光条とレンズの関係の話
こんにちは。
前回の記事「工場夜景の撮影と現像テクニック」では、工場夜景の基本的な撮影方法などについて記させていただきました。
今回はこの中で少し触れた「光条」(こうじょう)について、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。少しマニアックな内容になりますが、夜景撮影において光条は強いアクセントとなり得ます。興味のある方はぜひ最後まで目を通していただければ嬉しいです。
📷光条ってなに?
そもそも光条とはなんでしょう?
F値を大きく(絞り込む)して撮影すると、太陽やイルミネーションのなどの点光源に複数の光の筋が写った経験があると思います。これを光条といいます。
こういう点光源がキラキラしたものですね。一方、よく似た言葉に「光芒」(こうぼう)があります。
厳密に定義があるわけではなさそうですが、写真界隈では一般的に次の写真のようなものを光芒と呼ぶようです。
光源(主に太陽)が奥にあり、木の枝葉や雲などの隙間からサーっと射し込む光の筋。非常に爽快で美しい気持ちになりますよね。僕も大好きです、光芒。でも今日は光芒ではなく光条のおはなし。
ではなぜ光条が出るのでしょうか。
前述したように「絞り込んで撮影したら点光源に発生する」のは、経験から分かりますが、理屈としてはどうでしょう。
え、そんなの知らなくても関係ない?理屈なんてどーでもいいって?
…ええ、僕もそう思います!(キッパリ)
今皆さんが手にしているスマホだってそうです。どういう理屈で動作していて、どんな仕組みでインターネットという仕組みを利用しているかなんて事を、いちいち全部理解しながら使ってる人なんていません。いや、中にはいるんでしょうけども。
いやいや、私は気になるよ!という方へ。
「回析という現象で、光の波が干渉して云々…」
なんて事を、ここで改めて説明しなくてもネットで調べれば、凄く分かりやすく解説してあるサイトにたくさん出会えます。
『光条 回折』で今すぐ検索検索!
…どうでした?よく分ったでしょう?
つまりはそういう事なんです(他力本願)。
レンズの絞り羽根によって光条は発生するのです。
📷光条には様々な形状がある
ここでもう一歩踏み込んでみましょう。
「レンズの絞り羽根が光条を生み出す原因となっている」
ということは、言い換えれば
「レンズの絞り羽根によって、光条の形も変わってくる」
という事になりますよね。
光条の条数は、絞り羽根の枚数によって次のようになります。
①絞り羽根数が偶数なら、光条の筋の数(条数)は羽根の枚数と同じ
②絞り羽根数が奇数なら、条数は羽根の枚数の2倍になる
絞り羽根数が8枚のレンズで撮影。条数も8本です
こちらは9枚羽根で撮影。条数は倍の18本に
そしてもうひとつ。光条の形は絞り羽根の形状にも左右されます。
これも詳しいことは控えますが、結論から言うと
③円形絞りだと、光条の先が広がる
④非円形絞りだと、光条の先が尖る
となるのです。
円形絞りのレンズだと先が広がります
一方、非円形絞りのレンズでは先が尖ります
この①~④の組み合わせで、そのレンズが生み出す光条の形が決まります。
あとはイメージにある光条を作り出すレンズを、各メーカーの仕様を見て探せばいいのです。
📷好きな光条のレンズを見つけよう!
とは言ったものの。こんな声がモニタ越しから聞こえてきそうです。
「いや、そんなの面倒だから。いちいち探してるヒマないよ」
いやはやごもっとも。
僕がそちらの立場でもそう思います。
なので調べました!現在発売されている、すべてのレンズの絞り羽根数と絞りの形状を!
ただしCanon純正だけですが。
待って待って、石投げないで!
自己紹介読んだら分かるでしょ?Canon一筋おじさんなんですよ、僕。
他のメーカーも気が向いたら調べてみますので、今日のところは勘弁してください。
そういうわけで、現在(2021年2月中旬時点)Canon公式ページで確認した発売されている全レンズ86本の結果をPDFにまとめています。
表の中に黄色の網掛けですが、光条が10本以下で非円形絞り(先が尖る)ものに入れています。最近では随分減ってきた、希少な組み合わせだからです。ある意味絶滅危惧種です。
📷最近は玉ボケ重視のレンズが多い?
すべてのレンズを調べたわけではありませんが、最近発売されているレンズの多くはエッジの目立たない円形絞りで、羽根数も増加傾向にあります。このようなレンズは、少し絞っても玉ボケは円形を保ってくれるという利点があります。
一方、絞り羽根数は奇数の9枚が多くを占めています。低価格のレンズでは、同じく奇数枚の7枚が主流です。以前は8枚絞りが多かったCanonですら、最新のマウントであるRFレンズではほぼ9枚絞りになっています。
※Canonレンズ全体の8枚羽根の割合は23.3%(86本中20本)ですが、RFに限れば0%。つまりナシ。
これは完全な好みの問題ですが、光条は先が鋭く尖った、条数の多過ぎないものが理想。そういう意味では「綺麗な玉ボケが表現できる最近のレンズ」と「シャープな光条の出るレンズ」は、対極に位置すると言ってもいいでしょう。
どの光条を好むかは個人の自由ではありますが、絶滅危惧種である非円形絞りの6枚羽根や8枚羽根に関しては、他のレンズメーカーではほとんど見ることがなく、ほぼCanonのみと言っても過言ではありません。
ただしマウントによっては、マウントアダプターを介することで他社のカメラでもEFレンズを使用することも可能ですので、興味のある方は調べてみてください。
今回は光条についてまとめてみました。
最初に書いたとおり、少しマニアックな内容になってしまいましたが、夜景撮りの参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。