14.女性エンジニアと創造しよう!未来の地球環境:「大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』」見聞録14
2024年06月29日、私は「大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』」(以下同イベント)に一般客として参加した([1])。
「女性エンジニアと創造しよう!未来の地球環境」で、部局横断型女性技術職員ネットワークは、吸水性ポリマーに着目し、その驚くべき機能を、実験を通して楽しく紹介した(1)。
当然この実験には参加できなかったが、吸水性ポリマーの勉強をする機会を私に与えてくれたことも事実である。
高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer:SAP)は、自重の100倍〜1000倍の水を吸水できる高い水分保持性能を有するように設計された高分子である。
1974年、米国農務省の研究所が澱粉誘導体の研究中に約1000倍の吸水力を有する高分子を合成した。
その後に用途開発が進んでポリアクリル酸系等の種々の組成を有する高分子が開発され、「高吸水性ポリマー」と呼ばれるようになった。
高吸水性ポリマーは高分子の長い鎖が絡み合った状態をしている。
水と触れると高分子の網が広がり、この網目に水が閉じ込められることで、高い水分保持性を示す。
このような吸水の仕組みにより、一度吸収した水はほとんど外に出ない。
その用途は多岐にわたるが、以下がその一部である(図14.01,[2],[3])。
衛生用品:紙おむつ、ナプキン
ペット用品:ペットシート
食品・流通:保冷用ゲル剤
農業・園芸:土壌保水剤、育苗用シート
日用品:使い捨てカイロ、ゲル芳香剤
メディカル:廃血液固化剤
植林:土壌改良剤
なお、高吸水性ポリマーに関する大阪大学の研究を以下に紹介する。
1.2021年03月18日、大阪大学大学院理学研究科の橋爪章仁教授および産業科学研究所の原田明特任教授(常勤)らの研究グループは、相互作用残基として環状オリゴ糖(β-シクロデキストリン(β-CD))とアダマンタン(Ad)を導入した高吸水性ポリマーの球状マイクロ粒子(直径約100〜200 μm)が形成する集積体の形状が相互作用残基の導入量を調整することによって制御できることを世界で初めて明らかにしたことを発表した。これにより、分子認識に基づく巨視的集合体である生物が多様な形状を示す起源の解明に繋がることが期待される([4])。
2.2023年10月16日、大阪大学大学院工学研究科の宇山 浩 教授らは、安価なデンプンをベースとして生分解性高性能SAPを開発したことを発表した。自然界に豊富に存在する天然物でデンプンを化学修飾し、多孔質粒子状に加工することで高速吸水を可能にした。水を1分以内で迅速に吸収するため、SAP用材料として好適である。
SAPは紙おむつに多く用いられている。紙おむつ廃棄物の排出量は近年増大し、社会問題化している。この生分解性SAPを用い、将来的にSAPのプラスチック パーツを生分解性プラスチックに置き換えることで、紙おむつ廃棄物のコンポスト処理が可能になる。従来から、SAPを生分解性にすることは困難とされていたが、今回の開発技術は紙おむつ廃棄物の処理方法を大きく見直すことにつながる([5])。
吸水性ポリマーの勉強をする機会を私に与えてくれたこと、および、大阪大学によるその最新研究を知ることでできたことに関して、部局横断型女性技術職員ネットワークには非常に感謝している。
参考文献
[1] 国立大学法人 大阪大学 共創機構.“大阪大学共創DAY@EXPOCITY 2024『キラめく科学・トキめく未来』”.大阪大学 共創機構 ホームページ.NEWS&TOPICS.2024年06月07日.https://www.ccb.osaka-u.ac.jp/news/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%85%B1%E5%89%B5dayexpocity-2024%E3%80%8E%E3%82%AD%E3%83%A9%E3%82%81%E3%81%8F%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%AD%E3%82%81%E3%81%8F%E6%9C%AA%E6%9D%A5/,(参照2024年07月13日).
[2] 岡畑興産株式会社.“高吸水性ポリマー とは?その特徴や用途について詳しく解説!”.岡畑興産 トップページ.岡畑興産ブログ.機能材原料.2022年04月04日.https://okahata.co.jp/blog/functional-material/what-super-absorbent-polymer,(参照2024年07月13日).
[3] 公益財団法人 国際緑化推進センター.“超吸水性高分子材SAP(植栽時)”.森林再生テクニカルノート ホームページ.適用条件でさがす.乾燥地.https://jifpro.or.jp/tpps/conditions/conditions-cat03/d06/,(参照2024年07月13日).
[4] 国立大学法人 大阪大学.“集合体の”形”を決めるメカニズム 分子認識相互作用の強さによって制御 生物の多様な形状の起源に迫る”.ResOU トップページ.自然科学系.2021年03月18日.https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210318_1,(参照2024年07月13日).
[5] 国立大学法人 大阪大学.“デンプンから生分解性高吸水性ポリマーを開発 紙おむつ廃棄物のコンポスト処理を可能とする新技術”.ResOU トップページ.工学系.2023年10月16日.https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231016_3,(参照2024年07月13日).