ムバッペの十八番・ニア抜きシュートの秘密。
今回はムバッペが得意としている、ファーを見せておいてニアをぶち抜くシュートを解説します。
全く同じと言って良い形のゴールシーンだけでこんなにも数が集まっていることからこの形のシュートは有効であるは明らかなので、この型を身に付けられるようにこの記事を通して原理を理解して頂ければと思います。
ファーを見せるための体の向きの作り方
まず、ファーを相手GK・DFにファーへのシュートを匂わせる工夫についてです。
これは非常にシンプルですが、体の向きが完全に横(右足でのシュートでは右方向)に向くように蹴る直前の蹴り足の着地の仕方を調節しています。
1,2,4つ目のシーンは、いずれも右足アウトサイドを使って自分でボールを右方向にかき出しているので、右方向へ向いた体の向きは自然とできています。
一方で、26秒頃からのシーンでは縦にボールを運んでいく中で、右足のつま先が右方向を向き体全体の向きも一度右を向くように意図的に調節しているように見えます。
ムバッペは同様のテクニックをキーパーとの一対一の場面でも利用しています。
このシーンにおいても、縦に走る中でも蹴る直前の右足の置き方を工夫することで体の向きを右向きに変えてコースを絞らせないようにしていることが分かります。
ニアとファーを蹴り分ける方法
ムバッペのシュートで同じような体の向きの作り方からファーに流し込んでいるシーンを見てみましょう。
このシーンは先ほどのキーパーの一対一のシーンと同様に体が右方向に向いた形を作っています。
その後、ファーに流し込むシーンではインサイドでボールを押し出すように蹴りたい方向に対して直線的に蹴り足が動いているのに対し、ニアに蹴り込むシーンでは足が回り込むように曲線的な軌道を描くという違いがあります。
外見上の違い:軸足を置く位置
この軌道の違いを生み出している要因として外見上分かりやすいのは軸足の置き方です。
インサイドでファーに流し込むシーンでは軸足はボールのほぼ真横に来るように置かれています。
一方で、ニアに蹴り込むシーンでは軸足がかなりボールの奥に来ており、軸足の位置に違いがあることが分かります。
この軸足の置き方の違いがなぜニア、ファーの打ち分けに繋がるかを解説する前に、キックにおける蹴り足の軌道の基本的な考え方を解説しておきます。
ポイント:円錐振り子の軌道を生み出す
基本的にはキックにおける蹴り足の軌道は股関節と膝関節を軸とする振り子運動をします。
いわゆる膝下の振りを使ったキックは膝関節を支点とした単振り子によって蹴り足を加速することを指していて、このような単振り子的な運動では振り子の端点としての蹴り足の運動は真上から見た時に直線的な軌道を取ります。
実際には股関節を軸とした大腿部の振り子運動も加わるので少し複雑になりますが、ムバッペのファーに流し込むシーンを見ると、単振り子的な足の振り方になっていて蹴り足が直線的に出てきていることが分かります。
この動きに回転方向の運動を加えたのが円錐振り子的な運動です。この時、単振り子の場合とは異なり真上から見た時の軌道は円軌道に近い曲線的な軌道になります。
蹴り足をこのような軌道に乗せることができれば体の向きをファー側に向けながらニア方向へシュートを打ち抜くことも可能になります。
この軌道を実現するために最もシンプルな方法は、蹴り出し方向に体が向くように体を捻ることです。今回取り上げているようなニアへ蹴り込むシーンで言うと、ニア方向に軸足とおへそをむけてしまい、その方向にまっすぐ足を振り抜くことです。
このようにしてニアへのシュートを蹴る選手が多いのですが、ムバッペは体の向きをファー向きから最後の最後まで変えずに同じシュートが打てるのが大きな特徴です。
ここからムバッペ独自のシュートフォームを詳しく解説していきます。
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