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今年は『A』時代終焉の物語(WM41~1・4に繋がる大河)
今年もこの季節が来た。ABEMA ともしばらくは休戦である(苦笑)。
にも拘わらず『ロイヤルランブル』を視聴せず週末にPLE明けのRAWとスマックダウンを一気見した。負け惜しみ半分で今回は観なくて良かった事にした。今年は『イリネーションチェンバー』の方が重要だからである。
そうなのだ。今年の主役はジョン・シーナなのである。そしてそれは昨年散々語ってきた『X』の物語翌年に迎える『A(エース)』の物語であり、ヴィンス無き今は『A』時代終焉の物語でもあるのだ。
今年のレッスルマニアは40年に渡るヴィンスサーガが終わり、名前がまだ定まらない新サーガの実質初回である事を象徴するかのように4月の後半(4/20,21)に行われる。なので伏兵ジェイ・ウーソのランブル勝利は壮大なる予告編の前座にすぎない。あくまでここではシーナが1回目のチャンスを逃し3月頭のチェンバー戦を背水の陣で臨む緊張感が大事なのである。皮肉なもので年内引退を宣言した事でシーナはようやく愛されキャラになった。
私はこれまでレッスルマニアとは20年周期を2回繰り返した40年だったと論じてきた。更に20年周期は少年ファン開拓期の前10年と成長した彼らへの姿勢期後10年で構成される。まさに最初の『A』がハルク・ホーガンでありそれを正調に引き継いだのがジョン・シーナであったが、ほぼ完成品だったホーガンと成長過程のシーナでは時代背景も含め随分な差があったと思う。主に少年ファン達の『レッツゴー・シーナ』とマニア層からの『シーナ・サックス(くたばれ)』が同時進行する中でリングに上がり続けたメンタルは 2010年代のグループアイドルシーンにも重なる。
そして日本でも同じような境遇を走り抜けた『A』が来年早々に引退を迎える。棚橋弘至である。奇しくも2025年は彼らのラストイヤーにあたるのだ。
私は年末年始久々に新日本プロレスワールドに加入し大雑把ながら50年以上の歴史を効率よく遡った。新日本プロレスにおいては創始者アントニオ猪木さんが株を大量保有していた時代が『猪木サーガ』であり、株式売却以降オーナー企業体制のレッスルキングダム開催以降は結果『棚橋サーガ』と割り切った方が幸せなのだと今は思う。結局猪木的支配下に無い棚橋だけが『A』を受け止める事ができた。そして今後は棚橋的支配下が続くだろう。
シーナ、棚橋世代とホーガン、猪木との最も大きな違いは前者が『A』を裏切らなかった事に尽きる。これは否定的な意味では無くホーガンは『A』の座から降りてから nWo でのヒールターンでもう一時代を築いた。キラー猪木や否むしろ格闘技よりになった猪木さんも然りである。シーナも棚橋もヒールになってもう一山的な欲もあった筈であるがやらなかった。彼らの時代ではそれが正解だったと終焉が近い今だから理解できる。彼らのメンタルと責任感はもっと評価されて良いのかもしれない。
コロナ禍前辺りまで私は90年代に行われた『日米レスリングサミット』のⅡに期待していた。メインはケニー・オメガvsAJスタイルズを期待していたが、シーナと棚橋のタッグにも期待していた。対戦相手はもちろん中邑真輔&ランディ・オートン組である。奇しくもこの二人も両団体の史上最年少王者記録保持者という共通点を持つ。団体に尽くした2名である。2025年2名に免じてWWEのリングで一度きりのシーナvs棚橋もしくはタッグ結成実現を条件に来年の棚橋引退試合にWWEが中邑真輔を派遣してくれたらそれは『A』時代の彼らへの一つの勲章にもなるのだが現実では如何に。
さて『A』の物語について簡潔にまとめておきたい。WM40年の歴史で『n1』の回はその後10年を支える『A』お披露目の物語である。
WM1でのホーガンは言うまでも無く、WM31ではメインこそバティースタに譲ったもののシーナはJBLを破り始めてWWE王者となった。WM41ではレスナーvsローマンのメインで史上初WMでのMITBキャッシュ化を果たしたセスがWWE王座を初獲得した。もちろんこの事もWM41が『A』時代終焉を意味している。セスvsローマンとはそういう事である。
ではWM11はどうだったのだろうか?デビュー相手専門バンバン・ビガロvsNFLスターのローレンス・テイラーのメインはホーガン色が強すぎて『A』を決めきれなかった時代とも思える。しかし『A』とはヴィンスが10年を託す者への称号と考えるとHBKと対戦したディーゼル(ケビン・ナッシュ)が『A』候補だったのだと理解すべきである。そしてこの20年周期は『nWo』というヴィンスへの反抗として最大の脅威となった。米ドラマ『LOST』ファイナルシーズン第1話『LAX』では815便が墜落しないパラレルワールドが描かれる。ヴィンスにとって2回目の20年周期とはまさに墜落せず到着したLAXであったと思う。安全運転で空港が見えた矢先に一人だけ強制送還で機内に残されたヴィンスの無念や如何にである。
『A』時代終焉の物語はWM41~来年の1・4へと繋がる長編大河である。猪木さんが旅立ち、ヴィンスが去った事でWWEと新日本プロレスの時空は再び絡み合ってゆく不思議な予感がある。昨年WMXLでの『X』の物語のゴールが今年の1・4でのザック・セイバーJr無双だったと思えば猶更である。ヴィンス無きWWEの『A』は時代に縛られる存在ではない。Netfrix初回配信でホーガンにブーイングが浴びせられた事、コーディvsロックが実現せずコーディvs引退イヤーのシーナが対戦する事、セスvsローマンのシールド精算マッチは新しいサーガ故の必然なのかもしれない。今年は一年通してプロレスをまったり楽しめそうである。