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アイドルグループ「RAY」のライブ映像を編集した(3) Blue Monday

この記事は、ライブ映像の動画編集に初めて挑戦した個人的な記録パート3です。
(記事中にgifアニメーションの埋め込みやYouTubeのリンクがあるので、スマホ等でご覧の場合はwifi接続をおすすめします)
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2つ目の動画編集に選んだRAYの楽曲は、「Blue Monday」です。今回の編集では、「動画編集ソフトのエフェクトを学びつつ、音楽+歌詞と映像がシンクロしたミュージックビデオっぽい動画を作る」という目標を立てました。「Blue Monday」の激しい曲の展開に合わせてエフェクトをかけたりカメラを切り替えることで、面白い動画になるのではないか、と考えました。

「Blue Monday」について

「Blue Monday」は2019年5月1日のRAYの初ライブでも披露された、RAY最初期のオリジナル曲のひとつです。「Blue Monday」というとNew Orderの同名の曲がつい頭に浮かんでしまいますが、楽曲自体にはNew Orderを連想させる要素はほとんど無いように思います(追記1)。元のアイデアは「エイフェックス・ツインをアイドル曲でやったら?」とのことで(補足1)、攻撃的でノイジーなサウンドに美しいメロディが映える楽曲となっています。

一聴すると曲のめまぐるしい変化に圧倒されてしまいます。しかし、よく聴き込んでみると、歌詞と曲の展開がみごとにリンクしていて、短編小説のような疾走感が胸を熱くさせ、最後の「僕の気持ちはBlue Monday」というフレーズが切なく心に残ります。

RAY 1stワンマンライブ「birth」で実際に配信された時の映像は、こちらのダイジェスト版アーカイブで見ることができます。

このワンマンライブは、演出コンセプトの異なる4つのパートで構成されており、「Blue Monday」はそのうちの「映像エフェクトパート」で披露されました。このパートでは、ライブ映像にリアルタイムで様々なエフェクトが加えられるという演出が行われました。

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内山結愛さんがパフォーマンス後のMCで「人間の形をとっていなかった」と語っていたように、「Blue Monday」のパフォーマンスには激しい歪みや視覚効果が加えられ、ライブ配信とは思えない前衛的な映像となりました。身体の輪郭がデジタルな光を放ち、メンバーがデータ化されてしまったかのような映像は、映画「トロン」を彷彿とさせます(2)。また、事前に行われたメンバーによるワンマンライブ演出会議でも、演出のキーワードとして「バグ感」「サイバー感」などが挙げられていました(3)。今回の動画編集でもこの演出意図を反映して、サイバーな雰囲気を目指しました。

完成した動画はこちらです。

使用した動画編集ソフト

前回(アイドルグループ「RAY」のライブ映像を編集した(2) 愛はどこいったの?)と同様に、Apple社の動画編集ソフトFinal Cut Pro X (以下FCPX)を使用しました。今回は新たに、映像効果の無料プラグインをいくつか導入しました。使用したプラグインの詳細は、記事末尾の補足(4)に記述してあります。

特に頻繁に利用したエフェクトは、グリッチ・エフェクト(Glitch effect)と呼ばれるものです。これは、データの破損やノイズなどにより生じる映像の乱れを演出する効果で、サイバーな世界観を表現するのにうってつけです。今回編集した映像の素材は、照明の点滅が非常に激しいのですが、この点もグリッチ・エフェクトと相性が良かったと感じました。

映像と音楽をリンクさせるには

記事の冒頭で書いた通り、今回の編集では「音楽と映像がシンクロした動画」を作ることが目標です。これを実現するために、カメラ切り替えとエフェクトをかけるタイミングは、拍子の頭や(5)、ドラムやギターの目立つ音が発せられる瞬間(6)に合わせました。

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映像と音をリンクさせる一例を示します。上の画像は実際の編集時の、FCPXの画面の一部です。横軸が時間軸となっており、左から右へと動画が進行します。下側に楽曲の音の強弱を示す波形があります。この波形の山や谷の部分を、エフェクト(灰色の部分、ここではトランジション)をかけるおおよその目安にします。さらに、実際の音を聞きながら、タイミングとエフェクトの継続時間を微調整していきました。

編集動画の紹介

ここからは楽曲の進行に沿って、使用した映像効果について記述します。

- イントロ
メンバーが眠りについているようなシーン(「17」のイントロより)から画面が乱れ、「Blue Monday」本編に移行します。映画「トロン」のように、メンバーが仮想世界に転送されるイメージです。

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ギターノイズのタイミングに合わせてグリッチ・エフェクトをかけています。
(こちらのgifアニメーションだとフレーム数が動画よりかなり少ないですが、雰囲気だけでも見ていただけたらと思います)

- 「モノクロだった 幼い日は」
歌い出しの歌詞は、曲のタイトルや曲の最後に登場するワードである「Blue Monday」と対になる大事なフレーズです。そこで、歌い出し直前の映像がモノクロになるよう、FCPXに標準で付いているエフェクト「コミック(インク)」を使用しました。

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- 「点をつなぎ 国境線を目指す」
甲斐莉乃さんの凛々しくも可愛い表情が素敵です。ぜひ国境線までお供したいです。

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先述のとおり、カメラ切り替えは、基本的には拍子やドラム・ギター音のタイミングに合わせて行なっています。唯一、このパートは例外で、甲斐莉乃さんの正面からの表情ができる限り長く映るよう、調整しました。

- 「ねぇ... よわく鼓動を刻む...夜に溶けていく」
徐々に高まる心拍数のようなビートに合わせて、グリッチ・エフェクトを入れました。カメラを切り替えなくても、グリッチ・エフェクトでタイミングよく画面を揺らすことで、音楽と映像のシンクロが生まれるように思います。

- 「時を重ね」〜間奏
ここには、ライブのハイライト場面がフラッシュするように挿入しました。通常のマルチカム編集した「Blue Monday」の映像の上に、別の曲の各シーンを細切れに上書きしています。メンバーのダンスパートに合わせ、4人>白川さん>甲斐さん>月日さん>内山さんの順に登場します。


ここで挿入する映像をライブ全体の中から選ぶのが、一番時間がかかり、そして一番楽しい作業でした。いろいろ試した末、「サテライト」「スライド」「ネモフィラ」「バタフライエフェクト」の映像を挿入しました。本編の「Blue Monday」と合わせた5曲は、RAY結成最初期からのレパートリーです。「時を重ね」という歌詞から連想しました。

- 「不器用だって...愛を描け」
暴力的なビートに抗うかのように、内山結愛さんと月日さんの芯のある歌声が響きます。カメラの切り替えやエフェクトは控え、二人の姿をそのまま追います。

- 「ほんとはね 夢見てた... 君の音楽があふれ出す」
一瞬の静寂から、徐々に鼓動が高まるようにビートが刻まれていきます。バスドラムの音に合わせてグリッチ・エフェクトを挿入することで、画面を振動させています。メンバーのダンスともシンクロしています。

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- 「ねぇ...鼓動きざむ」
曲のクライマックスに向けて先陣を切るように、白川さやかさんの力強い歌声が放たれます。この歌声がしっかり届くよう、白川さんを中心にとらえたままのカメラ割りです。

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- 「感傷も たまには必要でしょ? 」
月日さんの高音ファルセットが切なくも美しく響くこのパートには、ワンマンライブの最も印象的なシーンのひとつである、最後のMCの場面を挿入しました。MCでは、メンバーがひとりづつ、RAY結成1周年という節目であるワンマンライブを終えた感想と、RAYとしての未来への抱負を語っています。心をゆさぶる4人のMCは、ファンの方々が編集されたワンマンライブの全編動画にも収められていますので、どうかぜひご覧になってください(7)。

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- 「冬の日には ふと思い出すのさ...青い僕の気持ちは Blue Monday」
最後の歌唱パートは、メンバーの激しいパフォーマンスをそのまま映像として残したかったので、エフェクトは使いませんでした。クライマックスに向けてテンションが一気に高まっていくことを意識して、「あの時見た横顔」あたりからカメラ切り替えの数を増やしています。

前パートの「感傷も〜」とアウトロに4人の表情を挿入した演出は、「ふと思い出すのさ あの時見た横顔 あの時聞いた歌声」という歌詞から連想しました。

- アウトロ
曲の最後に、メンバーがカメラ越しにこちらに向かって歌っているシーンを挿入しました(8)。4人の優しい笑顔に吸い込まれそうになります。


激しい音の渦に飲み込まれていく刹那、唐突な静寂によって「Blue Monday」は幕を閉じます。「Blue Monday」を聴き終わると、強烈な夢を見ている最中に突然目を覚ましてしまった時のような、茫然とした感覚に襲われます。

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編集動画では本編が終わり、4人が目を覚ますシーン(再び「17」のイントロ)で終了します(4人が転送された仮想世界で歌っている、という編集上の設定なので)。

ライブ映像の編集はやはり楽しい

RAYのパフォーマンスの大きな魅力の一つに、「ダンスにも歌唱にも妥協しない」という点があります。「Blue Monday」では「どうしてそんな動きをしながら歌えるの?」と思うようなパートが随所にあり、ダンスと歌唱の情報量の多さに驚かされます。今回の動画編集では、そんなRAYのパフォーマンスの圧倒的情報量に負けじと、色々と詰め込んでみました。

前回の記事(アイドルグループ「RAY」のライブ映像を編集した(2) 愛はどこいったの?)でも書きましたが、動画編集では映像をコマ送りにしながら繰り返し見るので、ライブ配信を観ていた時には見落としていた、メンバーの表情やダンスの細部にも気付きます。素材の映像には、「映像エフェクトパート」だからといって隙を見せるような様子は一切なく、全力のパフォーマンスを魅せる4人の姿がありました。

今回の編集では、カメラ切り替えのタイミングを音楽(拍、拍子、目立つ音など)に合わせることで、映像にもリズム感が生まれ、気持ちの良い動画になることが実感できました。そこで次に思いついたのが、「では逆に、音楽のタイミングからずらすことで生まれる違和感を演出に使えないか」というアイデアです。このアイデアを実験するのに、曲の雰囲気もRAYのパフォーマンスも、とても合いそうな楽曲がありました。「彼女が冷たく笑ったら」です。

次の記事(アイドルグループ「RAY」のライブ映像を編集した(4) 彼女が冷たく笑ったら)に続きます。

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補足

(1) RAY公式Twitterより。

「Blue Monday」の公式ライブ映像も公開されています。

(2) 映画「トロン(Tron)」は1982年にアメリカで制作されたSF映画です。仮想世界で人物が身にまとう光る電子回路スーツ、サイバーです。

(3) メンバーによる演出会議の様子はこちらの動画からご覧になれます(下記リンクは「Blue Monday」の話し合いの部分から始まります)。また、「映像エフェクトパート」の演出は、数多くのライブ演出を手がけるhuezさんによるものであることも語られています。

(4) グリッチ・エフェクトの導入方法や使い方については、Takuto Kondoさんの紹介動画を参考にさせていただきました。

こちらの動画でも紹介されているように、いろいろなグリッチ・エフェクトが公開されています。私が今回の動画で使用したのは以下の4つです。いずれも無料で利用できます。

- Glitch transition
(https://deathbyvlog.com/download/final-cut-pro-glitch-transition/)
カメラ切り替えのタイミングで主に使用。画面にライトが映り込んでいるタイミングで使うと、映像が一瞬キラリと光ってカッコ良い(3:19~3:21など)。
- Free Twitch Transitions
(https://sellfy.com/10154417130356796/p/7qnK/)
上記の「Glitch transition」に次いで多用。4つのプリセット(「02」「06」「17」「24」)が入っている。音楽に合わせて映像を揺らしたいところで使用(1:54~と3:40~のシーン)。
- GLITCH EFFECT TRANSITION
(https://www.christopheroxley.com/products/glitch-transition-fcpx)
画面が上下に激しくブレる。本編から別のシーンに切り替わるところで使用(0:05, 2:27, 3:59, 4:23~, 5:13~)
- Seed Glitch Transition
(https://www.yourseedmedia.com/free-glitch-transition/)
上記の「GLITCH EFFECT TRANSITION」と似た効果だが、映像に黒い横線が入り、ノイジーな効果。(2:31~)

それぞれ、設定を細かくカスタマイズすることも可能なようです。私はエフェクトの継続時間以外は変更せず、そのまま使用しました。

(5) 音楽の拍子や拍を意識したカメラ切り替えの重要性については、note記事「音楽モノのライブ配信でのスイッチングの“正解”ってなんだろうか?」が大変参考になりました。この記事の筆者であるKaga Makotoさんは、実際にRAYのワンマンライブ配信でカメラスイッチングを担当された方です。ライブ配信でのカメラスイッチングは、リアルタイムで行う・やり直しが利かないなど、動画編集よりもはるかに高度な技術が必要とされるのではないかと想像します。そのような経験や多くの実例に基づいた解説には大変説得力があり、勉強になります。

(6) 映像と音楽がシンクロしたミュージック・ビデオ(MV)は、脳が視覚と聴覚の別方向から刺激されるようで気持ちがいいです。私が大好きなColdcutの「more beats and pieces」や「Timber」などのMVは、その究極形だと思います。どちらも1997年のMVですが、カッコ良さは色あせないですね。

(7) 配信ライブ全編の編集動画は、27さんやハローサボテンダーさんが編集された動画などがあります。MCパートも含め、1時間半強の映像データを編集された大作です!

(8) このシーンは「no title」のパフォーマンスのとき、メンバーの月日さん自らがステージ上で撮影した映像を使用しています。「no title」の編集動画もYouTubeに複数投稿されていますので、ぜひチェックしてみてください。

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追記

- 追記1 (201127)
「Blue Monday」の作詩者であるみきれちゃんさんが以下のようなツイートをされていました。「亡きロックスター」が曲のタイトルとの関連を想像させます。