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夏休みの観察日記

彼は伊良部島の知り合いで、工事現場にいそうな日に焼けた、かなりガタイのいい人だ。

いつもタバコを吸っていて、お金はないみたいだけど絶対にタバコはやめない。

本人曰く、タバコを吸わないと死んじゃうらしい。
衝撃の新発見である。

たぶん非喫煙者には理解できない体内構造してんのかもしれない。
タバコでパワーアップする “エイトマン” みたいな。


彼は宮古島本島にもよくいる。
用事で行くとなぜか高確率で歩いている姿を目撃する。もちろんタバコを吸っている。

仕事が終わると暇で、宮古島まで来るそうだ。
伊良部島と宮古島は「伊良部大橋」という全長3.5kmほどの橋で繋がっており、車かバスがほしいところ。

市営のバスで行き来してるらしいが、夜は動いておらず、たまに宮古島から朝帰りしてくる。

どこで過ごしているのか聞くと、ずっとブラブラしてるって言う。渋谷の若者か?


伊良部島の夜は暗い。
街灯すらないところが多く、車のヘッドライトを消すと星しか見えない幻想的な空間になる。

夜に車で走っていると、なぜか伊良部島でもよく彼を見つけてしまう。前回は確か深夜2時くらい。

なんで深夜に出歩いてるのかと聞いてみたら、眠れないし暇だから歩ってると。

不眠症の気があり、眠れない夜があるそうだ。
眠れなくてさらにタバコを吸ってしまう。余計目が冴えるだろそれ。


彼はスマホやらの連絡手段を持たない。
連絡手段として以外にも、様々な情報を得るツールだし、持たない選択なんてあり得ないのに。

以前、宮古島で帰りに車で拾う約束をしたけど結局合流できなかった。
後日聞いたら、疲れたから自力で帰ったとか。
昔の人はどうやって誰かと会っていたのか。


彼はテレビを見ない。スマホも持たない。

夜が暇なら本でも読んだらいいのに、本は読まないそうだ。

暇だからタバコを吸って、散歩する。


その見た目のイカツサから最初はただ怖かったが、最近は5歳児くらいに思えて案外かわいくもある。

まだ付き合いは続くだろうから、たぶんこの先も更なる不思議が見つかるかもしれない。


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