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患者から見た多発性のう胞腎の自覚症状

WEBサイトで多発性のう胞腎の症状的な情報は結構手に入ります。

その情報は網羅的ではありますが、多数の方に出たものを
まとめて共通点を導き出したものではと思います。

それはそれで大変貴重な情報ですが、逆に患者個人から生の自覚症状といった情報も貴重なのではと思いここに記載しておこうと思います。


私が経験した自覚症状をまとめる際に
その原因からお伝えすると理解が早いのではと思いますので
まずはその原因部分をリストアップしてみました。

  • 尿毒素による不調

  • のう胞の破裂

  • 腎臓容量の肥大


いろいろな自覚症状がありますが、原因となるものは大きくこの3つなのではと思います。
一つずつ見ていきましょう。

尿毒素による不調

これに関連する自覚症状はいろいろなサイトで良く目にするものと一致していました。また、これは血圧上昇とも密接に絡んでいると思われます。

動悸、息切れ、めまい、震え

このような症状がそれに当たります。

例えば私が経験したeGFR 8.6 時の症状を、生活に当てはめて具体的にお伝えすると以下のとおりです

  • 動悸

    • 一日中動悸が続きます

    • 心臓の鼓動が耳から聞こえてきます
      就寝時は特によく聞こえるので寝つきが悪くなります

  • 息切れ

    • 運動能力が著しく低下します

    • 階段1フロア上がるのに途中の踊り場で呼吸を整えないと上がれません
      2フロア上がると目がチカチカします

  • 体中がプルプル震える

    • 高血圧からくるもので会話の際に歯がガタガタ震えて支障をきたします

    • 手も震えるのでキーボードを打つのが遅くなります

    • 単純に体感温度自体も寒くなっていて、冬は電気毛布がないと眠れないほど震えます。

  • めまい

    • なんでもないときに目がチカチカします

    • 日向の白い壁など、通常の人が「少しまぶしいかな」くらいなものが目がくらむようなまぶしさに感じます。(暗闇から突然明るいところに出たような見え方)

  • かゆみ

    • クレアチニン値が上がるにつれて体のかゆみが増してきます。

    • かゆみの箇所は全身に広がりますが、気が狂うほどのものではないので私自身は多少搔きながらですがやり過ごすことができました。

  • 皮膚の黒ずみ

    • 具体的なところで言うと手の表と裏の境界線がくっきり出るくらいに
      上側の色が茶色のような暗い色になりました。

    • もちろん顔も黒ずんだ色になるので見た目で具合が悪く見えます。

のう胞の破裂

のう胞は腎臓の周りにある大きな血豆のようなものですので、もちろん破裂すると血が吹き出ます
※破裂:爆発ではなく、裂け目ができて破けるという意味で使ってます

その先にあるのが血尿です

一口に血尿といってもいきなり一般的に想像する「血」が出るのではなく
以下のような遷移でした。

  • ほんのり茶色

    • 時間を置いた緑茶のような色

    • 初めて見たときは気づかない人もいるかと思います。思い返すとあの時そうだったとわかる程度の変化。

  • 透明なピンク

    • ワインのロゼのような色

    • 明らかに異変を感じます。ただ初めての時はこの色を見ても「あれ、血尿なのかな~」というような疑いのレベルだと思います。

~~~ここから先は大きめののう胞が破裂したときの症状です~~~

  • 透明な赤

    • トマトジュースのような鮮やかな色

    • まさに血の色で「血尿」を完全に認識する色。

    • 正直これを自分が出したのを目の当たりにしたときは血の気が引きました。便器が殺人現場のような見た目になります。
      とんでもなく赤いと感じる色ですが実は尿に対する血の含有量は数%と担当医に告げられました。

  • どす黒い赤

    • トマトジュースに100%ブドウジュースを混ぜたような色

    • 液体の中にドロッとした固形物が混じったような尿になります

    • 初見時は死を覚悟した程に衝撃的でした。

最後の「どす黒い赤」の血尿が出たときは腎臓付近の耐え難い鈍痛が1日中続きました。

どんな体勢でも痛みは変わらず、1日中苦しみました。
特に仰向けで横になると腎臓が圧迫されるのか一番痛みが大きくなります。

対処法としては痛み止めの薬を飲むだけ。
効いてる数時間だけはなんとか眠ることができましたが
横にはなれず座った状態の睡眠のため、慢性的な睡眠不足が続きました。

結局2週間ほど痛みと睡眠不足で苦しめられ、食事もとれず5Kgほど体重が落ちました。

腎臓容量の肥大

これの自覚症状を平たく言うとお腹が膨らんだ状態です。

これだけ聞くと「その程度か」という響きですし、サイトなどでもあまりこれ以上深く触れない部分でもありますが、本人と周囲の方で認識の差が大きい部分ではないかと感じてます。

通常お腹が膨らむのは胃が大きくなるか
女性であれば妊娠しているときかと思います。

一方、多発性のう胞腎はお腹ではなく背中側にある腎臓が膨らんで
背中側に余白があまりないため、お腹を押し出すような状態になるのです。


腎臓移植直前の私の腎臓は両方で7リットルという容量でした。
私が日頃飲んでいる水のペットボトルが1.5リットルなので
4本分以上です

それが私の背中に入った状態を想像していただくと
その大きさに驚かれるかと思います。

お腹の出方としては女性の妊娠と同じような状態なのではないでしょうか。
(私自身は男性のため未経験ですが)

つまり自覚症状も同じようなものと思っていただくと想像しやすいと思います。

  • 胃の圧迫

    • 通常胃は後ろ側にも余白がありますが、私の場合は食事がダイレクトにお腹の前側に影響します。

    • 胃を圧迫されている以前にお腹が出すぎて食事をとる気が失せるという気持ちでした。

  • 膀胱の圧迫

    • 腎臓は胃よりも大きいのでその下にある膀胱も圧迫してました。

    • 腎臓移植直前は日中も夜中も3時間置きにトイレに行ってました。

  • 腰の歪み

    • 常に腰痛に悩まされてました。私の場合、左の腎臓が右よりも大きかったので左の腰がより痛みが大きかったです。

    • 大きな腎臓の影響で、平らなと所で仰向けに寝ると体が反り返ったような感覚になります。枕を腰のあたりにおいて寝るとその感覚がわかるかと思います。

  • 腹部のみの肥大

    • これはまさに妊婦さんと同様です。男性の場合マタニティ服というわけにもいかず、腰回りに合わせたズボンを選ぶと足がダボダボな状態になります。

    • お腹への圧迫を避けたいためベルトは使わずサスペンダーを使うことになり、スタイリッシュとは無縁なファッションになります。

      余談ですが私はそこそこ腹筋があるので、寝ながらの腹筋運動をすると腹筋の真ん中から内臓脂肪が飛び出てくるような形状になります。
      (いずれ図で解説します)


上記とは違うベクトルの症状ですが、実は人によっては「精神的ダメージ」もあります。

女性の場合は「妊娠」という状態があるため触れられにくいですが、男性の場合は

お腹が出てる=肥満

という認識が一般的です。
久々に会うと「太った?」と言われ
健康診断では「メタボリックシンドローム」と診断され
言われのないレッテルに憤りを感じることもありました。

私自身は少し楽観的なところもあったので、「腹筋が大きいんです」と言って笑いに変えてましたが、患者の全員がそううまくいなすことができるわけではないと思ってます。

以上
実体験をもとにした自覚症状のご紹介でした。

今思うと当時はこういった極限のストレス状態が続く中で、正直なところいつしか「いつ死を迎えるか」というより「事故で死んでしまったら楽なのに」というところまで行ってました。。。
腎臓移植手術を受けるまでは。
※腎臓移植後の症状についてはこちらを参照ください

多発性のう胞腎患者全員がこの症状になるということではないですし
症状の重さも人それぞれかと思いますが、どんなことが起こるのか
それがどの程度までになるのかを知っておくことで
少しでも不安が解消されれば幸いです。



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