行き先違い

母が旅行に行くという。
「帰りが遅くなるんだけど、電車の乗り継ぎが合わないから迎えに来て」
というので快諾。
「どこに行くの?」
「青森の弘前城。桜が終わっちゃうわねえ」
「そうだねえ…今年は早いからねえ」
などと呑気な会話をしていたのが2週間ほど前だろうか。当然、私は何泊かするのだろうと思っていた。

ところが、である。
「帰りはいつ?」
「だから、土曜日」
えっ?土曜日に出かけるんじゃなかったの!?
「日帰り!?」
「そうだよ。お母さん、日帰りしかできないから」
祖母のことがあるからだろう、確かに何泊かしている時に何かあったら動けないかもしれない。
でも待って?青森って言ってなかった!?青森に日帰り!?えっ無理じゃね!?

茨城県から青森県に行こうとすると、まず東京に出なくてはならない。宮城県仙台市までなら、常磐線で行けるのだが、新幹線は通っていないからである。
軽く見積もっても片道7時間はかかるのではないだろうか。

しかも帰りは21時過ぎだという。トンボ帰りならできなくもないかもしれないが…しかし…
混乱する私であったが、母は照れ笑いをした。
「青森って思ってたけど、福島なんだって」

全然違うじゃねーーーーーか!!!

これが、旅行前日の話である。呑気にも程があるぞ母よ…。
私は何泊かすることを前提に話していたので、帰りの時間にも疑問を抱かなかったが、母よ、あなたは不思議に思わなかったのかい?
地理的な知識は私よりも母の方が強いはずなのだが。
母は何故か青森の弘前城だと思い込んでいたらしい。実際は会津若松の鶴ヶ城が目的地だった。なら、日帰りは可能だろう。

それにしても、とんでもない勘違いである。一瞬、認知症が始まったかと心配してしまったが、昔から母にはとんでもなく天然なところもあり、今回はどっちだ!?と頭を抱えている。どっちにろ心配だよ、母よ…。

こうして日帰り旅行を楽しんできた母。生憎の雨だったが、現地ではそれほど激しい降り方ではなかったらしく、
「楽しかったよ!」
と上機嫌で帰宅した。会津の山塩なるものをお土産に買ってきた。以前テレビで紹介されていたのを覚えていたらしい。
「すっごく高いんだよ!!」
と仰るので、それだけ美味しいのだろうと思う。温泉から作る塩らしい。何に使うつもりだろうか。まずは天ぷらとかでいただきたいが、昨日の献立だったなあ…。

改めて勘違いについて話していたところ、
「新幹線あるし、速いかなって」
とケロッとしている。

新幹線に対する信頼感、ハンパねえな!!

やはり天然だったようである。安心して良いのかは微妙だ。今回は高校時代からのお友達と出かけたらしいが、お友達には心の底からお疲れ様ですと言いたい。こんな天然を連れてってくださってありがとうございます…。

ともあれ、とても楽しんできたようで良かった。苦労ばかりかけている(経済的にも精神的にも)ので、良い気晴らしになっただろう。
いつか親孝行で旅行にでも連れて行きたいものだが、それまで長生きしてもらわねばならない。頑張って100まで生きてください←

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