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シャビ・アロンソの低弾道キックの秘密。蹴った直後に両足がクロスする理由。

今回は、すでに現役を引退した監督でありながら圧倒的なキックの質を見せてつけているシャビ・アロンソのキックについて解説します。


フォームの特徴:蹴った後に両足がクロスする

最初にシャビ・アロンソのキックに特有の外見上の特徴をまとめておきます。

この動画で見ると分かりやすいですが、ボールを蹴った後すぐに蹴り足と軸足がクロスするような形になるという特徴があります。

あまりクロスするような形にはなっていないシーンでも、インパクト瞬間とその後の蹴り足の位置を比較するとかなり軸足方向に移動していることが分かります。

ここからは、まずこのような質のボールを実現するために要求される要素を簡単にまとめた上で、その要素を満たすためのフォームの秘密に迫るという流れで進めていきます。

前提:バックスピンを綺麗に掛けるためには?

このような低空飛行のボールを蹴るためにはバックスピンを綺麗に掛ける必要があります。バックスピンが掛かっていることで空気からボールを持ち上げる向きの力を受け滞空時間を伸ばすことができます。

また、このように伸びるイメージのボールを蹴るためにはそれに加えて球速を高くすることが重要です。ざっくり言うとボールに与えた力は速度と回転に分配されるので、回転数が増えるほど速度は落ちやすくなってしまいます。バックスピンは先述の通りボールの対空時間を伸ばす上では必須なので仕方ないとして、球速を高くする上では不必要な横回転を極力減らすことが必要になります。

これがバックスピンを綺麗に掛けることが必要と言っている理由です。綺麗にバックスピンを掛けるのは意外と難しく、バックスピンが綺麗に掛かっている場合でも実は横回転を掛けないために足の振りが制限されていて球速を最大化できていないというのはよくある話です。

①インパクトは足の面を横に

まず、バックスピンを真っ直ぐに掛けるために重要なのが下図左側のように足とボールとの接触面が真横に伸びるようにすることです。逆によくあるNG例は下図右側のように足を斜めに入れてしまうパターンで、この足の入れ方をするとアウト回転でスライスするようなボールになってしまうことが多いです。

この足の面が真横に向くような蹴り方をするためにはインパクト位置はインステップではなく少し内側である必要があります。

これに関しては上の動画のシーンが分かりやすく、実際にインパクト瞬間のコマを切り取ってみると以下の通り足部の足の裏が地面を向き足部の内側でインパクトしていることが分かるかと思います。

前から見るとボールで隠れてしまうので分かりづらいですが、この足の裏の向きに注目してみるとこの動画内でもインパクト瞬間に地面を向くようになっており比較的内側にインパクトしていることが見て取れるかと思います。

②蹴り足の運動方向は蹴り出し方向へ

もう一点、バックスピンを綺麗に掛けるために重要なポイントは蹴り足の振りを蹴り出し方向にまっすぐ向けることです。

ボールの回転は基本的には蹴り足とボールの接触面と蹴り足の振りの方向がズレることで生じます。よって、横回転を掛けないためには真上から見た時の蹴り足の運動方向が蹴り出し方向に対して左右にズレることなく同方向を向いている必要があります。

実はこれが、既に述べたようなバックスピンのボールを蹴る際に球速を制限する因子になり得る要素です。

その理由は①で述べたようなインパクトの仕方をした場合、キック動作において蹴り足を最も良く加速する膝下の振りが蹴り出し方向からずれやすくなってしまうからです。

前提として、膝下の振りによる蹴り足の運動方向は膝のお皿が向いている方向に一致します。よって、膝下の振りを蹴り出し方向への蹴り足の加速に最大限活かしたい場合、膝のお皿の向きは蹴り出し方向を向いている必要があります。

実際に既に述べた足部内側でのインパクトをする時の膝のお皿の向きに注目してみると、以下の通りインパクト瞬間には蹴り出し方向に対して外側を向くことになります。(動画で見た方が分かりやすいです)

よって、この状態で膝下の振りを出すと蹴り足の運動方向は外方向を向くことになるので、実際には他の関節運動を組み合わせることによって蹴り足の運動を蹴り出し方向へ向けることが重要になります。

この調節がうまくできない場合、膝下の振りの方を制限することで回転がかかるのを抑えようとする場合が多く、それでは蹴り足の加速に制限がかかってしまうので蹴り足の運動方向を調節する技術が必要です。

実際、まだボールをしっかり蹴れない子供がボールを浮かせようとした時にカーブ回転がかかってしまうのはこれが原因であることが多いです。具体的には、ボールの下に足を潜り込ませるために面を横にするものの、膝下の振りでしか蹴り足をうまく加速させられないため蹴り足の運動方向が外を向いてしまいカーブ回転を生んでいるというのがよくある現象です。

解決策:インパクト直前で股関節外旋

それでは、シャビ・アロンソがどのようにこれらの要素をどのように満たしているかを解説していきます。

既にお分かりかと思いますが、蹴った後に足がクロスするようになる理由は、②として述べた蹴り足の運動方向の調節を実現した結果です。

ざっくり言うと膝下の振りによる右方向への蹴り足の加速を打ち消す左方向への蹴り足の加速が強く出ているために蹴った後に右足が左足の前を通過していくようなフォームになっています。

そして、この運動方向の調節を実現している関節運動は蹴り足側の股関節の外旋です。これについてここから詳しく解説します。

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