父娘問答【3】ディズニーランド編
先日、人生初のディズニーランドを体験した娘。たいそう楽しかったらしく、帰還後2日間はいつになく穏やかニコニコ状態でしたが、3日目には魔法が解けた模様(笑)買ってもらったバルーン(姉氏はミッキー、妹氏はディズニープリンセス)は寝るときも一緒なほどのお気に入りで余韻に浸っています。
父「ディズニーランドどうだった?」
娘「楽しかったの。ミッキーにもタッチしたの」
父「ミッキーって第66代内閣総理大臣の?」
娘「それは三木武夫だし。ただ、ミッキー武夫ネタも大ハズレってわけじゃないし」
父「え、そうなの?」
娘「だってディズニーランド日本誘致に向けてウォルト・ディズニー・カンパニー会長らが来日したのは1974年12月。これって三木内閣発足と同年同月だし」
父「あ、そうだね。開園が1984年でいかにもバブル景気の徒花みたいに見えるけど、そもそもは大阪万博(1970)の成功を受けて、ディズニーランド誘致を三菱と三井が競い合ったんだよね」
娘「そうそう」
父「三菱は静岡県清水市(現・清水区)を推したけど、テーマパーク内から富士山が見えるのはアウトという理由もあって、三井不動産が推す浦安に決定したんだよね」
娘「でも、浦安の土地って「黒い水事件」(1958)による環境汚染を受けて「埋め立てによる地域再生」に転換した歴史を思うと、黒い水が黒いネズミの呼び水になったんだし」
父「う~ん。あいかわらずのブラックジョークだなぁ。千葉方式ね。で、どうだったの、ディズニーランドは?」
娘「ディズニーランドって周囲を壁に囲われた城壁都市みたいになってて、ディズニーの世界にドップリ浸れるの。パレードもとっても楽しかったの」
父「おっ、そうかそうか。やっと子どもらしい感想になった笑」
娘「囲われた空間にある世界観が表現されてて、その中をパレードが通るのが目玉企画って「一里四方は宿屋で詰まる程に、屋敷の中は 八町四方と成るのやで」を連想しちゃうの」
父「笑!なにそれ、天理教の『おやさとやかた構想』(1954-)でしょ。あれって、2代目真柱・中山正善と建築家・内田祥三&奥村音造による都市計画だよね」
娘「甘露台を収める神殿を取り囲むようにRC造建築が連続して建設されて、それが一辺約872メートルにもなるってスゴイね。しかも、そのコンセプトに教祖の言葉があるって」
父「全国の天理教教会は原則としてこの甘露台に向かって拝礼できるよう配置計画がされてるって、なんかイスラム教みたいだよね」
娘「だって、2代目真柱・中山正善って東京帝国大学の宗教学科卒でしょ。当然に大川周明とも交流があったから、イスラム教についても情報を得てるはずでしょ」
父「八町四方のなかに世界観を表現してるって、たしかにディズニーランドだよなぁ。しかも、おやさとパレードもあるね笑、ただあれは「おぢばがえり」の時期だけでしょ」
娘「しかも「おぢばがえり」って人間の命が発祥した「ぢば」に帰るっていう意味でしょ。いわばフィクションとしての故郷って、ウォルト・ディズニーがアナハイムにディズニーランドをつくった際に、自らの故郷の街並みを忠実再現しようとした=故郷をフィクショナルに再生しようとしたのと共通するの」
父「あぁ、そうだね確かに。エドワード・レルフがディズニーランドを評して「即席で歴史性のない開発であるだけでなく、実質的に小さな専制国家である」って言ったのも当てはまるよな」
娘「だからディズニーの「ハピネスはここにある」っていうフレーズは、天理教の「ようこそおかえり」と呼応していると思うの。それと同時に産業資本家・ディズニーと建築のメタファーを多用する近代宗教・天理教の背景にはテーラー主義&フォード主義による生産力向上と労働者の階層秩序形成があるし」
父「たしかにね。そういう意味では、ディズニーランドって文化というより産業って見るほうがいろいろ分かる気がする。産業化・商品化の徹底がファンタジーを生むわけだしね」
娘「あと、やっぱりアメリカ映画産業が生み出したテーマパークとあって、ロマンスの押し売りが激しいのが苦手」
父「たしかにねぇ。家族や家族予備軍としてのカップルが大半の来場者だから、ロマンスが消費の対象になってるね。あぁ、だからディズニープリンセスよりも、魔法使い(イェン・シッド)や魔女が好きなんだね」
娘「そうそう。ディズニーはグリム童話や古典作品を全部、家族ロマンスに改変してしまうの。週刊少年ジャンプが全部、友情・努力・勝利になっちゃうくらいシンドイ」
父「なるほどね笑 で、ほかに印象に残ったことあった?」
娘「ミッキーのTシャツ着ていったから、ミッキーが喜んでたの。写真も撮ったの。でも、ミッキーお話ししなかったの」
父「あー、そうだね。ミッキーたち身振り激しいのに声出さないよね笑」
娘「どう考えても、それって『リトル・マーメイド』に掛けてる。ミッキーは二次元のアニメ世界から三次元のディズニーランドへ来るために、自らの声を引き換えにしたの」
父「なるほどね!それはきっとアリエ・・・」
娘「有り得ない!」
(おわり)
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