丸井グループとグッドパッチの合弁会社Muture設立における私の想いと決意表明
はじめまして!!
株式会社Muture(ミューチュア)を、2022年4月14日より経営することになりました、芝尾 崇孝(たかゆき)と申します。
Mutureは小売・フィンテック事業において、お客さまと共に商品やサービス開発を進めてきた丸井グループと、デジタル領域の知見をもつグッドパッチ(以下Goodpatch)によって設立されたジョイントベンチャーです。
※まだ登記が完了していないため4/14(木)時点では就任予定です。
私自身の経歴に簡単触れておきますと、2005年丸井グループに入社してマーケティング業務からキャリアをスタート、EC事業部の企画部門を経て2018年よりBASE株式会社に出向をいたしました。2020年に丸井に復職してからは「売らない店」「イベントフルな店」など未来の店づくり戦略推進を担当したり、複数社のスタートアップ企業と共創を通じたサービスを立ち上げたり、さまざまな経験をしてまいりました。
その中でもっと大企業とスタートアップのお互いの強みをかけ合わせた共創のビジネスが社内外に広がってほしいと思っていたところ、今回、丸井グループとGoodpatchが設立する合弁会社、Muture立ち上げのご縁をいただきました。
世の中を見渡してみるとジョイントベンチャーの立ち上げの話はあるものの、
などと思われがちではないでしょうか。
ですが私自身は、大企業とスタートアップのアセットを活用できることはすごいチャンスで、インパクトのあるサービスやビジネスが生みだせる可能性をめちゃくちゃ信じています。
そして、少なからず今までの自分の経験から成功させることは可能だということを。
私がなぜそんなことを思うようになったのか、私の過去のストーリーから紐解いてお話ししたいと思います。
ずっと小売のデジタル化をやってきて感じた課題
2011年頃。「O2O」というキーワードが流行りだしました。丸井グループのEC事業に従事していた私は、オンラインサイトの特集ページとオフラインの店頭で扱う商品を連動させようと試行錯誤していました。いま思えば、丸井のデジタル化を推進したいという挑戦は、この時点で始まっていたのかもしれません。
しかし当時は、ECはEC、店は店、という部署や担当の領域意識が強い中で結局システム的なところやお客さまの体験設計は二の次で、できることを大前提に着地点を決めて取り組んでいました。
当然、社内で決めた落とし所とお客さまにとって最良のサービスはイコールではありません。違和感を覚えながらも、改善策が見出せずにいたのです。
その後、2015年。私は「売らない店の推進担当」として、お客さまの体験を基軸にしたPBブランド「ラクチンきれいシューズ」の体験ストアのプロジェクト推進にチャレンジすることになりました。時代が少し移り「オムニチャネル」のキーワードが流行りだした中での挑戦でした。
「靴のサイズでお悩みのお客さま」に気兼ねなくサイズをお試しいただきたい。
私たちが目指したのは、リアルとオンラインのいいところを融合させること。シューズのサイズごとのバリエーションを増やしながらも、一方で生まれる売場の面積や在庫リスクにおける課題を解決する必要がありました。そこで店舗在庫を持たない代わりに、19.5cm~27.0cmの全型全サイズを全店に置き、自由にお試しいただける環境をご用意。注文はすべてネットで行なう新たな体験を提供するサービスを開発したのです。
構想段階では「店に在庫がないなんてお客さまが納得されないだろう!」など、社内からさまざまな指摘があったものの、いざ始めてみると懸念されていたような反応はほとんどなく、それ以上にサイズを気兼ねなく試せる体験に対しての喜びの声を多くいただき、結果的に全国各地に展開することができました。
しかし、そこからのお客さまの体験の磨き込みや、デジタル上でのつながりの設計などサービスを改善していく体制づくりやデジタル起点までは力が及ばず、PMFが終わりきれていない中での早計な拡大を図ってしまい、結果として継続的な取り組みとすることができませんでした。
今思えば、時代は昔から常にDXというものが求められ続けており、それに私は挑戦してきたのだと改めて感じます。
しかし、色々とチャレンジはしてはきたものの、ちゃんとグロースさせるところまで向き合えきれず、結局サービスの成長も行き詰まりを迎えてしまいました。
当時はその原因がわかることはありませんでした、、、。
今思うと課題の根底には
がありました。
当時も課題認識はできているつもりでした。しかし、丸井という組織の中でお手本や比較・検証の対象がない中、明確にはとらえられていませんでした。
外部の視点や知見を持った人材やパートナーがいないとこうした課題に気づき、定義づけるということは本当に難しいことだと感じます。
BASEでの原体験、スタートアップへの出向で見えた課題解決の仮説
そんな中、私の視野/視座を引き上げ、成長させてくれたのが2018年BASEへの出向です。(快く迎え入れていただき、さまざまなチャンスと支援をくださった鶴岡さんを始め、BASEのメンバーには今でも心からの感謝しかないです。)
出向した当日から「SHIBUYA BASE」を任せてくださいました。BASEのショップオーナーさまが、最小限のリスクで簡単に出店できるプロダクトの立ち上げです。
2ヶ月という爆速でサービスを作り出し、そのあとプロダクト開発に特化したチームを作り、アジャイル開発を推進する。スタートアップでは当たり前のことなのだと思いますが、意思決定に時間を要する組織に所属してきた人間にとってはすべてが目からウロコでした。その時に伴走してくれたメンバーの皆様には頭が上がりません。
その後も色々なサービス立ち上げを担当させていただきました。その経験を通じ、出向した2年で私が丸井に持って帰ろうと思ったことが3つあります。
1:プロダクトファースト
私の勝手な解釈なのですがこの言葉には2つの意味があります。
1つはプロダクトがすべての中心にあるということ
誤解を生みそうな言葉ですが、プロダクトはお客さま起点で開発されることに相違ありません。BASEでも、サービスをご利用くださっているショップオーナーさまをどこよりも大切にして、どうすれば成功に貢献できるかを日々真剣に考えています。ただプロダクトを開発する時は、ショップオーナーさまに寄り添いつつも、具体的にどうしてほしいかまでは細かく伺わず、自分達でどうすればショップの成長に貢献できるかを想像してプロダクトを生み出しています。
テクニカルにお客さまのご意向をそのまま採用するのではなく、まずはお客さまの事を考え抜いた上で、自分がどんなプロダクトを生み出したいのかの仮説を起点にビジネスモデルや組織、技術を考えます。
もう1つは爆速でやるということ。
立てた仮説に対してマーケティング調査などに時間をかけても、プロダクトを生み出さないことには価値提供はできません。そして色々と調査でお客さまがおっしゃられたとしても、実際の行動は異なる場合が多々あります。
しかも時代の流れは早く環境も刻々と変わっている中では速くプロダクトをリリースして、お客さまの反応を見ながらサービスを磨いていくことが結果的にプロダクトの速い成長につなげることができます。
結果、メンバーが多くの知見を吸収し、プロダクトと個人の成長がイコールとなり、会社そのものも成長する好循環につながると感じます。
2:自分の肩書きや過去の体験を捨ててチームに貢献できることを考える
正直、大なり小なり大企業のチームに対するマネージメントは管理の側面が強いかと思います。しかしそれが時として行き過ぎてしまうとメンバーの可能性が阻害されてしまいます。(ガバナンスの観点で全く管理が不要とは思ってはいませんが、、、。)
BASEで自分よりも年齢が二周りも違うメンバーと一緒に働かせてもらいながら、チームを強く駆動させるのは管理ではなく「信頼」だということに気付かされました。
BASEのメンバーがプロダクトに真摯に向き合い、ときにはためらわずプロダクトに対して「ダサい」と平気で言い合えるところは最高にかっこいいと思います。
信頼で駆動するチームを組成するには、年齢や役職とか過去の体験を全部リセットして「自分がチームに貢献できることを誠実に考える」を実行するしかないと思っています。これは、BASEのメンバーに100%はなりきれない、出向という立場のもどかしさを抱えていた自分だからこそ気付けたのだと思います。
3:スタートアップ流の働き方
見る人にとっては「何当たり前のこと書いているの!」と思われるかもしれないですが、セクショナリズムや意思決定を加速さてるためにワークツールをフル活用するということです。コミュニケーションはMTGを減らしslackを基軸にする、企画はドキュメントベースで展開、完了させる(パワポ作らない)、MTGのアジェンダの型に合わせて事前に展開して参加者は準備する etc、、、。こう一つ一つがめちゃくちゃビジネスに効いてくるということです。
そしてそのツールの選定やメンバーに活用してもらうことは徹底的にこだわるべきであり、似たような社内SNSがあるからとか、パワポの方が使いやすいという言い訳をせずこだわり抜くことで1、2がいい形で動き出してきます。
1~3についてはスタートアップの方にとってはすごく当たり前のように聞こえますが、こうした部分を踏まえていくことでより丸井やいろんな企業がアップデートされるかと感じました。
丸井に戻って小売のDXとして取り組むことが見えてきた
BASE時代、今後世の中は個人や小さいチームが持つ好きの熱量がビジネスに発展し、それをファンが応援するという流れが加速していくのだと手触りを感じる体験がありました。
個人で応援しているアーティストのグッズを作り「SHIBUYA BASE」で販売していた方が、アーティストのファンが交流するオフ会を開催するというので、その取り組みをサポートさせていただきました。
そこで体感した熱量のすごさ。個人や小さいチームが持つ好きの可能性がビシビシと伝わってきました。この熱をそのままリアルに出店できないだろうかと感じました。
しかし、ニーズはあっても、慣れない人がリアル店舗を出店するのは容易ではありません。与信をはじめとする手続きは、ユーザーを起点とする体験がデザインされていないのです。
そこで考えたのが、BASEの仕組みです。手間なくECを出店できる。同じ発想で、簡単にリアル店舗を出店できる仕組みやプロダクトは、ものすごい伸び代があるのではないか?と仮説をたてたのです。
小売の世界でデジタル化というと、来店するお客さまに対するすごいデジタルパネルやVRの提供がすぐに挙げられると思います。ですが、BASEで学びを得て丸井に戻った私が考えたのはその方向ではなく、出店したい潜在テナントに対してスムーズにリアル出店につなげる、デジタルからリアルに滲み出すようなプロダクトをやってみようと漠然と思い始めていました。
共創の可能性証明~大企業とスタートアップの掛け合わせによる可能性は無限~
2020年4月、丸井戻った瞬間コロナという未曾有の危機に見舞われ、お客さまをお迎えすることができず、苦しい状態でした。
私が感じる丸井の良いところとして、こういったピンチの際に良く用いられる「スクラップ&ビルド」という考え方があります。クレジットカード事業ではグループ関連施設でしか使えないハウスカードからどこでも使える汎用カードに転換したり、店舗との契約を消化仕入から定借型モデルに転換したり、振り切った取り組みにチャレンジする文化です。
これを機に小売に不慣れなオンラインプレーヤーの方に、オンラインで簡単に出店し成長できる出店サービスを作れないか? そしてこれが丸井の小売事業のDXにつながるのではないか? と考え、小売事業の社長である青野さんをはじめ、いろんな方にご相談させていただき、あらゆる協力を得られることになりました。
その結果、ありがたいことにオンライン出店サービス専属の小さいチームを作らせてもらい、プロダクト開発に取り組ませていただくことになりました。
しかし、大きな課題が降りかかりました。BASEにはあって、丸井にはないもの、、、。
それは一言でいうと「デジタル人材」がいないという問題です。
デジタル人材がいないとプロダクト思考をベースに、UX設計やデジタルの知識に基づいたプロダクトのアウトプットからアジャイル開発を強力に進めることは難しいのが現状です。デジタル人材を大企業で1から育てるのは難しいし、中途採用においても組織とマッチするかといったリスクや、人数を集めるのにも時間がかかってしまう、、、。
やはりDXは自社だけで起こすのは難しいのか、、、、。
課題を突破したのは「スタートアップとの掛け合わせ」でした。
その時に偶然に丸井グループが投資させていただいている共創企業の中にカウンターワークスさまがおり、COOの薮本さん、竹信さんへアイディアをお伝えしたところ、話が盛り上がり一緒にサービスをつくろうと言う運びになりました。(本当にこの経営判断のスピードには感服しました。)
私がBASEで得た学びを取り入れながら丸井内でチーム環境を整え、そこにカウンターワークスさまのメンバーに出向いただく形で共創型部署を作ってサービスローンチに挑戦しました。
こうして生まれたのがオンライン出店サービス「OMEMIE(オメミエ)」です。
https://about-omemie.0101.co.jp/
プロダクトのローンチまで3ヶ月。その後もアジャイル開発で改善を加えました。さらにカウンターワークスさまには、この知見を商業施設向けのプロダクト「ショップカウンターエンタープライズ」の開発にも活かしていただくことで、ダイナミックなアップデートを果たしました。
結果として今では当初の目標出店数を超える利用状況になり、出店者さまに対ししっかりと価値を提供できるプロダクトになり始めています。
しかし、スタートアップで学んだ経験を生かしたプロダクト開発だけが成功要因だとは思っていません。一気にスケールさせることができたのは丸井の企業力や培ってきた信用があればこそ。スタートアップの新機軸やスピード感を、丸井のアセットで最大化すること。大企業とスタートアップの手法が掛け合わされたことが成功要因だったと思うのです。
こうした体験を通じ、私は大企業とスタートアップの共創が持つ可能性を確信し、自ら証明したいという思いを強めていきました。そして、そのチャンスはすぐに訪れました。丸井とGoodpatch、大企業とスタートアップの共創のあり方を追求するMutureの立ち上げです。
Muture立ち上げと決意表明~難解だからこそ「奇跡」を起こしたい~
Goodpatchの土屋さん、丸井グループの青井さんを始め両社の多くの方がこの取り組みにコミットしてくれていることで、大変な中でも楽しくここまで来ることができました。
本当にありがとうございます!!
スタート時は丸井グループの得意領域であるフィンテック・小売の自社案件にて実績を積み重ねてまいります。
他にも丸井グループには面白いアセットがあります。
Goodpatchにも同じように面白いアセットがあります。(こちらは他のメンバーから別の機会にご紹介いたします。)
これらのアセットを活用しながら近い将来には丸井グループ、Goodpatch、個々では生み出せなかった新しい未来のビジネス創出や丸井グループ外への事業展開に挑戦していきたいと思っております。
そして私個人の想いとして共創を通じて、可能性を見出すことのできた「大企業とスタートアップ」の共創文化を世の中に広めてまいりたいと思っております。
共創文化が広がることで夢は広がるばかりです。
そんな事を設立メンバーと対話していきながら出てきた言葉が「相利共生」でした。
相利共生とは、異なる生物種が同所的に生活することで、互いに利益を得ることができる共生関係のことです。
相利共生はもちろん大企業とスタートアップだけにとどまらずお客さま、将来性世代などすべてのステークホルダーにも通じております。
互いに依存せず、ただ共にいるだけで、すこやかな関係でいられる。
互いが異なる姿・カタチをしていても相思相敬し、共生していける。
まさに自分が成しえたい世界を表す言葉だと思います。
もちろん一筋縄ではいかないでしょうし、これからいろんな難局が持っていると思います。
だけど難解だからこそやりがいがあるし「奇跡」を起こしたい。
青臭いかもしれませんがそんな未来を信じ、証明するために私自身、誠心誠意この挑戦にコミットしていくつもりです。
終わりに
これから、丸井とGoodpatchから参画してくれた上記写真の5名のメンバーを中心に事業を進めていきます。
立ち上げも一筋縄にはいかなかった部分は多々ありました。
けれども全員が楽しみながら立ち上げの受難を超えてたことでお互い信頼の関係になりたつ最高のチームでのスタートができたと思います。
Mutureは大企業とスタートアップのいいところをかけ合わせた、新しい会社のあり方を一緒に挑戦してくれる初期のメンバーを募集しています。
ぜひ気になった方は採用や会社概要含めて下記に情報が記載されておりますので、ぜひこちらまで!
最後まで読んでくれてありがとうございました!