部署名に注意!応募者へ連絡してくる部署の実態――原稿は読まない、講評も外注
「自費出版の営業です」と名乗ったら夢は売れません
文芸社のような自費出版が主たる事業の出版社にとって、大切なのは営業部門です。
この営業部門の営業対象は、書店(本屋さん)ではありません。著者です。
文芸社に限った話ではないと思いますが、自費出版が主たる事業の出版社にとって、営業部門がそのまま営業と名乗ると著者に夢を見させられません。自分の原稿を世に出したいと思っている方に「お金さえ払えば、あなたの原稿を(一般的な出版社ほどの校正をせず)本の形にして書店に並べますよ」と正直に伝えたら興ざめですよね。だから「出版」とか「企画」とか「編成」とか「文化」とか、まるで企画部門を装って著者に連絡します。実態は営業部門です。
一般的に出版社の営業は書店や取次(問屋さん)を相手に活動する部署です。自費出版が主たる事業だと、本の販売で利益を得ているわけではありません。自費出版社の利益は、著者が制作費などの名目で支払うお金です。
営業手法は、基本的に恥ずかしくなるくらい作品を褒めあげます。でも、原稿は読んでいないことがほとんどです。これにもカラクリがあります。
それが「コンテスト商法」あるいは「コンクール商法」です
文芸社の場合ですが、原稿を応募すると、「出版」とか「企画」とか「編成」とか「文化」とかの名称がついた部署から連絡が来ます。「○○大賞」といった賞に応募した場合は奨励賞などの実質参加賞でしかない賞を受賞した旨、大げさに連絡があるでしょう。あるいは選外でも「社内で評判です」「編集が推している」などの連絡があると思います。
さて、この連絡時、あるいは連絡が取れてから、応募した作品の感想が教えてもらえます。作品講評というやつです。
自費出版の営業が作品を読むのは非効率的で非生産的
営業担当者は、あなたの作品を読んでいないでしょう。読んで講評を書いているのは外注のはずです。
講評は2種類あります。
1つ目は著者向けにべた褒めした内容です。どんな原稿でも褒めてくれます。さすが講評のプロですね。
2つ目は社内向けです。たいていボロクソに書かれています。
原稿内容を「売れる・売れない」で評価するなら2つ目のほうが正しい気もしますが、文芸社や自費出版を主たる事業とする版元は、書店相手に商売をしているのではありません。著者相手に商売をしています。著者に見せるのは1つ目のべた褒め版です。
念のために書いておきますが、べた褒めの中にも「この部分がわかりにくい」といったことが書いてあると思います。それは「私の原稿は修正する必要はあるけれど、素晴らしい原稿だったんだ」と錯誤させるテクニックです。
営業はあなたの作品を読まずに講評を読んで、小説なのか詩集なのか自分史なのかくらいを把握して営業活動に入ります。そのほうが効率的だからです。「出版」とか「企画」とか「編成」とか「文化」とか企画部門のような名称で接するのは、著者が誤解してくれるからでしょう。
もし、あなたが文芸社や自費出版を主たる事業とする版元に応募して、まだ契約していないなら、自分の作品について営業担当者に細かく聞いてみるといいと思います。例えば原稿のどのあたりかは示さず、講評にも出てこない箇所ですね。「登場人物AとBの会話から物語をどう発展できるか」みたいな問いです。原稿を読んでいて、AとBの会話を把握していれば答えられますが、おそらくAもBも会話内容もわからないと思います。
どんな答えが返ってくるか、どうやってその問いから逃げるのか、それは営業担当者のとんち次第ですね。