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【展覧会感想】小樽市総合博物館・本館&運河館「幽鬼の街」展行ってきた


はじめに

8月10日からはじまった〈ストーリーマップでめぐる「幽鬼の街」展〉の感想文です。なんと明日が最終日!
企画展詳細&文学館の感想文は以下の記事をご確認いただけますと幸いです。なお、こちらは市立小樽文学館・小樽市立総合博物館本館・運河館3館で行われる初めての合同企画展です。

共通タイトルは〈ストーリーマップでめぐる伊藤整の「幽鬼の街」展〉ですが、3館それぞれに個別の展示タイトルがあります。

  • 文学館〈原作と地図で探索する時空の迷宮・小樽〉

  • 博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉

  • 運河館〈小樽の今昔風景〉

そして、今回は博物館本館の〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉運河館の〈小樽の今昔風景〉についてご紹介したいと思います。

【本館】幽鬼の街・小樽とその時代を歩く

『幽鬼の街』(昭和12年)に掲載された伊藤整による手書きの地図「小樽市街中央部図」と2023年発表の幽鬼の街に関するストーリーマップをもとに、小説で描かれた場所を当時の写真や関連する資料とあわせて紹介します。文学作品を理解するツールとして、近年重要な役割を持ち始めている地理情報システム(GIS)を通して、文学と地図を組み合わせることの面白さをぜひ体感してください。新たな博物館展示の在り方に触れつつ、小説の世界をお楽しみいただければ幸いです。

「幽鬼の街」展チラシより(一部改変:ストーリーマップ作者氏名省略)

「小樽市街中央部図」を通じた作品理解

博物館は、展示室中央の床に伊藤整手書きの「小樽市街中央部図」の拡大版レプリカが貼ってあり、地図をじっくりと眺めることができます。
物語の進行に合わせた展示は、床の「小樽市街中央部図」をぐるっと囲むように展示台が並んでいて、本文に描かれているものや物語のキーとなる場所に関連する貴重な資料が集められています。特に、わたしがストーリーマップ内で調査しきれなかった「色内停車場下の共同便所」なども、古写真と共に確認することができます。(図1)

小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室入口の写真。アットゥシや古写真、展覧会のポスターがうつっている。
小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室入口(図1)

タッチ式モニターによるストーリーマップ紹介

博物館では、タッチ式モニターにて拙作のストーリーマップを展示していただいています。お手持ちのスマートフォンでも見られるようにQRコードも掲示してありますが、ぜひ大きな画面で「ストーリーマップ」を体験していただけたらと思います。(図2)

小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室の写真。タッチ式モニターがうつっている。
小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室
タッチ式モニター(図2)

GISについての展示とレイヤー構造体験

また、博物館独自の展示として大注目なのが、地理情報システム(GIS)についての説明やGISを使用した研究紹介です。
デジタル地図におけるレイヤーの重ね合わせ作業について、「実際にフィルムみたいなものを重ね合わせたり、スライドさせたりして、その構造を可視化できたら“GISで何してるの?”がわかりやすくならないでしょうか」という打合せ時のわたしのぼやきに、学芸員さんが200%応えてくださいました。
もととなる地形図に①「小樽市街中央部図」、②土地の起伏がわかる地図、③境界データ、④「幽鬼の街」の主人公彷徨ルートの4つのレイヤーを1枚ずつ重ね合わせて見てみることができます。すごい!(図3)

小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室の写真。地図が印刷されたフィルムをめくって、GISのレイヤー構造を体験している。
小樽市立博物館本館〈幽鬼の街・小樽とその時代を歩く〉の展示室
GISのレイヤー構造体験(図3)
※撮影のため特別に場所を移動しています

そのほか、「幽鬼の街」の坂体験や、山田町の古着の幽鬼たちを彷彿とさせる着物など、見て・触って・体感できる博物館ならではの展示で、「幽鬼の街」の世界観を身近に感じることができる内容になっていると感じました。
展示を見たら、きっと「幽鬼の街」を読んでみたくなるはず!

【運河館】小樽の今昔風景

明治期に造られた街並みが残る小樽。街を散策すると、小説の舞台となった大正から昭和初期にかけての面影もみつけることができます。
本展では、各時代の写真を見比べながら小樽の街並みの変遷を紹介します。写真と地図を手掛かりに、幽鬼の街を歩いてみてはいかがでしょうか。

「幽鬼の街」展チラシより
小樽市立総合博物館・運河館の入口の写真
小樽市立総合博物館・運河館の入口(図4)

「幽鬼の街」と「いま」をつなぐ、小樽のこと

「幽鬼の街」を読むと、大正末期から昭和初期の小樽を知ることができます。そして、小樽の街を歩いてみると、小樽の「いま」を体感することができます。
しかし、昭和初期と現在のあいだには約90年の時があり、その間の小樽の姿を知ることができるのが、運河館の展示です(図5)。
写真をじっくり眺めながら、伊藤整や主人公が見た景色から変わったもの、変わらないものについて思いをはせるひとときになりました。
(そして、この展示コーナーの向かいにある中庭がとても気持ちよかったです!)

小谷市総合博物館・運河館〈小樽の今昔風景〉の展示コーナーの写真。明治大正から昭和中期、令和に至るまでの小樽駅などの写真が並んでいる。
小樽市総合博物館・運河館〈小樽の今昔風景〉の展示コーナー
明治大正から昭和中期、そして令和に至るまでの小樽駅などの写真(図5)
小樽市総合博物館・運河館〈小樽の今昔風景〉の展示コーナー前で、スタンプラリーのハンコを押してもらったチラシの記念撮影をした写真
小樽市総合博物館・運河館〈小樽の今昔風景〉の展示コーナー
スタンプラリーもしっかり楽しみました(図6)

おわりに(おまけの話)

前回、展覧会初日にすごいタイミングで文学館で取材していただいたお話をしましたが、博物館でもすごいタイミングで小樽ジャーナルさんに取材していただきました!
この「タイミングがすごい」の話、なにがどうすごいのかというと、展覧会初日は、文学館→運河館→博物館本館→文学館の順でスタンプラリーをしました。運河館にちょうど博物館の館長さんがいらっしゃって、なんと本館まで車で送ってくださったのです。
本館に着いてみると、「あ!今ちょうど取材が来てて」と私の顔を見るやいなや展示室まで連れて行ってくださる学芸員さん。
「ご本人です!!」と記者の方にご紹介いただき、そのまま取材していただきました。

個人的には、学芸員(そして大学の先輩である)のお二人と一緒に写真を撮っていただけたのがうれしかったです。

各館の学芸員の皆さまをはじめ、多くの方のご協力のもと企画された展覧会です。
明日(2024年10月20日)で展示終了となりますので、ぜひ最後までお楽しみいただけますと幸いです。


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たけ
最後まで読んでくださり、ありがとうございます