「京都大学 宇治キャンパス公開2022」見聞録01:14.巨大分子に触れよう!

2022年10月23日、私は「京都大学 宇治キャンパス公開2022」(以下「宇治キャンパス公開2022」、図00.01,[1])に一般客として参加した。

「宇治キャンパス公開2022」内の「14.巨大分子に触れよう!」で、化学研究所 材料機能化学研究系 高分子材料設計化学研究領域 辻井研究室(以下同研究室)はデモ実験室で人工イクラを作ることで、高分子の面白さと不思議さを紹介した(図14.01,[2],[3])。

図14.01.人工イクラをつくろう。

人工イクラの成分であるアルギン酸は塩化カルシウム水溶液内のカルシウム イオンと反応して、水に溶けにくくなり表面だけが固化し、膜を生じる。

この膜は、イオンなどの小さな粒子を通すが、デンプンなどの大きな分子を通さない。

それ故、内側は液体状となり、外側は膜状のカプセルが作製できる。

なお、人工イクラは1970年代後半に商品化され、現在も市場に流通している。ただし、本物と比較して、風味は劣る([4],[5],[6])。

同研究室のデモ実験室で、私は絵具 赤を使って、人工イクラを作った(図14.02)。この実験に、私はわくわくした。

(a)原料の1つである絵具 赤。
(b)人工イクラ製造中。
(c)人工イクラ完成。
図14.02.人工イクラ。

なお、同研究室はリビングラジカル重合を材料表面からの重合に適用することで、ブラシ構造の精密制御と高密度化が達成された 「濃厚ブラシ系」を世界で初めて実現し、多様な材料表面への適用手法を確立することに成功した。また、その構造特性においては、濃厚ポリマーブラシ中の柔軟な高分子鎖が良溶媒中で伸び切り鎖長に匹敵するほど高度に伸長配向するという驚くべき事実を発見した。さらに、多くの新規な物性(大きな圧縮抵抗、超摩擦特性、明確なサイズ排除効果、生体適合性、優れた機械的特性など)を見出し、 濃厚ポリマーブラシが独自で、全く新しい性質・機能をもつ表面であることを実証した。なお、 濃厚ポリマーブラシの合成・物性科学的体系化は、次世代の分離技術やバイオインターフェースの創成など、機能・応用面で広範な材料科学分野の新局面を拓くシーズを提供しうると期待される([7])。

余談だが、私はこの人工イクラから、漫画『食戟のソーマ』第66話で幸平創真が作った「海苔の旨味爆弾」を連想した([8])。

ここで、高分子を知るために必須な文献やサイトを以下に示す。以下の文献やサイトから、合成高分子化合物が日常生活の一部になっていることを改めて痛感する。

 1.岩田忠久 編集,内田かずひろ イラスト.イチからつくる プラスチック.第1刷,一般社団法人 農山漁村文化協会,2020年03月01日,36 p.(「イチからつくる」シリーズ).

本著は、主に児童向けのプラスチックを知るための良書である。また、特にマイクロプラスチックによる環境汚染、および、編者である岩田忠久(以下敬称略)による生分解性プラスチックに関する研究にも言及している。

 

2.扇澤敏明 著,柿本雅明 著,鞠谷雄士 著,塩谷正俊 著.トコトンやさしい高分子の本.初版 第1刷,株式会社 日刊工業新聞社,2017年03月29日,160 p.(今日からモノ知りシリーズ).

本著は初学者向けで、高分子に関して簡潔かつ詳細にまとめている。

 

3.齋藤勝裕 著.プラスチック知られざる世界.初版,株式会社 シー アンド アール研究所,2018年06月01日,240 p.(SUPERサイエンス).

本著も初学者向けで、高分子に関して簡潔かつ詳細にまとめている。

 

4.齋藤勝裕 著.図解入門 よくわかる 最新 高分子化学の基本と仕組み.第1版 第1刷,株式会社 秀和システム,2021年04月10日,232 p.(図解入門How-nual Visual Guide Book).

本書は、高分子全般に関して詳細に記述している。また、天然高分子に関しても詳細に記述している。

高分子全般を本格的に知るためには、お勧めである。

 

5.桑嶋幹 著,木原伸浩 著,工藤保広 著.図解入門よくわかる最新 プラスチックの仕組みとはたらき[第4版].第1版 第1刷,株式会社 秀和システム,2022年09月06日,256 p.(図解入門How-nual Visual Guide Book).

本書は、プラスチック全般に関して詳細に記述している。また、プラスチックと資源・環境・ごみ問題に関しても詳細に記述している。

プラスチック全般だけでなく、プラスチック問題(例.環境問題、海洋汚染、マイクロプラスチック問題)も知るためには、お勧めである。


6.白川英樹 著,廣木一亮 著.実験でわかる 電気をとおすプラスチックのひみつ.初版 第1刷,株式会社 コロナ社,2017年12月28日,166 p.

セレンディピティーの産物である導電性プラスチックは私たちの生活を大幅に変え、現在ではテレビ、携帯電話、および、パソコンなどの私たちの身の回りのあらゆる電子機器に使われている。

本著の参考にして、導電性プラスチックを用いる実験を行うことで、その特性を体感できるはずである。

 

7.Chem-Station.“高分子ってよく聞くけど、何がすごいの?”.Chem-Station ホームページ.化学者のつぶやき.一般的な話題.2021年03月30日.https://www.chem-station.com/blog/2021/03/kobunshi.html,(参照2022年12月13日).

高分子を知りたければとりあえず、このページの閲覧をお勧めする。

 

8.公益社団法人 高分子学会.“高分子未来塾 ホームページ”.https://www.spsj.or.jp/mj/index.html,(参照2022年12月13日).

初学者、特に小さな子供やその親向けの、優良サイトである。

関連記事


参考文献

[1] 国立大学法人 京都大学.“京都大学 宇治キャンパス公開2022 ホームページ”.https://www.jimu.uji.kyoto-u.ac.jp/open-campus/2022/index.html,(参照2022年12月13日).

[2] 国立大学法人 京都大学.“公開ラボ”.京都大学 宇治キャンパス公開2022 ホームページ.https://www.jimu.uji.kyoto-u.ac.jp/open-campus/2022/publiclab.html,(参照2022年12月13日).

[3] 国立大学法人 京都大学化学研究所 材料機能化学研究系 高分子材料設計化学研究領域 辻井研究室.“辻井研究室 ホームページ”.http://www.cpm.kuicr.kyoto-u.ac.jp/,(参照2022年12月13日).

[4] 学校法人 東京理科大学 川村研究室.“15.人工イクラを作ろう!”.東京理科大学 川村研究室.トップページ.その他.実験スペシャル∞.https://www.rs.kagu.tus.ac.jp/~elegance/jikkensp10/jinkouikura.html,(参照2022年12月13日).

[5] 国立大学法人 京都大学 複合原子力科学研究所.“ひかるイクラを作ってみよう!”.アトム サイエンス フェア 2011 トップページ.実験教室・体験コーナー.http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/public/atoms/JIKKEN/ikura/index.html,(参照2022年12月13日).

[6] ぎょれん販売株式会社.“【実食】「偽物いくら」の簡単な見分け方!「天然いくら」と食べ比べて、本物との違いを解説します!”.産直ネットショップ 北海道ぎょれん トップページ.いくら・筋子.2021年06月23日.https://www.gyoren.net/ikura-fake,(参照2022年12月13日).

[7] 国立大学法人 京都大学化学研究所 材料機能化学研究系 高分子材料設計化学研究領域 辻井研究室.“研究概要”.辻井研究室 ホームページ.http://www.cpm.kuicr.kyoto-u.ac.jp/research.html,(参照2022年12月13日).

[8] 株式会社 集英社.“[第66話]食戟のソーマ”.少年ジャンプ+ ホームページ.食戟のソーマ 附田祐斗/佐伯俊/森崎友紀.https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480028725141,(参照2022年12月13日).

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