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2024-25オフのエンゼルスの補強を考える


はじめに

本noteを開いて下さり、ありがとうございます。
870と申します。

まだ何の音沙汰もない球団もある中、エンゼルスはここまで非常にスピーディに補強を続けています。
日本時間11月26日には待望の先発補強である菊池雄星投手の獲得が報じられ、例年にも増してコンテンドの姿勢を強く示しています。

今回はタイトルの通り、これまでに決まった補強を振り返るとともに現在抱える問題点とそれを踏まえた今後のエンゼルスの補強方針を考えたいと思い、noteにまとめることにしました。

私自身の備忘および整理の目的もあり、読みにくい点など多々あるかと思います。
文字数も5000文字を超えそうですので、お時間のある際にでもお付き合いいただければ幸いです。


これまでの動向おさらい

【獲得】
・トレード
Jorge Soler(32) DH/OF
Scott Kingery(30) INF


・FA
Kyle Hendricks(34) SP
Travis d'Arnaud(35) C
Kevin Newman(31) INF
菊池 雄星(33) LHP


・ウェーバー
Ryan Noda(28) 1B

【放出】
・トレード
Griffin Canning(Soler対価/ATL→ノンテンダー)
金銭(Kingery対価/PHI)

・ノンテンダー
Jordyn Adams
Patrick Sandoval
Bryce Teodosio
Eric Wagaman

獲得した各選手についてはトナカイさんやTom@LAAさんがnoteで詳細に紹介してくださっております。
私も日頃から拝読し参考にさせていただいております。


ミナシアンGMはFA戦略でカリフォルニア出身のFA選手に対して積極的にアプローチを行ったことを明かしており、Hendricks/d'Arnaud/Newmanの獲得および比較的安価な契約金はその方針が実を結んでいると言えます。

当たり前ですが前年99敗、2016年以降一度も勝率5割を超えていないチームに積極的に来たがる選手はいないため、カリフォルニアという環境を有効活用し、また他球団の交渉が本格化する前にいち早く動いたミナシアンGMの手腕は素直に賞賛したいところ。
特に今オフFAの目玉投手(Corbin Burnes/Max Fried/Blake Snell)の去就が決まる前に非QOかつ前述の3投手に次ぐクラスで注目度の高かった菊池雄星を獲得できたことは、他球団ファンからも驚きをもって受け止められたように思います。


現時点での課題まとめ

上記を踏まえ、整理したい問題を以下に書いていこうと思います。

1.CFは誰が守るのか

エンゼルスの外野手事情については長年不動のセンターを務めてきたMike Troutが負担軽減のためコーナーへのコンバート(+DHでの出場)を受け入れる旨を表明したことは既に知られるところですが、一方でその後任については現時点では明確にされていません。

fangraphsより
現在在籍するのはTrout、Monak、Adellのみ

2024年のエンゼルスで最もCFを務めたMickey Moniakは101試合の出場でDRS1/UZR1.7と、肩の評価を除けば守備面の評価はプラスではあるものの、特段秀でているという訳でもありません(baseballsavantによるOAAは4)。
Jo Adellも4試合だけですが出場していますがサンプルが少なすぎて適正については未知数。
Adellの守備といえば一時は信じられない凡ミスや珍プレーの数々でお馴染みでしたが、2024年は持ち前の身体能力の高さを活かした好守も多く、ライトとしてゴールドグラブのファイナリストにノミネートされるほどの活躍でした。

打撃についてはHRだけ見ればMoniak14本、Adell20本とパワーはあるものの両者とも三振が多く四球が少ない点が共通しています。

現状だと相手の先発に合わせてプラトーン起用、もしくはシンプルに調子のよい方を下位打線で起用することになりそうですが、個人的には今シーズン119試合の出場機会を得て低打率ながら20本のHRを打ったAdellの出場機会を減らすことに多少のもどかしさを感じるのも事実。
両者とも守備走塁のスペシャリストという訳でもないため判断の難しいところですが、出場機会を分け合った結果両者とも成績が落ち込むという展開がチーム・選手双方にとって一番避けたいところ。
外野手の人数は揃っているため優先度は低いものの、可能性としては別のCFを獲得した上でどちらかがトレードされることもあるのではと思っています。
結局Troutがセンターを守っているなんてことだけは避けたい。


2.Taylor Wardをトレードすべきか

2024年 Taylor Ward 打撃指標

外野手事情ではもうひとつ、Wardの処遇についても関心が高まっています。
エンゼルス以外のチームにとってもこちらの方がよりインパクトのある事柄であると思います。

上述したTroutのコンバート先は肩の強さおよび守備負担を考慮するとLFが有力で、2024年にDHでの出場を除く全141試合をLFで過ごしたTaylor Wardとの競合が懸念されています。
Wardについてはここ数年単位で安定した打撃指標とマイナスでない守備力、なにより年俸と複数年保有できる点から昨年のトレードデッドラインの時点でPITが興味を示すなど既にトレードの噂が取り沙汰されていましたが、今オフに入りTroutコンバートの話が出てからはそれがさらに過熱し、直近ではKCが打線の先頭を担える打者のトレードを模索している対象にWardが取り上げられていました。
(結果的には同じくトレードを模索していたCINのJonathan India+Joey WiemerとKCのBrady Singerとでトレードが成立。)

では、Wardは「今」トレードすべきか。
私個人としては基本的にはトレードすべきではないが、複数年保有できる先発投手とトレードできる場合のみ話し合う価値があるという考えです。
確かにWardは若手コアが台頭しつつあるエンゼルスにおいて本来目指したい勝負期(Rendonの契約が終わった2027年以降)にはマッチしない年齢(来シーズン31歳)であり、また比較的戦力が余剰気味の外野手というポジションではあります。
しかしながら現時点でのトレードに反対の理由としては

  1. Wardは過去2022年にRFでも125試合に出場しており、ここ最近挙げられているようなTroutとの競合は回避できる範囲の問題であると考えること

  2. 他球団の打線と比較した際、エンゼルスはTrout/Ward/Solerの3人を揃えて初めてメジャーレベルの中軸たり得ると考えること

  3. 2025年のコンテンドに失敗した場合は25-26オフに本格的にトレードを模索しても遅くないと考えること

の3点が主な理由になります。
今オフここまで戦力を整えながら打線の中核を手放してしまうのは惜しいという気持ちの方が個人的に大きく、またMonak、AdellにはWardの抜けた穴を埋められるほどの打力が無い点もトレードに踏み切るには不安材料となります。
しかしながら近年の先発投手の市場価値高騰は著しく、エンゼルスは育成がお世辞にも上手いとは言えない環境であるため、先発投手とのトレードには耳を傾けるべきだとも思っています。
(そういった意味では上記のKCとの噂話は非常に興味をそそられました。)

また、Wardは短期間で圧倒的な成績を期待するタイプではなく、バランスのよい打撃指標でシーズン通して活躍するタイプであるため、仮にトレードする場合はトレードデッドラインではなくシーズンオフにした方が価値を高められるのではないかなと思っています。
当然保有年数が減った分バリューは落ちますが、コンテンドを目指す代償としてはかなり低リスクな方だとも思います。


3.2Bと3Bは誰が守るのか

内野に目を向けると2Bと3Bが薄く、特に3BはAAV$35Mも払っているくせに稼働率が極端に悪い選手がいるせいで正直見通しもなにも無いのが痛いところ。

これまでの経緯を踏まえ、基本的に彼はいないものとして考えます。

NewmanとKingeryのポジション適正についてまだそこまで理解していませんが、恐らく現状はNeto復帰までは2B-SSをNewmanとKingery、3BをRengifoが務め、Neto復帰後は2Bと3BをNewmanとRengifoで対応すると思われます。
(守備力次第では3BにNewman/Kingery)
同地区のライバルに目を向けるとTEXにはSeager/Semien、HOUにはPeña/Altuveと攻守に質の高い選手が揃っており、Neto復帰までは正直見劣りする感は否めません。
元々今オフの市場で有力な2Bが薄いこともあり、基本的にはUT性の高いNewmanとKingeryに頑張ってもらうことになると思いますが、手を加えられるのであれば更なる補強が欲しい箇所ではあります。

なお、内野手事情ではエンゼルス傘下No.2プロスペクトのChristian Mooreの昇格が取り沙汰されることも多いですが、個人的にはまだマイナーで磨きをかけて欲しいという気持ちがあり、今回課題を考える上での考慮からは除外しています。
しかしながらエンゼルスフロントにはNeto、Schanuelらの成功体験がありますので、2025年シーズンに開幕メジャー入りしている可能性も十分ありえるかなと思います。
(NewmanとKingeryを獲得したからこそ、メジャー昇格を急ぐこともないと個人的には思うのですが。)


4.右打者偏重の打線

ここまで野手の陣容を考えてきましたが、実際にラインナップを組むとその多くが右打者で構成されることになります。

C:O'Hoppe/d'Arnaud
1B:Schanuel/Noda
2B:Rengifo/Newman/Kingery
SS:Neto/Newman/Kingery
3B:Rengifo/Newman/Kingery
OF:Trout/Ward/Adell/Moniak
DH:Soler/Trout
※太字は左打者もしくはスイッチヒッター

上記の通り純粋な左打者はSchanuelMoniakのみ、スイッチヒッターのRengifoを加えても打線に3人だけという偏重っぷり。
本拠地であるエンゼルスタジアムは比較的打者有利の球場で特に左右どちらに不利という訳でもないのですが、相手投手とのマッチアップを考えた際に流石にバランスが悪いと言わざるを得ません。


5.いまだ足りない先発投手

FAトップ層ではないとはいえ、有力な左の先発投手として注目されていた菊池を獲得したエンゼルスですが、それでも同地区のライバルたちとはローテーションの質ではまだまだ劣ると言ってよいでしょう。

fangraphsではエンゼルスの2025年のペイロールをAAV$190Mと予想しており、現在40人ロースターで保証されているAAVは$142。
菊池投手が1年21Mであることを考えると、仮にFAで同格の選手を加える場合もう一人が限度といったところでしょうか。
先発ローテーションのアップグレードはやりすぎるということは無いので、お金をつぎ込めるならとにかく投手、なるべく先発であって欲しいところです。
ただし、ドラフト権を失うQO提示されている投手に関しては絶対に獲得しないで欲しいところ。
(この点についてはこの時期に菊池を獲得したことでエンゼルスフロント内でもクリアになっていると思いますが。)

もちろんリリーバー(セットアッパー)も獲得したいところですが、どうしても他の補強が優先になりそうです。

また今オフノンテンダーとなったPatrick Sandovalとの再契約(2年)も可能であればしておくに越したことは無いかなと思います。
2025年終了後エンゼルスはAndersonとHendricksというローテ候補2人を失うため今年の調停予定額以下で安く再契約できれば助かりますし、Sandovalにとっても2026年終了後にFAとなるため、慣れ親しんだ球団で就活イヤーを過ごせるメリットは少なからずありそうです。


今後の展望

トレード

上記の通りこれまでの補強はFAが主であり、現時点でのトレードは対価が金銭だったKingeryを除くとSoler⇔Canningのみです。

2025年のスタンスとして明確にコンテンドする姿勢を見せてはいますが、一方で一時期に比べるとマシになったとはいえ大物をトレードで獲得するにはマイナーのプロスペクトはまだまだ手薄であり、また現時点でなけなしのプロスペクトを削ってまでトレードを模索する意味も薄いように思います。
マイナーに余裕のないチームなので当然ではありますが、トレードはプロスペクト中心のパッケージではなく比較的余裕のあるポジションの選手+αで応じてくれる相手がいる場合に進めるのがよいと思っています。

懸念材料として、2024年のトレードデッドラインでCarlos EstévezとLuis Garcíaを放出した際、ミナシアンGMはかなり強気の交渉をしたのではと噂されました。
結果としてGeorge KlassenSamuel Aldegheriなどの当時オーバーペイとも言われた対価を得るに至った訳ですが、今後もその姿勢が吉と出るか凶と出るか、注目したいところです。

トレードの可能性のある選手

メインとなるのは比較的ダブついている外野手からWard/Adell/Moniak、投手では2024年トレードデッドラインでもほんの少しだけ噂のあったDetmers、同じくトレードデッドラインで放出せず(できず)2025年が契約最終年となるAndersonなどでしょうか。
その他1B/DHのKavadas、マイナーの一部プロスペクトといった選手となりますが、これに関しては需要と供給の問題になるので様々な選手に可能性はあると思います。
上述したようにエンゼルス側が積極的に売る必用はないと思いますので、いずれにしても出し過ぎない範囲でまとめて欲しいところです。

現地の報道

つらつらと書いているうちに、菊池獲得以降の動きが少しずつ現地で報道されているようです。

  • FA/トレード両方で引き続きの補強を検討している

  • 更なる先発投手の補強に前向きだが、まずは打者が優先される見込み

  • その中で「左の強打者」の獲得を模索している

のような情報が記者などから複数上がっているようです。

「左の強打者」、そしてCHCがCody Bellingerを積極的にトレードしたがっているという先日の報道も相まってBellinger獲得に動いているのでは?との見方もあります。
右打者偏重打線の改善、CFのアップグレード兼1Bのバックアップと痒いところに手の届く案ではあるものの、CHC側の年俸負担は前提とはいえ年俸と対価が気になるところ。

少し遡りますが日本から海外FAでメジャー挑戦を表明している菅野智之投手に興味とも報じられていました。
これらはまだまだ憶測の域を出ませんので、今後の展開を見守りたいと思います。
いずれにしても菊池の獲得で打ち止めでなく、更なる補強に動く(少なくとも動こうとしている)姿勢を示してくれていることはシンプルに喜びたいですね。

これからの補強ポイントまとめ

長くなりましたが、優先度が高い順に以下と考えます。

  • 菊池と1・2番手を形成する先発投手(非QO)

  • CF(できれば左)

  • 2B/3B(できれば左)

  • セットアッパー1人を含むリリーフ

  • Sandoval再契約

終わりに

MLB全体で今オフ最大の関心はやはりJuan Sotoの去就であり、その決着を以て市場も大きく動くことになると予想されます。
プレーそのものも当然見応えのあるメジャーリーグですが、日本とは比べものにならない規模感での移籍や各チームの獲得戦略が見所でもあると改めて感じます。
各チーム、そしてエンゼルスのオフがより良いものになることを願って、本noteの結びとしたいと思います。

最後まで稚拙な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
また自分なりのペースでNoteを投稿したいと考えていますので、読んでいただける機会がありましたら何卒よろしくお願いいたします。

870


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