光の啓示01

光の啓示「第一章 あれ?」

#cakesコンテスト2020

第一章 衝撃の事実のつづき、あれ?

バリ2009 036

ワヤンの誘い乗った私は、さっぱりしようと冷たいシャワーを浴びた。
いまだ解決はしていないショックを引きずりながら
これからどうなるんどろう?

楽しいはずの旅は一転し、ぜんぜん楽しくない、
今まで国内外をいろいろ旅してきたが、今回は最悪。

もうすぐバリの旅も終り、オーストラリアへ向かうのに、
まいったな...。

ヘコんでいる私をしり目に、
のうてんきなワヤンが呼びに来た。

ワヤン:タカ、OK?

私:OK。

Tシャツと短パンをすばやく着て、部屋を出た。

私:ちょっと待って、カメラ忘れた。
まだスマホが無い時代、カメラは旅の必需品。
カメラを持ってワヤンの車に向かった。

ワヤンの車は、旧車のコロナだったかな?
エンジンをスタートさせるのにチョークを引きながらキーを回す。

助手席のダッシュボードの下に付けたボックスがクーラー、
まさに、私が10代の時の車でボロボロだった。

CDプレイヤーはもちろんなく、カセットテープ。
そんな車で、ワヤンはノリノリで運転していた。

5分もしないうちに、

ワヤン:着いたよ。

バリ2009 087

そこはウブドでよくある、絵を売っている小さなアトリエというか、ギャラリーというか、
お店というかそんなところ、ワヤンの知り合いらしい画家マデさんが細密画を描いていた。

マデ:アパカバール?

私:バグース、ヤァ。

ワヤンはマデに私のことをバリ語で紹介していた。
どうやら昨日の出来事を話しているみたい。

すると、マデさんは私にこう言った。

マデ:あなた日本人のアーティストなのか、ここで絵を描いていいよ!

私:えっ?

いや違うし、アーティストじゃないし、
なんで、

すでにアーティストになってんの、
ワヤン

私:絵のことをいろいろ聞きたいし。見ているよ。

私は飾ってある絵や、マデが描いている絵のことをいろいろ聞いてみた。

伝統的なバリ絵画でクリキ・スタイルということ。
他にもバトゥアン、ブゴセカン、ウブド、シュピース、モダンなど
いろんなスタイルがあることを教えてくれた。

絵の具についても油絵具からアクリル絵の具を使い始めたらしい。

アクリル絵の具は水彩絵の具のように水で薄めるので、油を買わなくて済むからアクリル絵の具で描く画家が増えてきたそうだ。

ふーん、なんだか知らないことばかり。

私:ワヤン、他も見てみたいな。

ワヤン:OK。じゃあ行こう。

私:テレマカシー、マデ。

マデ:サマサマ。

私たちは次に向かった。

少し走って、そしてついたところは、

なんと、木彫りの工房

私:えっ?なんで木彫り?

他の絵画スタイルにいくかと思いきや
木彫りかよ、ワヤン!

しょうがなくワヤンと工房へ、
そして木彫り職人に、ごあいさつ。

私:スラマットパギ!

そこでもワヤン、私をアーティストと紹介、
だから...違うし
そして昨日の出来事を説明。

私はしょうがなく
しょうがないからアーティストのふりをして、
木彫りのことをいろいろ聞くことにした。

木彫りに使われる素材は柔らかく彫りやすいチーク素材から硬い黒檀などいろんな種類があることや
モチーフもバリヒンドウの神々、ガルーダやガネーシャ、動物、植物、釣り人まで多種多様。

すごく丁寧に教えてくれた。

それにもの作りが、人々の生活に溶け込んでいるような感じがした。

なによりみんな楽しそうに作業をしている。

ワヤン:タカ、私も木彫りをしているよ。

私:えっ?そうなの。

これまた驚いた。
AYUのスタッフと思っていたワヤンが木彫り職人でもあるなんて。

ワヤンがここに連れてきた意味がわかったよ。

さっきのマデもそうだけど、みんな自然体で楽しそうにしている。

私も絵を描いたら毎日楽しくなるのかな?
こんなふうに自然体になれるのかな?
ふとそんなことを思った。

ワヤン:タカ、マカーン?

私:えっ?もうそんな時間。

あっという間に昼過ぎ、
昨日までのバリとは全然違う感覚、
いつのまにか昨日のショックもなくなっていた。
 

つづく

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1989年の夏、私がアート活動を始めたきっかけになったある出来事から現在に至るまでの経験や出来事を記憶にある限り綴っていきます。

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