬株式会社.“インフルエンザの治療薬とは?その種類や副作用などの注意点も解説”.かぜの総合研究所 かぜLAB トップページ.インフルエンザの研究室.http://www.kracie.co.jp/ph/k-kampo/influenza/remedy.html?_ga=2.114763918.82209841.1576492081-1140248349.1576492081,(参照2020年02月15日).
11 横浜市.“A型インフルエンザウイルスの治療薬アマンタジンに対する耐性について”.横浜市 トップページ.暮らし・総合.健康・医療.衛生研究所.感染症発生状況資料集.疾患別情報.あ行.2019年09月05日.https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/a/influresistance2.html,(参照2020年02月15日).
12 株式会社 明治.“【インフルエンザの基礎知識】インフルエンザは自力で治るの?”.明治 トップページ.インフルエンザNavi トップページ.インフルエンザを治療する.2015年11月24日.https://www.meiji.co.jp/influ-navi/treatment/detail06.html,(参照2020年02月15日).
13 一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会.“インフルエンザワクチン”.日本プライマリ・ケア連合学会 トップページ.こどもとおとなのワクチンサイト トップページ.ワクチン情報.ワクチンと病気について.2018年06月01日.https://www.vaccine4all.jp/topics_I-detail.php?tid=14,(参照2020年02月15日).
14 クラシエホールディングス株式会社.“[薬剤師執筆]汗っかきは多汗症!? 漢方でみる「あなたの汗タイプ」の原因とおすすめ食べ物”.Kampoful Life トップページ.https://www.kracie.co.jp/kampo/kampofullife/body/?p=5048,(参照2020年02月17日).