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北九州市のプラネタリウムで提案の顛末その2(提案した内容2)

前回の続きです。さて、提案した内容はまだあります。まずは光学式に話が立ち戻ります。

4軸制御方式

プラネタリウムの投影現場に携わったことのある方ならわかると思いますが、最近は宇宙から見た星空を再現するのが人気です。デジタル映像技術の進化により、地球を離れ、宇宙の果てに行くような演出が自在になりました。たとえば米国自然史博物館の作成したこの映像を見て頂くと、わかりやすいかと思います。これも10年前のもので、今はさらに進化しています。

こうした、宇宙飛行をリアルタイムで再現できるシステムの事を、スペースエンジンと呼んだりしますが、コンピュータ上のスペースエンジンで生成した映像を高解像度のプロジェクタでドームに投影するわけです。こうした技術がプラネタリウムの表現を一変させたといっていいでしょう。

但し、これらのシステムをもってしても星空の美しさ関しては光学式に遠く及ばないのが実情です。光学式プラネタリウムが存在する所以です。

さて、最近のプラネタリウムでは、地上の星空を体験した後、宇宙に視点を移す演出が良く行われます。けれど、よくご覧になっている方ならわかると思いますが宇宙に飛び出したとたんに星空は鮮明さを失ってしまいます。なぜなら、地上では光学式で映していた星空を、デジタルに切り替えてしまうからです。何故でしょう?

理由は2つあります。一つは、宇宙に飛び出した時、地球などの惑星をデジタルで映して光学式と併用すると、光学式の星にデジタル映像が重なって映ってしまうのがみっともないから。でもこの問題はFUSIONで解決できます。しかしもう一つの問題は、宇宙に視点を移すと、視野の動きが早くなり、光学式プラネタリウムの動きが映像の動きについてこれなくなることが多分にあるからです。

より高速のモータを使えばいいと思うかもしれません。しかし高速モータの採用には、低速の滑らかな動きが犠牲になりやすい課題はあるのですが(そして特別の解決策もあります)、それ以上に悩ましいのが、特異点と呼ぶ幾何学的な問題により、ジンバルロックという現象が起きる点です。現在、市場に存在する光学式プラネタリウムは、ほぼ全てこの問題を抱えています。

さて、私たちは北九州に特別なプラネタリウムを提供するため、この課題の解決にも挑みました。その結果編み出されたのが、新・四軸式プラネタリウムです。これは、どういうものか?紹介映像がありますのでご覧ください。

これをご覧いただければ、今までどういう問題があってどう解決できたかが明快だと思います。そしてこれは技術的にはさほど難しいものではありません(これまで存在しなかったのが信じられないほど)。にもかかわらず、このジンバルロックの問題解決に決定的な作用をもたらします。

従来も、歳差軸という軸を併用した4軸によるジンバルロック回避技術は存在しました。しかし歳差軸を持つ投影機は、サイズが大きくなり、運動速度の制約もあって、ジンバルロックの回避性能は制限されたと聞きます。

この4軸方式は、優れているわりに、構造が単純で小型化ができ、良い事づくめです。これを、最新のメガスターに搭載して提案したのでした。

星を個別にコントロールする機能

私たちは、FUSION技術に併用するため、光学式プラネタリウムでよりたくさんの星をコントロールする技術に取り組んできました。その結果生み出されたものが、ファイバーハイブリッド技術です。これはどういうものかというと、図面で表すことができないのですが、恒星原板の明るい星の部分だけ光ファイバーを埋め込み、他の恒星は従来通りの光源で投影し、明るい星は、別の光源でファイバーの入口に光を入れるというもの。このメリットは、原板に当てる光を減らせて、大幅な消費電力の削減になり、冷却ファンを省くことすら可能になることです。しかしさらに大きな特長は、このファイバーの入口に、液晶パネルを使って、ファイバー一つ一つの光量を自在にコントロールすることが可能になったことです。この技術は、特許も取得しているオリジナルの技術であり、光ファイバーの光量制御に液晶パネルを使用する技術も世界初です。明るさだけでなく色も自在に変えられます。よって、特定の星座だけ色を変えてしまうといったことも可能なのです。

外部映像も取り込める多機能な映像サーバ

提案した投影システムにはさらに様々な特長がありました。

くどくど説明するとややこしいので、提案書の1ページをまるまる載せてしまいます。コアとなる12Kメディアサーバは、FUSIONの高精細な星を作り出すだけでなく、市販されている4Kや8Kの映像コンテンツも上映できます。

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さらに、外部入力から、他のデジタルプラネタリウムの映像を取り込んでそのままドーム全面に再生できます。たとえば提案に盛り込まれているステラドームプロも、ドームマスターでの読込なのです。

新型コロナに対応するオンラインプラネタリウム配信機能

さらに、昨5月に開催したメガスターオンラインプラネタリウムをご存じでしょうか?こちらにアーカイブがあります。

https://www.youtube.com/watch?v=3Rx55v8VQfI

これは、プラネタリウム解説を、ドームに入場しなくても、自宅で観覧できるというシステムで、VRやスマホをつかってあたかも上映を観覧しているような体験ができます。元々は、坂戸児童センターでの特別上映会が開催できず、代案としてオンライン配信ができないかと坂戸市から提案があり、それに応じるために開発したシステムがベースになっています。

ドームに投影するためのサーバの画面をそのままリアルタイムにインターネット上(Youtube360)で配信するしくみです。最大の特長は、美しい星空も精細に配信できることで、どうやって撮影したのかと多くの人に質問されたのですが、実は、光学式で星を映していても、リアルタイムで生成しているFUSIONのサーバが作り出した星空を配信用に利用しているのでした。

なんにせよ、感染症パンデミックのような状況下でも上映を見て頂けるだけでなく、全国各地、いや、全世界から北九州市新科学館のプラネタリウム上映の一端を体験できるようにして、その存在を国内、世界に知らしめ、話題につなげて集客増につなげようという戦略でした。

オンラインで体験できたら見に来なくなるのでは?そんなことはないと思きます。だってVRの疑似体験は、ドーム内の質感までは再現できず、だからこそ多くの人はこの内容の魅力を知り、今度は見に行きたいと思うからです。

それに、学習投影においても、不登校の生徒が自宅で体験できて、社会とつながりを持てるようにしたい、等の願いも込められていました。

まだまだあるのですが、とりあえずここまで。次回、その3をこうご期待です。

続きはこちらから。


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