嫌いだった東京
東京に興味がない側の田舎人だった。
北関東出身者の多くは上京したがるか、週末や休みの日に東京付近に行きたがる。
まあ分からなくもない。
物や人、遊びなど刺激的なものはすべてで田舎は相対的に劣っている。
だから昔から周りには東京に、ことあるごとに行く人ばかりだった。
自分はというと、そもそも人混みが苦手で、流行に疎く、遊びも近場で事足りた。
つまり東京に行くメリットがない。
なんでわざわざ電車を乗り継いで、時間とお金をかけてまで人混みに揉まれに行く必要があるのかと常々思っていた。
それが社会人6年目、30歳にして状況は一変する。
以前は医療系の仕事をしており、それなりに不便なく暮らしていたわけだが、
何を思ったのかそれまでの仕事を辞めて環境を変えるために東京に行くことになった。
次の仕事のために “仕方なく” 上京した。
が正しいけど。
元の部屋の半分以下の広さ。
賃料は家賃補助がないからフルでのしかかる。
急いで引っ越ししたから荷物の整理もまともにできずさらに狭くなる部屋。
正直、金銭的にはなんのメリットもない。
人の多さは予想を超えてるし。
なんとなく空気も悪い気がしていた。
だけどどうだろう、それ以外では、もしかしたら食わず嫌いだったのかもしれないと思い直した。
日常生活に刺激が多くなったのは確かだ。
色んな人、当然変わった人も多いし、何かしらイベントをやっていてふらっと参加して楽しむこともできる。
刺激ってのは不思議なもので、知らなければ求めようとも思わない。
だけど知ってしまったら無いことを不満に感じる。
そう、都会の刺激を知ってしまい、味をしめてしまったのだ。
たまに地元に帰ると安心するけど、すぐに飽きてしまう。刺激を求めて帰ってるわけではないからいいんだけど。
東京には結局半年しかおらず、今は宮古島に来てるわけだけど、
最初は新鮮だった宮古ブルーの海も今は景色だし、都会の慌ただしい日常に対してどこか懐かしい気持ちを抱かざるを得ない。
きっともう、都会の刺激を知ってしまったから、どこに行っても求めてしまうに違いない。
そんなふうに思いながら今日も宮古の海には目もくれず、
ただただ長い伊良部大橋を走って、伊良部島から宮古島本島に刺激を求め向かっている。