#3
このわけのわからない狂乱が終わった時、ちゃんと何が起きたかを説明するために、僕は今キーボードを叩いている
ことの始まりは仮想世界の監視担当がある存在に遭遇したことだった、らしい
らしいというのはその事態を把握した人から狂って"調査隊員"になってしまったから正確にコミュニケーションが取れなかったのが原因
僕はコミュニケーションが下手だったから"アレ"の話をする機会がなかったから助かってる…まぁ良いことか悪いことかわからないけど
"調査隊員"は"アレ"の存在を広めようとするだけで無害といえば無害なんだけど、"調査隊員になる前の仕事"がほっぽりだされてるし、そもそも異常存在が拡散している状況は看過できない、しちゃいけない
ってことで調査隊と化した同僚達を置いて僕は仮想世界に潜ったんだ
僕は前から気になってたけどお金がなくて手に入らなかったVRゴーグルを
備品室から持ち出してセットアップをして(緊急事態だから許されるよね?)
適当に設定を行い操作方法を一通り確認してから調査を開始した
とりあえず"アレ"は食パンのような姿をしているってことしか知らないけど狂ってる調査隊員のことは知ってるからそういう振る舞いをしている人を探せば良い
そうして色々調べたり遊んだりしているうちに僕は"アレ"に出会ったんだ
ケモノの耳が生えた食パンに…!
僕も狂っちゃう…!と思って警戒したけどそんなことはなくて僕に近づいてくるだけで"アレ"は何もしてこない
不思議に思って見ていると"アレ"は興味を失ったみたいでどっかに走っていってしまった
なんだったんだろ?と少し考えた後、僕は勇気を出して見たものを口に出して説明してみる
「ケモノの耳が生えた食パンが居た…!」
…何か起こるかなとドキドキしてたんだけど何も起きない
アレについて把握すると狂ってしまうと思ってたんだけど、見ても口に出しても何も起きない、全く何も
…まぁ…何も起きないんだったら聞き込みの難易度は下がる、ケモノの耳が生えた食パンを見なかった?って聞けばいいだけなんだから
………その聞けばいいというのが僕にはとんでもなく難しいのを忘れてた
結局僕はインスタンスの隅から他の人を観察することにしたんだ
流石にインパクトがある存在だからか注意して話を聞いていれば情報が入ってくる…ケモノのパンが流行っているだとか、食パンのアバターを見ただとかそれっぽい話を追っていくうちに僕はある集会場に辿り着いた
ここからはうろ覚えなんだけど
確か…インスタンスに入った所までは覚えてる
その後はたしか…確か…?
「こんにちは……?待て、君はアレを見てもなんとも思ってない?」
「アレ…?なんのことかわからないけど仮想世界なんだから何でもアリじゃない?」
「フゥン…偶然私を呼ばなかった…?いや興味がそこまでなかった…?
まぁいい………きっと君が宣言するのが適任だろう」
「適任?君はなにを言って…」
「第一回けもぱん集会を開催する、そう君が宣言するんだ」