天才が天才たる所以とは。メッシのドリブル徹底解剖。
前回の記事ではリフティングをトレーニングとして取り入れる目的について考え、
・ボールの軌道を予測してその軌道上に足を出す感覚
・ボールを触る位置に応じて足の当て方を変えて次のプレーがしやすい位置にボールを持っていく感覚
の2つを養うためであると結論付けました。
これについてsunnyさんにコメントを求めたところ、リフティングは軸足の置き方などによって体の正面で常にボールを扱えるようにする練習であるとも考えられるという指摘を頂きました。
これを聞いた時に、ある映像が頭に浮かびました。
約一年前に話題になったメッシが犬と戯れる動画です。
これは純粋なリフティングとは言えませんが、sunnyさんの言う通りメッシは常に体の正面にボールを置いていつでも得意の左足でボールを触れるようにしながら、犬が飛び込んでくるタイミングを待っています。
これは超リラックスした状態でのオフのお遊びでしかないのは確かですが、試合でのメッシのプレーの特徴がここに現れているような気がします。
という訳で、今回の記事では一旦リフティングの話は脇に置いて、メッシのドリブルを徹底解剖していきたいと思います。
良いドリブルとは
そもそも良いドリブルの条件は何かと言われて皆さんは何を思い浮かべますか?
おそらく相手の逆を取ること、裏をかくことといった回答が多いのではないかと思います。
確かに相手を豪快に抜き去るためにはそのような要素が重要であるのは間違いありません。
しかし、それだけではもちろん不十分で逆を取った後も自由にボールを扱える状態でなければ意味がありません。大きなボディフェイクで相手の逆を取ってボールを掻き出せたとしても、次のタッチをきちんとできる体勢でなければすぐにディフェンスに追いつかれてボールを取られてしまいますよね。
小手先のなんちゃってフェイントで一瞬相手を剥がせたところでその先がなければすぐに潰されるよってことです。
では何が僕の中での正解なのかと言うと、常に自由にボールを扱える状態を維持することです。常に自由にボールを扱える状態であれば、ドリブルだけでなく、パス、シュートも含めて選択肢を多く持つことができ、その選択肢の多さが相手の逆を取ることにもつながると考えられます。
とりあえずこの記事では、良いドリブルの条件を
常に自由にボールを扱える状態を保てること
と仮定して話を進めていきます。実際にメッシのドリブルを見てみるとその意味が分かって頂けると思います。
メッシのドリブルの種類
僕はこの記事を書くにあたってメッシの動画を何度も何度も繰り返し見ましたが、その中で以下のようにメッシのドリブルを構成している4つの典型的なプレーを抽出しました。
1. 左足爪先〜アウト
2. 切り返し(アウトサイド)
3. 切り返し (インサイド)
4. ダブルタッチ
もちろんこれだけには限りませんが、ここからはそれぞれの要素について代表的なシーンを挙げながら解説していきたいと思います。
1. 左足爪先〜アウト
まずは最もメッシが多用するタッチであり、彼の凄さが詰まっていると言える爪先〜アウトサイドでボールを押し出すようなタッチです。
上の動画の中でこのドリブルからシュートに行くシーンが多いので分かりやすいと思いますが、このタッチの利点は常にボールを蹴れる位置にボールを置けることです。
つまり、このボールの持ち方こそが常に自由にボールを扱える状態であり、最初にこの記事における良いドリブルを常に自由にボールを扱える状態を保てることとしたことを考えるとこのタッチこそが理想のドリブルであり、理想のボールの持ち方であると言えるでしょう。
15秒〜の、メッシが右から左にピッチを横断しシュートに至ったシーンが最も分かりやすいですが、この持ち方をされると相手にとっては常にシュートを打たれる怖さがあり、さらに相手はメッシのシュート技術の高さを知っているので、ほとんどキックフェイントのような動作も入れずともただ横断するだけで相手がバタバタ倒れていくのです。
また、メッシの特徴としてよくタッチの細かさが挙げられますが、タッチが細かいということはその分パスやシュートを選択できるタイミングが多いということになり、相手にとっては極めて厄介であると言えます。
加えて、タッチの細かさはドリブル自体の精度にも寄与します。メッシはこの爪先〜アウトサイドのタッチを使って細かく進路を調節します。言い換えると、ワンタッチワンタッチ少しずつ体の向きを変えながら、不規則なコースを取りながら進んでいきます。それによって常に体の正面で、一番ボールが扱いやすい位置でボールを扱うことが可能になり、このことがメッシのドリブルの圧倒的な再現性を実現していると考えられます。
メッシのドリブルはこのタッチがベースとなっており、この後に挙げる切り返しやダブルタッチでさえもこのタッチを実現するための手段であると考えられるというのが僕の主張ですが、それはそれぞれのパートで詳しく述べることとします。
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