2000年代のプリキュアを振り返る―「新機軸」から「定番」への道:「全プリキュア展 ~20th Anniversary Memories~ 大阪」訪問記 その02
2023年10月07日、私は大阪南港ATCホール Aホールを訪れ、一般客として「全プリキュア展 ~20th Anniversary Memories~ 大阪」(以下同展)に参加した([1])。
『初代』は「女の子だって暴れたい」という基本理念に基づいて創られた作品で、同シリーズの第1作目である。とはいえ、「暴れたい」と言ってはいるが、内容は決して暴力的ではない。男児向け作品のようにただ力に訴えて敵を倒すのではなく、敵はあくまでも「浄化する」というスタイルを取る。このアクティブさと優しさを両立している点もプリキュアの魅力であり、この点も後の作品群にしっかり受け継がれている(図02.01,図02.02,[2],[3])。
『ふたりはプリキュア Max Heart』(以下『MH』)は『初代』の続編である。なお、『Max Heart』の由来は、締切ギリギリまでタイトルを決められなかった鷲尾天プロデューサー(以下敬称略)と西尾大介シリーズ ディレクターが「もういっぱいいっぱいだね」と話したことに由来する([4])。
『初代』のイラスト(図02.03)、『初代』の衣装(図02.04)、プリキュア カード(図02.05)、および、キュアブラックの等身大フィギュア(図02.06)、設定画(図02.07)、および、『初代』と『MH』のアイテム(図02.08)が展示された。
ドツクゾーンは『初代』と『MH』に登場する闇の勢力である(図02.09,[5])。
『ふたりはプリキュアSplash☆Star』(以下『SS』)は同シリーズで初めて主人公交代を行った作品であるため、放映当時は賛否両論であった。
このことは当時の作品評価にも影を落としていたが、主人公交代制が根付いた現在では再評価されてきている。
同シリーズで作品タイトルに『ふたりはプリキュア』がついた作品はこれが最後で、本作は「ふたりはプリキュアシリーズ」最終作品である。
これより後の作品ではプリキュアの数は「ふたり」ではなくなった(初期は2人という場合はあっても、後々にプリキュア追加戦士が加入して3人以上になる作品となった)。
また、『SS』の企画においては鷲尾によって、女児向けに不馴れな中で作られた前作の反省点を活かす目的から「本気で小さな女の子たちとその家庭の『ために』送り出す、かわいくて美しいプリキュア」という方針が取られた(図02.10,図02.11,[6])。
『Yes!プリキュア5』(以下『5』)は、プリキュア5のメンバーが同シリーズ初の5人チームとなった作品であるが、「チームもの」として成り立たせるために『湘南爆走族』に代表されるヤンキー(暴走族)漫画で用いられる「ソウルブラザー(義兄弟)」のイメージが下敷きにされている([7])。結局、『5』のメンバーの構成がスーパー戦隊シリーズのそれに似ているのは、東映グループの伝統ということで([8])。
『5』の続編として、『Yes!プリキュア5GoGo!』(以下『5GoGo』,[9])と『キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜』(以下『キボウノチカラ』,[10])が放送・配信されている。
『5』でのプリキュア5やそのアイテムのモチーフは蝶で、『5GoGo』でのそれらは薔薇である(図02.12,図02.13,[11])。
プリキュア5と敵対するナイトメア(図02.14,[12])とエターナル(図02.15,[13])はブラック企業の戯画である。この中では、ブンビーだけが生き残り、『キボウノチカラ』で、のぞみ達に「社会とはそういうもんだ!お前達もやっと大人のつらさがわかったか」ということで、大人の世知辛さを伝えている。
『フレッシュプリキュア!』(以下『フレプリ』)より、同シリーズは人気に関わらず1年で物語が完結し、翌年度からはキャラクターと世界観を変えた別のプリキュアが登場する新作を作るという制作体制がとられるようになった。要は、『フレプリ』で同シリーズの「スーパー戦隊シリーズ化」が始まったわけで、2023年現在でも続いている。
『フレプリ』における最大の変更点は、プリキュア達を「力なき人々を守るヒーロー」として位置づけたことである。
また、『フレプリ』で初めて、「敵から味方に寝返ってプリキュアに覚醒する女幹部」も登場した。これについても、『フレプリ』以降も定番化している。
プリキュアのコスチュームからアイテムまで、クローバーのマークがデザイン上のモチーフとして多用されているが、それは敵対組織である管理国家ラビリンスの目的が不幸を作り出すことなので、プリキュア側には幸運の象徴である四葉のクローバーをモチーフとしたわけである(図02.16,図02.17,図02.18,[14])。
『初代』から『フレプリ』までの作品は、同シリーズの「新機軸」から「定番」への道を辿るものである。仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズ(『機界戦隊ゼンカイジャー』から『王様戦隊キングオージャー』までの作品群を視れば一目瞭然)にも当てはまることだが、この道は平坦な道どころか、非常に険しい道である。
参考文献
[1] 東映アニメーション株式会社.“全プリキュア展 ~20th Anniversary Memories~ ホームページ”.https://www.toei-anim.co.jp/all_precure_exh/,(参照2023年10月30日).
[2] ピクシブ株式会社.“ふたりはプリキュア”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.ふたりはプリキュアシリーズ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%AF%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2,(参照2023年10月30日).
[3] ピクシブ株式会社.“女の子だって暴れたい”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.ふたりはプリキュアシリーズ.ふたりはプリキュア.https://dic.pixiv.net/a/%E5%A5%B3%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%9A%B4%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%84,(参照2023年10月30日).
[4] ピクシブ株式会社.“ふたりはプリキュアMaxHeart”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.ふたりはプリキュアシリーズ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%AF%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2MaxHeart,(参照2023年10月30日).
[5] ピクシブ株式会社.“ドツクゾーン”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.ふたりはプリキュアシリーズ.ふたりはプリキュア.https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%89%E3%83%84%E3%82%AF%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3,(参照2023年10月30日).
[6] ピクシブ株式会社.“ふたりはプリキュアSplash☆Star”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.ふたりはプリキュアシリーズ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%81%B5%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%AF%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2Splash%E2%98%86Star,(参照2023年10月31日).
[7] ピクシブ株式会社.“Yes!プリキュア5”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.Yes!プリキュア5シリーズ.https://dic.pixiv.net/a/Yes%21%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A25,(参照2023年10月31日).
[8] ピクシブ株式会社.“プリキュアスーパー戦隊シリーズ”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュア一覧記事纏め.プリキュア(二次創作) .プリキュアシリーズのコラボタグ一覧.プリキュア×特撮.https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%88%A6%E9%9A%8A%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA,(参照2023年10月31日).
[9] ピクシブ株式会社.“Yes!プリキュア5GoGo!”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.Yes!プリキュア5シリーズ.https://dic.pixiv.net/a/Yes%21%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A25GoGo%21,(参照2023年10月31日).
[10] ピクシブ株式会社.“キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.オトナプリキュアシリーズ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AD%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%83%8E%E3%83%81%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%80%9C%E3%82%AA%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E2%80%9823%E3%80%9C,(参照2023年10月31日).
[11] ピクシブ株式会社.“キュアドリーム”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.Yes!プリキュア5シリーズ.ナッツハウス.プリキュア5.夢原のぞみ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0,(参照2023年10月31日).
[12] ピクシブ株式会社.“ナイトメア(プリキュア)”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.Yes!プリキュア5シリーズ.Yes!プリキュア5.https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%A1%E3%82%A2%28%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%29,(参照2023年11月01日).
[13] ピクシブ株式会社.“エターナル(プリキュア)”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.Yes!プリキュア5シリーズ.Yes!プリキュア5GoGo!.https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AB%28%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2%29,(参照2023年11月01日).
[14] ピクシブ株式会社.“フレッシュプリキュア”.ピクシブ百科事典 ホームページ.一般.生活.日常.コミュニケーション.表現.映像.映画.邦画.東映.東映アニメーション.東堂いづみ.プリキュア.プリキュアシリーズ.平成プリキュア.平成プリキュアシリーズ.https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%97%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%82%A2,(参照2023年11月05日).
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