あなたの食生活は大丈夫:日本医学会総会2023東京 博覧会 セルフ ケア スタジオ 02
2023年04月22日、私は東京国際フォーラムを訪れ、一般客として、日本医学会総会 2023 東京 博覧会に参加した([1])。
その中の「セルフ ケア スタジオ」内の「食と病気のリスク あなたの食生活は大丈夫?長期的な高血糖状態が招く、健康障害リスク」で、血糖値を上げやすい食事の悪習慣とその対策が紹介された。
血糖値を上げやすい食事の悪習慣とその対策は以下の通りである(図02.01)。
×:食事の回数や時間が不規則、間食が多い。→○:朝昼夜と1日3食を規則正しく取り、間食は極力避ける。
×:糖質の多い食品をよく食べる。→○:糖質の摂取量を減らし、食事全体のカロリーを抑える。
×:肉ばかり食べる。→○:飽和脂肪酸を多く含む肉よりもオメガ3脂肪酸を多く含む青魚を食べるようにする。
×:野菜をあまり食べない。→○:野菜を食べて食物繊維を摂取。野菜を先に食べて、食後の血糖値の上昇を緩やかに。
また、高血糖対策として、「肥満の解消」、「食事の改善」、および、「運動」がポイントになることも紹介された(図02.01)。
食事の改善と運動が高血糖の予防法であるが([2])、「言うは易く行うは難し」である。しかし、いや、だからこそ、高血糖、引いては糖尿病を予防するために、食事の改善と運動を地道に行う必要があるわけでね。実際、私はそうしている。
それに、1日に10.5時間以上座っている人でも、1日4,100歩歩くと死亡のリスクが20%下がり、9,000歩では39%下がるわけだし([3])。ちなみに、私は通勤時に往復で10,000歩も歩いている。
余談になるが、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学による研究を紹介する。
2020年03月05日、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の三田 智也准教授、綿田 裕孝教授らの研究グループは、朝食の欠食が2型糖尿病における血管硬化に悪影響を与えることを明らかにしたことを発表した([4])。
本研究成果のポイントは以下の通りである。
l 2型糖尿病患者における様々な生活習慣と血管硬化との関連性をコホート研究で調査
l 朝食の欠食が多いと血管の硬化が続くことを明らかに
l 朝食を欠かさず摂ることが動脈硬化を抑制する可能性
2022年09月06日、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の加賀英義 助教、代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史 准教授、河盛隆造 特任教授、綿田裕孝 教授らの研究グループは、文京区在住高齢者1,629名を対象とした調査により、2型糖尿病のみならず、男性では糖尿病予備群といわれる前糖尿病の段階から、サルコペニアのリスクが高いことを明らかにしたことを発表した。
本研究成果のポイントは以下の通りである([5])。
l 東京都文京区在住の高齢者1,629名を対象とした調査を実施。
l 2型糖尿病まで至らない前糖尿病の段階でも、男性においてはサルコペニアのリスクが高いことを明らかにした。
l 加齢、低いBMI、高い体脂肪率もサルコペニアのリスクとなっていることを明らかにした。
2023年03月21日、順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学の青山周平助教、西田友哉准教授、綿田裕孝教授、および群馬大学・北里大学・新潟大学の共同研究グループは生体内でオートファジーの活性を評価できる遺伝子改変マウスを作製し、2型糖尿病の発症に重要なインスリン抵抗性の存在下では膵β細胞のオートファジーの活性が不均一化することを見出し、その機能との関連や制御機構の一端を明らかにしたことを発表した。オートファジーは細胞の機能維持に不可欠なタンパク質分解系であり、インスリンを分泌する膵β細胞の機能維持にも寄与している。
本研究成果のポイントは以下の通りである([6])。
l 全身でオートファジーの活性を評価可能なpHluorin-LC3-mCherryマウスを作製
l 糖尿病における膵β細胞のオートファジーの変化とインスリン分泌能との関係を解明
l オートファジーの制御を介した糖尿病予防・治療法創出への基盤となる
2023年09月22日、順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科学の植木響政助手、西田友哉准教授、綿田裕孝教授、および北里大学医学部内分泌代謝内科学の共同研究グループは、膵β細胞でのみ特異的に遺伝子をノックアウトする新しい技術を確立したことを発表した。膵β細胞の機能解析は糖尿病研究の中心であり、その遺伝子を特異的にノックアウトすることはきわめて重要な研究手法である。しかし、それには莫大な費用と時間を要するという難点があった。そこで研究グループは、CRISPR-Cas9システムと、生体への遺伝子導入に頻用されるアデノ随伴ウイルス ベクターを組み合わせることで、従来の方法と比較し迅速かつ簡便に膵β細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを作製する技術「βCas9法」を確立した。このβCas9法により様々な膵β細胞特異的遺伝子ノックアウトマウスを迅速に作製することができ、糖尿病治療における研究を大きく加速することが期待される。
本研究成果のポイントは以下の通りである([7])。
l 膵β細胞特異的遺伝子ノックアウト技術であるβCas9法を確立
l 若年発症成人型糖尿病原因遺伝子のノックアウトによりβCas9法の有用性を検証
l 膵β細胞機能不全の研究を通じた2型糖尿病の病態解明を大きく加速させることを期待
2024年02月06日、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤仁嗣 大学院生、加賀英義 准教授、スポートロジーセンターの田村好史 センター長補佐/先任准教授、河盛隆造 センター長/特任教授、綿田裕孝 副センター長/主任教授らの研究グループは、文京区在住の高齢者1,438名を対象とした横断研究により、内臓脂肪蓄積が高齢期の糖代謝異常に強く関連する因子であることを明らかにしたことを発表した。
高齢化に伴い、糖尿病発症率が増加している中、65歳以上の高齢期における加齢の糖代謝への影響、そしてその重要な関連因子についての知見が不足していた。本研究の結果は、高齢期においても内臓脂肪蓄積が糖尿病発症に関連する可能性を示しており、これは予防医学の観点からも極めて有益な情報であると考えられる。
本研究成果のポイントは以下の通りである([8])。
l 東京都文京区在住の高齢者1,438名を対象とした横断研究を実施。
l 高齢期では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることを明らかにした。
l インスリン抵抗性や膵β細胞機能低下に、内臓脂肪蓄積や遊離脂肪酸が最も関連していることを明らかにした。
参考文献
[1] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ”.https://tsunagu-iryo.jp/minna-expo/,(参照2024年05月08日).
[2] ノボ ノルディスク ファーマ株式会社.“高血糖の予防法”.糖尿病サイト ホームページ.糖尿病を知る.糖尿病の症状.糖尿病と高血糖.https://www.club-dm.jp/know/basic/hyperglycemia_03.html,(参照2024年05月16日).
[3] 株式会社 日経ナショナル ジオグラフィック.“1日1万歩でなくても健康に効果、座る時間が長めでもOK、研究 いつもより少し多めに歩くだけで心血管疾患と死亡のリスクが改善”.ナショナル ジオグラフィック トップページ.ニュース.宇宙&科学.2024年04月10日.https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/040400192/?P=2,(参照2024年05月16日).
[4] 学校法人 順天堂 順天堂大学.“朝食の欠食が糖尿病の血管硬化に悪影響を与えることを明らかに~動脈硬化予防のための朝食の重要性~”.順天堂大学 トップページ.ニュース&イベント.2020年03月05日.https://www.juntendo.ac.jp/news/02792.html,(参照2024年05月17日).
[5] 学校法人 順天堂 順天堂大学.“高齢男性では糖尿病予備群の段階からサルコペニアのリスクが増大 ~高齢者を対象とした文京ヘルススタディーで明らかに~”.順天堂大学 トップページ.ニュース&イベント.2022年09月06日.https://www.juntendo.ac.jp/news/00621.html,(参照2024年05月17日).
[6] 学校法人 順天堂 順天堂大学.“糖尿病における膵β細胞オートファジーの変化を明らかに ― 膵β細胞機能維持機構の解明を通じて治療法の創出へ ―”.順天堂大学 トップページ.ニュース&イベント.2023年03月21日.https://www.juntendo.ac.jp/news/12542.html,(参照2024年05月17日).
[7] 学校法人 順天堂 順天堂大学.“膵β細胞で迅速に遺伝子をノックアウトする技術(βCas9法)を確立 ― CRISPR-Cas9システムとアデノ随伴ウイルスベクターのコンビネーション ―”.順天堂大学 トップページ.ニュース&イベント.2023年09月22日.https://www.juntendo.ac.jp/news/15809.html,(参照2024年05月17日).
[8] 学校法人 順天堂 順天堂大学.“高齢者の体脂肪と血糖値の興味深い関連性が解き明かされる ~高齢者を対象とした文京ヘルス スタディーで明らかに~”.順天堂大学 トップページ.ニュース&イベント.2024年02月06日.https://www.juntendo.ac.jp/news/17458.html,(参照2024年05月17日).
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