「若手も育ち、役割は終わったという気持ち」 18年に及ぶ日本代表活動の区切り、変わらぬ向上心
日本のリングを守ってきた男の「代表人生」が、
静かに終わろうとしていた。
竹内公輔、37歳。
18年間にわたり
日の丸の重みと誇りを背負い戦ってきた。
代表活動がほんのちょっと伸びただけ
初めて日本代表に呼ばれたのは
2004年、19歳の時。
「走れるビッグマン」
今でこそBリーグでも当たり前に見る光景だが、
2000年代当時の日本バスケ界にとっては
共に2mを超える竹内兄弟の登場は
極めてセンセーショナルだったことは
想像に難くない。
その後、
2014年のアジア競技大会では
銅メダル獲得の原動力に。
2019年には八村塁、渡邊雄太らと共に
自身2度目の世界大会(W杯)にも出場した。
半生近くに及んだ日本代表活動。
その“最後”を飾るのは
自国開催の東京オリンピック、
そう誓っていた。
それは年齢的にも良い区切りであり、
「有終の美」を飾る舞台としても
何ひとつ不足はなかったからだ。
だが、
大会直前でメンバー12名から落選。
描いた青写真通りにはいかず、
さらに、予定は狂った。
東京オリンピックが終わると、
男子代表のヘッドコーチには
トム・ホーバス氏が就任。
2023年のW杯でアジア勢最高成績、
2024年のパリオリンピック出場を目指し、
女子代表を銀メダル獲得に導いた
名将による新体制のもと、日本代表は再始動。
選考メンバーは一新され、
代表未経験の若手ビッグマンも多く招集された。
そんな中、
ホーバスHC直々のオファーが届く。
「力を貸してほしい、手伝ってくれないか」
一度は終止符を打つと決めた代表活動。
でも、「必要としてくれる人がいるなら…」
竹内は再び、慣れ親しんだ場所へ戻った。
ホーバスJAPANに初招集された21年11月、
当時の想いをこう語っている。
そして月日は流れ
今夏のアジアカップやW杯予選Window4では、
ホーバスJAPANの下で
才能を開花させたシンボル的存在の
井上宗一郎や吉井裕鷹など、
若手ビッグマンが明るい活躍を見せた。
同時にそれは
切に竹内自身が願っていたこと。
ごく自然な形で
「世代交代」という目的が果たされた今、
自身が日本代表にいる役割は
もう“終えられた”、
そういうことなのだろう。
22年の2月以来、
代表活動から遠ざかっていた竹内に、
来年のW杯への思いを
尋ねた時に出てきたのが冒頭の言葉である。
「3度目の世界」を目指す意志がない事を、
そこで初めて知った。
「代表活動の終わり」に
引退セレモニーのようなものはない。
選手が自ら宣言しない限り、
目に見える形でファンが知ることもない。
自身も「代表引退」と
明確に発表するつもりはなく、
また「力を貸してほしい」と言われれば
復帰の可能性もあるし、しないかもしれない。
未来のことは
その時になってみなければ分からないが、
スッキリした表情で淡々と語る姿からは
「日本代表ではやり切った」という達成感と
安心感が溢れていた。
Bリーグでの戦いは続いていく
しかし、プロバスケ選手としての歩みは
まだまだ終わらない。
宇都宮ブレックスは2021-22シーズン限りで
安齋竜三ヘッドコーチが退任し、
アシスタントコーチだった
佐々宜央氏が新指揮官に就任。
今季はBリーグ連覇や天皇杯優勝に加え、
東アジアスーパーリーグ(EASL)でも
初代王者を狙う。
上記のように新規大会が創設されたり、
オン・ザ・コートルールの変更や
帰化選手の増加。
さらに、世界的なビッグマンの役割変化など、
近年のバスケ界は
変化する環境への適応力がより求められる。
竹内ほどの実績を持つベテランでも
変わっていくことに一切の躊躇はない。
もちろん、毎年レベルの高い
外国籍選手がやってくるBリーグで
日本人ビッグマンが
プレータイムを得ることは簡単ではない。
2度の優勝を経験してきた竹内が考える、
Bリーグでビッグマンが生き残るために
必要なこと。
それは
「1つでも“スペシャルなもの”を持つこと」
そう教えてくれた。
時代の変化に適応し、
チームや試合の状況に応じた
正しいプレーを選択できる。
それこそが
竹内が持つ“スペシャルワン”。
現在は越谷アルファーズの
アドバイザーを務める安齋竜三氏も
以前、竹内をこう評していた。
目標は「効率の良いプレーヤーになること」
この日の取材前にも、
一人黙々、3Pシュートの練習をしていた竹内。
時代の流れや
チームに求められていることは何なのか、
貢献できる道はどこなのか。
それを見極め、向上に努める。
今もなおトップリーグの舞台で
外国籍選手と戦い続けられる背景には
そんなプロとして当たり前の徹底がある。
新シーズンの目標は
「効率の良いプレーヤーになること」だと言う。
思い出すのは、
2022年3月27日の滋賀戦。
4Qに荒谷とのコンビで得点を量産した竹内は、
試合後のインタビューで
自分よりもチャンスを幾度も演出してくれた
チーム最年少の荒谷に賛辞を送った。
チーム、そして仲間の為に自分がいる。
そんな竹内の姿勢を
象徴するかのようなシーンだった。
今季、宇都宮ブレックスは
「Go Higher」というスローガンを掲げた。
竹内も常に自分自身を進化させ、
これまでと変わらず
バスケットボール選手としての
高みを追求していくことだろう。
常に「過去最高の自分」を
アップデートし続ける男の背中を
今季は特に注目して追っていきたい。
▼記事元のNocutインタビューはこちら
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