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【犬と猫】化け猫はいるが化け犬はいない

妖怪が好きで、よくそういった本を読んでいたのですが( 原点はやはり水木しげる大先生であります )、そういや化け犬って聞いたことないなあ、と。

いや、イヌが化けるという話はあるにはあるのですが、それはヤマイヌ( オオカミや野犬 )で、イエイヌが化ける話は聞いたことがない。
もちろん、私もそこまで詳しい訳ではないので、知らないだけかもしれませんが。
イヌに関する伝承だと、妖怪ではなく、妖怪を退治する側の話が多いですよね。いちばん有名なのは桃太郎でしょうか。あとはシッペイ太郎とか。どちらも化けませんね。

一方、ネコは…というと、鍋島の猫騒動はじめ、イエネコ( 飼われていたネコ )が化ける、という話がいくつもあります。

この違いは何だろうか、と考えるまでもなく、イヌとネコの人間との関わり方が関係しているんじゃないかと思います。

イヌは人間に使役された最古の動物である、と言われています。
言い方はよくないのですが、イヌは『家畜化』された動物なのですね。
頭が良く、社会性があって人間にもよく懐き、昔から様々な仕事を担う、人間にとって大切なパートナーです。

ネコの方は、と言うと、やはり昔から人間と共生してきた動物であり、ネズミ退治などに利用されてきた歴史はあるのですが、イヌと違って人間に従う訳ではありません。
古代エジプトでも神として崇められていたことを鑑みるに、むしろ人間が従えられているのかも…?

『飼い犬に手を噛まれる』という慣用句があるように、イヌが人間を裏切ることは滅多にない、と考えられてきたのでしょう。それくらい信頼されてきた、と言えます。
『飼い猫に手を引っ掻かれる』では、普通ですよね(笑)。ただのあるある話です。
人間にとってイヌは味方側の存在ですが、ネコはそうではなかった訳です。

ネコのそうした『相容れなさ』が畏れとして関係してきたのは要素としてありそうです。
また、ネコは油を舐めることがあり、その姿が妖怪じみて見えたから、という説もあります。魚油を使ってたからだろうと言われてますが( 当時、菜種油などはなかった or 高価だったので、安価な魚油が使われていた )。
あとは体のつくりが気味悪く見えたのでしょうね。くねくねと柔らかく、高い所から落ちても平気で着地するし、目の大きさが変わるし。現代でも「気味が悪い」と言う方はいます( うちの両親がそう )。
化け猫が踊る姿がよく描かれていますが、寝ている時でもまるで踊っているような姿勢だったり、じゃれついている姿が踊っているように見えたりしたのでしょう。

どちらも古くからの人間の友人ではあるのですが、その生態や関わり方の違いが、こんなところにも出ていると思うと、興味深いです。

そういえば、工芸品を見ても違いはあるなあ。

イヌの代表的な工芸品と言えば、犬張子。安産祈願や子宝、子供の成長を願う縁起物です。イヌは複数の子を産み、すくすくと育つことから作られたとする説があります。
また、魔除け、厄除けになる、とも言われています。

ネコと言えば招き猫。右手は金運、左手は福( 人=客 )を招く、と言われています。
由来とされる説は複数あり、浅草の今戸焼き、豊島の豪徳寺を発祥とする説が有力とされています。

犬張子はイヌの生態から、招き猫は伝承から、というのも、人間との関わり方の違いを示す証左と言えるかもしれませんね。

このように古くから深く関わってきたイヌとネコ。
現代では、更にアニマルセラピーに活用されるなど、形を変えながらも深く人間と結びついています。
ペット、つまり愛玩動物とする是非については思うところもありますが、せめて人間と関わる動物については、幸せな一生が送れるよう努めていただきたいもの。
私も我が家の猫様には猫又になるくらい長生きしていただきたいと思っております。

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