展示物から「次世代スマート ホスピタル202X 診察」を振り返る:日本医学会総会2023東京 博覧会 次世代スマート ホスピタル202X 01
2023年04月22日、私は東京国際フォーラムを訪れ、一般客として、日本医学会総会 2023 東京 博覧会(以下2023博覧会)に参加した([1])。
「次世代スマート ホスピタル202X」は人生100年時代における次世代のスマート ホスピタルの姿を紹介するものである([2])。
スマート ホスピタルは、情報技術(Information Technology:IT)を用いた医療サービスの質の向上、医療の業務効率化、医療従事者の働き方改革、および、利用者の利便性向上などをめざす、いわば医療業界のデジタルトランス フォーメーション(Digital Transformation:DX)を実現する試みのことである。
想定されている具体的な技術としては、電子カルテをはじめとするデータ活用、人工知能(Artificial Intelligence:AI)診断、遠隔診療などがある([3])。
各地方自治体は、高齢化の加速、医療施設・従事者不足、および、医療費の肥大化などの課題に直面している。また、人口の減少・分散化に伴い、市民の健康的な生活を確保し福祉を推進するための公共交通や施設といった「固定化インフラ」の構築・提供はさらに難しくなっている。
しかし、スマート ホスピタルの導入により、多様化する健康課題に対して、「人やサービスを必要なところに移動」などの画一化されない形での、課題へのサービスの提供が可能となる。
本記事では、「次世代スマート ホスピタル202X 診察」での展示物を紹介する。
なお、本記事は「次世代スマート ホスピタル202X 診察」に基づくものである([4])。
医療MaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)はオンライン診療システムや医療機器を搭載した自動車に看護師が乗り込み、患者のもとに訪問し、医療を患者の生活する場で実現する取り組みである。
医療MaaSは地方の医療不足を補う手段として活用されている([5],[6])が、2022年02月から埼玉県南部エリアで医療法人慈公会 公平病院(埼玉県戸田市)が運用する都市型の医療MaaSが導入され、患者の生活の場で医療が完結するまちづくりが進んでいる(図01.01,[7])。
2022年02月08日、東日本旅客鉄道株式会社(以下JR東日本)は、「スマート健康ステーション」(図01.02)として、2022年04月にハイブリッド クリニックである「あおいクリニック-駅ホーム西国分寺-(運営:医療法人社団 創青会)」(以下同診療所)を西国分寺駅 中央線上りホーム上に開業予定であることを発表した。なお、このハイブリッド クリニックは駅ホーム上クリニック(対面)とオンライン診療ブース(非対面)(図01.03)から成る([8])。
2022年04月04日、同診療所は新規開院し、現在に至る([9])。
また、JR東日本は自社の交通ネットワークを組み合わせ、治療の選択肢の少ない地方にスマート健康ステーションを拡大することで、都心の先進医療を日本各地へ提供するなど、日本各地と都心の医療格差の課題に取り組んでいる。
パワー ナップ(Power Nap:積極的仮眠)は、社会心理学者ジェームス・マース(コーネル大学、以下敬称略)が提唱した昼間の短時間仮眠のことである。要は「昼寝」だが、仕事のパフォーマンス向上に直結する習慣として、Google、Apple、Microsoft、および、NIKEなどの世界的企業では、オフィスに仮眠スペースを設けたり、睡眠装置を置いたりするなどで、積極的に推奨している。
パワー ナップがもたらす利益は以下の通りである([10])。
l 疲れがすっきり取れる。
l 判断力、理解力、および、集中力が上がる。
l やる気が増える。
l 自由な発想が生まれやすくなる。
l 作業効率が上がる。
西川株式会社は、オフィスの仮眠スペース『ちょっと寝®ルーム』を中心に、快適で効率的なパワーナップを実現できる施設やノウハウをワン パッケージにして提案している([11])。
実際、2023年03月30日、西川株式会社はこのたび、東北大学病院の医療従事者向けに、当社の研究機関日本睡眠科学研究所が監修した快適仮眠スペース『ちょっと寝®ルーム』を同病院内に導入したことを東北大学は発表した([12])。
GEヘルスケア・ジャパン株式会社は、ポケットエコー Vscanシリーズ([13])、ならびに、超音波診断装置であるLOGIQ P10(図01.04,[14])とVoluson S10([15])を展示した。
株式会社サンウェルズは、服部信孝 順天堂大学医学部神経学講座・順天堂医院脳神経内科 教授らのグループと、2019年に共同研究講座「ICT制御に基づく在宅医療開発講座」を開設し、パーキンソン病(PD)専門ホーム「PDハウス」における情報通信技術(ICT)を活用したPD患者の生活の質を改善するためのホーム アダプテーションの研究・開発を進めてきた。
2022年06月03日、この共同研究講座の中で、順天堂大学が開発した「拡張現実(AR)技術などを用いた3次元(3D)映像によるパーキンソン病患者の双方向型オンライン遠隔診療システム」の実証実験に成功したことを順天堂大学とPDハウス小坂(石川県金沢市)をオンラインでつないだ合同記者会見で発表した([16])。
「次世代スマート ホスピタル202X 診察」で、私は主に遠隔診療、特にオンライン診療の進歩を目撃できた。
オンライン診療は感染症のリスクを低減できるだけでなく、移動などの患者の負担を軽減できる。
課題は多いとはいえ、オンライン診療は普及するだろう([17],[18])。また、個人的にも期待する。
参考文献
[1] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ”.https://minna-expo.tokyo/,(参照2023年05月13日).
[2] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“次世代スマート ホスピタル202X”.第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ.https://minna-expo.tokyo/pages/smart-hospital,(参照2023年05月13日).
[3] 株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト.“スマート ホスピタルとは? 医療業界のDX(デジタル トランスフォーメーション)”.株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト トップページ.ビジネス コラム.IoT.2022年05月14日.https://www.hitachi-solutions-create.co.jp/column/iot/smart-hospital.html,(参照2023年05月13日).
[4] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“診察”.第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ.次世代スマート ホスピタル202X.https://minna-expo.tokyo/pages/smart-hospital/examination,(参照2023年05月13日).
[5] MONET Technologies株式会社.“医療MaaS”.MONET Technologies トップページ.サービス・ソリューション.https://www.monet-technologies.com/solution/healthcare,(参照2023年05月14日).
[6] MONET Technologies株式会社.“【長野県伊那市】医師の乗らない移動診療車で医療サービスが患者のもとへ。MONET初の医療MaaS”.MONET Technologies トップページ.事例.https://www.monet-technologies.com/case/010,(参照2023年05月14日).
[7] 株式会社 フィリップス・ジャパン.“フィリップス × 公平病院、多様な地域医療ニーズに柔軟に対応するため「地域のかかりつけ病院」が所有する新しい「医療MaaS」モデルを開発”.フィリップス・ジャパン ホームページ.ニュース.プレス リリース.2022年02月17日.https://www.philips.co.jp/a-w/about/news/archive/standard/about/news/press/2022/20220217-philips-kodaira-hospital-to-flexibly-meet-diverse-community-medical.html,(参照2023年05月14日).
[8] 東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本).“日本初!駅ホーム上に「スマート健康ステーション」OPEN~リアルとオンラインのハイブリッドクリニック~”.JR東日本 企業サイト トップページ.ニュースリリース.ニュースリリース(アーカイブ).2021年度.2022年02月08日.https://www.jreast.co.jp/press/2021/20220208_ho01.pdf,(参照2023年05月19日).
[9] 医療法人社団 創青会.“開院いたしました”.あおいクリニック-駅ホーム西国分寺- ホームページ.お知らせ News.2022年04月05日.https://nishikoku.aoiclinic.net/2022/04/05/%e9%96%8b%e9%99%a2%e3%81%84%e3%81%9f%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/,(参照2023年05月19日).
[10] 株式会社 フィリップス・ジャパン.“パワーナップ(積極的仮眠)で人生のパフォーマンスが上がる”.フィリップス・ジャパン ホームページ.ニュース.ブログ.2019年03月01日.https://www.philips.co.jp/a-w/about/news/archive/standard/about/blogs/healthcare/20190301-blog-powernap-for-good-sleep.html,(参照2023年05月21日).
[11] 西川株式会社.“健康経営”.西川の法人事業 ホームページ.https://www.nishikawa1566.com/business/outline/health-management/powernap_room.html,(参照2023年05月21日).
[12] 国立大学法人 東北大学.“西川の快適仮眠スペース『ちょっと寝®ルーム』を東北大学病院に導入し、医療の現場をサポート”.東北大学 ホームページ.2023年のプレスリリース・研究成果.2023年03月30日.https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/03/press20230330-02-nishikawa.html,(参照2023年05月21日).
[13] GEヘルスケア・ジャパン株式会社.“ポケットエコー Vscanシリーズ”.GEヘルスケア・ジャパン ホームページ.開業医の皆さまをサポートするGE画像診断装置の総合サイト.https://www.gehealthcare.co.jp/clinic/vscan,(参照2023年05月21日).
[14] GEヘルスケア・ジャパン株式会社.“LOGIQ P10”.GEヘルスケア・ジャパン ホームページ.https://www.gehealthcare.co.jp/products/logiq-p10-xdclear,(参照2023年05月21日).
[15] GEヘルスケア・ジャパン株式会社.“Voluson Women’s Health 産婦人科向け超音波画像診断装置”.GEヘルスケア・ジャパン ホームページ.超音波画像診断装置.https://www.gehealthcare.co.jp/products/ultrasound/voluson,(参照2023年05月21日).
[16] 株式会社 サンウェルズ.“順天堂大学医学部神経学講座×株式会社サンウェルズによる「双方向性3次元オンライン診療システム」の実証実験に成功しました(6/3発表記者会見)”.サンウェルズ ホームページ.お知らせ.2022年06月03日.https://sunwels.jp/pdh/news/news/1056/,(参照2023年05月21日).
[17] 株式会社 メドレー CLINICS事業部.“オンライン診療のメリットと普及への課題 | 医療関係者向けに解説します”.CLINICS トップページ.全ての記事.2021年11月30日.https://clinics-cloud.com/column/26,(参照2023年05月21日).
[18] 株式会社 メドレー CLINICS事業部.“遠隔診療とオンライン診療に違いはある?メリットや遠隔医療についても徹底解説します”.CLINICS トップページ.全ての記事.2023年03月06日.https://clinics-cloud.com/column/318,(参照2023年05月21日).
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