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04.Be the match:超ECO祭2024 訪問記 04

同志社大学 商学部 瓜生原葉子(以下敬称略)研究室(以下瓜生原ゼミ)は、2024年11月09、10日にイオンモールKYOTOで「超ECO祭2024」を催した。なお、私は10日に参加した([1])。


骨髄バンクは、白血病などの血液疾患の治療のための造血幹細胞移植のうち「骨髄移植」や「末梢血幹細胞移植」が必要な患者と、それを提供するドナーをつなぐ公的事業である([2])。


「超ECO祭2024」のブースの1つである​「Be the match」で、瓜生原ゼミと独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)科研費基盤研究(B)JP22H01720は、日常のあらゆる確率に驚く「確率展」を催すことで、骨髄バンクでドナーが見つかる確率は、兄弟姉妹で4分の1、非血縁関係で数百から数万分の1であること、および、それ故1人でも多くのドナー登録が必要となることを伝えた(図04.01,[3][4])。

図04.01.「Be the match」:確率展。


ヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen:HLA)の型は非常に多様で、あわせて数万通りの組み合わせがあるため、自分と完全に一致するHLA型の人は、数百~数万人に1人の確率でしか存在しないと言われている。父親と母親から同じHLA型を受け継いだ場合、「HLAホモ接合体」と言う。例えばA座について、A1、A2、A3...と数十種類の型があるが、両親それぞれから2つの同じ型を受け継いだA1A1、A2A2、A3A3の様な場合を「HLAホモ接合体」と言い、細胞移植においては、A1A1であればA1A2の人やA1A3の人に移植しても拒絶反応が起こりにくいと考えられる。

公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団が所有するHLAホモ人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)ストックは、HLA型の3座(HLA-A、HLA-B、HLA-DRの3座)をホモ接合体(父方由来と母方由来の遺伝子が同一)で持つ健康なドナーから製造した臨床用iPS細胞である。この臨床用iPS細胞を用いた治療用細胞の移植では、移植時の免疫拒絶反応が起きにくいと考えられる。この臨床用iPS細胞を日本国内でみられるHLA型遺伝子頻度の上位140種からiPS細胞を作製することができれば、日本人の約9割への移植時免疫反応が起きにくい細胞移植が可能と試算されている。

2023年06月14日、京都大学iPS細胞研究財団は、臨床用HLAゲノム編集iPS細胞ストックの提供を同日より開始したこと、および、臨床での使用実績のあるHLAホモiPS細胞ストックを用いて、HLAゲノム編集技術によりHLA遺伝子の一部を欠失させた細胞を作製したことを発表した。

HLAゲノム編集iPS細胞ストックから作製した分化細胞も、移植した際の免疫拒絶リスクが少なくなることが期待される([5][6][7])。


2024年11月19日、熊本大学発生医学研究所組織幹細胞分野の小川峰太郎教授、古賀沙緒里助教および鶴田真理子大学院生らの研究グループは、初期の造血性内皮細胞が造血幹細胞に分化するために必要なシグナル分子の1つがBMP4であることを明らかにしたことを発表した。本研究成果は将来的に、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞)やiPS細胞などの多能性幹細胞から造血幹細胞を作製する培養法の確立に繋がることが期待される([8])。 


とはいえ、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞由来の造血幹細胞の普及はかなり先の様である。とりあえずは、骨髄バンクでのドナー登録を呼びかけるしかない。



参考文献

[1] 学校法人 同志社 同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動研究会.“超ECO祭2024”.同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動 ホームページ.https://www.medieco.net/%E8%B6%85eco%E7%A5%AD2024,(参照2024年12月07日).

[2] 内閣府 大臣官房 政府広報室.“命をつなぐ骨髄バンク あなたのドナー登録を待っている人がいます”.政府広報オンライン トップページ.健康・医療・福祉.2024年10月01日.https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html,(参照2024年12月10日).

[3] 学校法人 同志社 同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動研究会.“​ブース紹介”.同志社大学 商学部 瓜生原葉子研究室 医療のエコ活動 ホームページ.超ECO祭2024.https://www.medieco.net/s-projects-side-by-side,(参照2024年12月07日).

[4] 公益財団法人 日本骨髄バンク.“骨髄バンクとは”.日本骨髄バンク ホームページ.骨髄バンクについて知る.https://www.jmdp.or.jp/about/marrow/,(参照2024年12月10日).

[5] 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団.“HLAホモiPS細胞ストック”.京都大学iPS細胞研究財団 ホームページ.iPS細胞提供.https://www.cira-foundation.or.jp/j/provision-of-ips-cells/homozygous/,(参照2024年12月11日).

[6] 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団.“臨床用HLAゲノム編集iPS細胞ストックの提供開始”.京都大学iPS細胞研究財団 ホームページ.お知らせ.2023年06月14日.https://www.cira-foundation.or.jp/j/news/2023/06/14-000319.html,(参照2024年12月11日).

[7] 公益財団法人 京都大学iPS細胞研究財団.“HLAゲノム編集iPS細胞ストック(ゲノム編集株)”.京都大学iPS細胞研究財団 ホームページ.iPS細胞提供.https://www.cira-foundation.or.jp/j/provision-of-ips-cells/genome-edited/,(参照2024年12月11日).

[8] 国立大学法人 熊本大学.“造血幹細胞の発生初期を司るシグナル分子を解明”.熊本大学 トップページ.お知らせ.お知らせ(生命科学先端研究).2024年11月19日.https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei-sentankenkyu/20241119,(参照2024年12月11日).

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