ロングキックでボールの下に足を入れるのは思ったより難しい話。
ボールを遠くに飛ばすためのポイント=ロングキックのポイントは何か?と聞かれて皆さんはなんと答えるでしょうか。
足を振り切るとか全身を大きく使うとかは低い強シュートにも共通するポイント(蹴り足を加速するため)なので、ロングキックに特有のポイントを考えてみましょう。
おそらく"ボールの下に足を入れる"という回答を皆さん思いつくのではないでしょうか。実際自分が指導する小学生なんかに聞いてみても、ボールの下を蹴るという回答が返ってくることがほとんどで、いわばキックの常識のようなものとして定着しているのではないかと思います。
それ自体は大変素晴らしいことなのですが、常識的なものであるにも関わらず実際にボールの下に綺麗に足を当てられている選手は実はそう多くはありません。プロレベルの選手で見てみても、足の振りが速いから目立たないもののインパクトの仕方が実は不適切であることも多いです。
今回の記事では、そもそもボールの下に足を入れるべき理由から始めて、それを実現するための方法、よくある誤解を詳しく解説していきます。
そもそもなぜボールの下に足を入れるのか?
まず、ロングキックの目的(=ボールを遠くに飛ばすこと)を実現するために必要な条件を考えてみましょう。
ボールの軌道は、①球速,②回転,③打ち出し角度(≒高さ)の三つの要素の組み合わせで決定されます。
ロングキックの場合、①高い球速で、②横回転を含まない綺麗なバックスピンで、③打ち出し角度は30°くらい(かなり高め)に蹴り出すことが必要です。
これらの要素の内、打ち出し角度を決めるのはボールのどこにインパクトするかのみです。ボールを浮かすためにはボールを下から上に蹴り上げる必要があると言われることもありますが、浮かすことだけを考える場合はボールの下に足が当たりさえすればOKです。逆にボールの真ん中付近を下から上に蹴り上げたとしてもボールは浮かず低い縦回転のボールになるだけです。
以上のことから、ロングキックにおいてボールの下に足を入れるべき理由は、ボールの打ち出し角度を大きくしてボールに高さを出すためであると言えます。
足を下に持って行くだけでは不十分?
それではボールの下側に蹴り足を当てるための方法を具体的に考えていきましょう。
そのためにはまず二つの物体が衝突する際に接触点がどのように決まるかを理解しておく必要があるので、より単純な例としてボールに平らな面を持つ物体をぶつける場合を考えてみましょう。イメージはラケットやゴルフクラブをぶつけるような感じです。
まずは平らな面が地面に垂直になっている下図のような場合です。
上図より、面の位置を上下にずらしたとしてもインパクトの位置は変わらずボールの中心となっていることが分かります。
このことからボールの下側に足をインパクトするという目的を達成するには、ただ単に蹴り足の高さが低くなるようにするだけでは不十分であると言えます。
では、どのようにすればインパクト位置を変化させられるかと言うと、面の角度が鍵になります。
下図のように面が斜め上に向くようにすると、面の位置が上下にずれたとしても先ほどよりもボールの下側にインパクトすることができます。
このようにボールにある物体をぶつける際の接触点は単にぶつけに行く物体(キックで言うと蹴り足)の位置では決まらず、厳密に言うとボールの接面とぶつけに行く物体の接面が一致する2点においてインパクトが起こることが分かります。
よって、ボールの下側にインパクトしたい場合二つ目の例で考えた通り、蹴り足の内で接面が斜め上に向いている点がボールに対して最初に到達するように持ってくる調節が必要になります。
上の例ではぶつけに行く物体を平面で考えているので、接面は非常に単純ですが、実際の足部は三次元的に曲面を持つ構造なのでキックの目的、球種に応じた繊細な調節が必要です。
それではここからは具体的なインパクトの仕方を考えていきましょう。
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