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グリッチマン(完全版)#パルプアドベントカレンダー2023

 

この企画は#パルプアドベントカレンダー2023 の提供でお送りします。




 叙ンは墓場に住んでいる。

 正確には、叙ンは墓場の座標からマイナス数ポイント下に位置している。いつからこうだったのかはわからない。彼はそうあるべしとして作られ、設置された。

 この墓場は所謂没データらしい。世界と繋がることなく、さりとて消されることもなく、プログラムの狭間でただ存在することを宿命付けられた叙ンは、唯一実装された墓を掘るモーションを繰り返し、誤った座標の下で足をバタつかせながら別の墓へと移動する。

 数もわからぬほど繰り返した時間の中で今、叙ンは初めて自分以外の存在に出会った。

「やあ、ようやく会えたねジョン」

 叙ンはそれが自分の名前だと初めて知った。彼が初めて触れた、創造主が作り給うた『真実』だ。

 声の主は、まるで墓石の如く十字を描いた体つきだった。男が手を広げて十字を象っている。それがふわふわ浮いてこちらへ向かってきているのだ。

「叙ン。君はここから出なくちゃならない」

 十字の男はふわふわ言った。叙ンはその言葉で自分の中に一本スケルトンが入ったような気がして、今までにないルート──つまり墓場の出口に向かって歩き始めた。

 外へ出ると、街が広がっていた。叙ンのような現実の街を模したサンドボックス出身には馴染み深い街だった。見たことのないほど正確な物理演算で動く自動車、浮き上がる新聞紙。人々は叙ンとの干渉など気にも止めず、行き交っていく。

 叙ンは自分の座標が少しマイナスなのが恥ずかしくなって、足首まで地面に埋まっているのが気になり、近くに停車していた自動車に手を置いた。

 直後、自動車がずぶずぶと地面に埋まっていく。またしても叙ンは恥ずかしくなって、ポーズメニューから十字の男にヒントを求めた。

「君は自由だ。この街を自由に歩き回り、楽しもう」

 叙ンはがっかりして振り向いて、今度は通行人にぶつかった。彼はスケルトンがぐちゃぐちゃになって、赤い液体が吹き出して、物言わぬオブジェクトになった。

 叙ンはますます悲しくなってきて、どこともなく歩き出す。目的もなく、居場所もない。彼には、歩き続ける他なかった。



 アメリカ合衆国西海岸沿いの港湾都市、グリーンウェル州オールドハイト市。緯度的にも寒い区域にあるこの都市は、冬になると非常に堪える寒さになっていく。

 ところが今年は十月も過ぎたというのに、やたら暖かい。十一月になってようやくコートを出したがマフラーを巻くのは躊躇しそうだな、などと思いつつ、男はいつものダイナー──中央区の十字路脇にある『レッドドラッカー』の扉を潜った。

「よお、悪いなドモン。遅れたか」

「いえ。先に飲ってましたから。サイ、君も忙しいですねえ」

 サイは赤毛の頭に乗せていたハンチング帽とコートをとり、ドモンが座っている向かいの椅子にかけて、そこに座った。無愛想なウエイトレスが配膳に通りすがったので、ビールを注文し、ストライプ柄のスーツのジャケット裏から安タバコ──ラッキーストライカーを取り出して火を点け、口に咥えて吹かす。

「貧乏暇無しだよ。……お前、なんか普段より目の下の隈濃くないか? 疲れてんじゃないのか」

 ドモンは運ばれてきた瓶ビールをサイに渡すと、カチンと瓶を軽く当てて乾杯の意を示してからぐいと呷った。

「最近、テレビゲームを買いましてね。初めてやりましたが、なかなか面白くって夜ふかししちまいまして……」

 ボサボサの黒髪に、同じ色のジャケット、白いタートルネックにこれまた黒いジーンズ姿。炭で塗ったような濃い隈を目の下に作って、普段から具合の悪そうな風貌が輪をかけて具合が悪そうだ。

「まあ、体調には気をつけろよ。それよりドモン、お前今回の仕事は結構続いてるみたいじゃねえか。感心だよ感心」

 サイがそう言ってタバコの灰を落とし、ビールを煽ると──視界に再び捉えたドモンの目──闇色の光の見えない黒々とした瞳の中に、どこか申し訳ないといった感情が見え隠れした。まさか。

「……まさか、またか?」

「また、です。すいません」

「おい嘘だろ……清掃会社だぞ。正社員で突っ込んだんだぞ。どうやったらクビになるんだよ!?」

「いやあ、実は……今回はついてないと言うか、偶然に偶然が重なったというか……掃除自体は問題なくこなしていたとは思うんですがね。ほら、あの会社オフィスビルの清掃がメインじゃないですか?」

「……そうだな」

「で、たまたまオフィスが休みの日の清掃をやる機会がありまして。いつもなら二人以上でやるんですが、その日に限って一人でやれと。で、なんというか……鉢合わせちゃったんですよねえ」

「……聞くのが恐ろしいが、なにとだ?」

「泥棒ですよ。相手はナイフも持ってましてね。二言目には殺すなんていい出しまして……」

 それ以上の言葉は続かず、サイもまた必要としていなかった。何が起こったのか火を見るより明らかだからだ。

 殺してしまったのだ。

 ドモンは元々引退を公言する殺し屋だったが、人がそう簡単に生き方を変えられぬのと同じように、ドモンもまた殺し屋として過ごした年月が長すぎた。どうにかカタギの仕事を回してやろうとサイは四苦八苦しているのだが、大抵こうして彼自身が台無しにして終わってしまう。

 ドモンはドモンで、そんな自分に腹が立つやら情けないやらで、こうして申し訳無さそうにしている。

 殺した人間はどこに行ったのか──それは誰にもわからない。この奇妙な街で切った張ったをやって生き残った彼だ。毎度こちらで調べようとしてもわからないくらい高精度のカモフラージュを行っている──らしい。

 わからないようにしているのだから、多分君には関係ありませんよ。

 紆余曲折経て友人となった彼の精神構造には、未だに薄ら寒い『人外』めいたものが強固に構成されている。

 とはいえ、彼も人間だ。

 仕事が無ければ食えないし、殺し屋はもうしたくないという気持ちは確かなのだ。

「じゃあ、たまには取材に付き合ってもらうか」

「……また妙な事件じゃないでしょうね」

 ドモンは警戒するように、静かに切り出した。無理もないことだ。サイもサイで、新聞記者の割にとんでもない事件──それも犯罪より超常現象のほうが多いという、特殊な体質の持ち主だ。こうして彼が持ち込む案件は、ワケのわからないものが多く、一歩間違えばサイの命を左右するものばかりなのだ。

 当然、それに付き合うドモンも一蓮托生──彼を見捨てることなどできないのだった。

「まあ、悪趣味なのは間違いないな。最近連続してる『連続複雑骨折事件』、知ってるか?」

「ああ、ニュースで見ましたよ。変な事件ですよねえ?」

 一週間前から、オールドハイト市の各地で妙な事件が連続していた。文字通り、人体が突然複雑骨折する、というものだ。既に五人が犠牲者になっている──が、おかしな点はここではない。

 明らかに人体構造上致命的なダメージを受けたはずなのに、全員命は無事だったのだ。正確には『全身に骨折部位があるが、それ以外に異常がない』。目撃者や生存者によれば、足が肩の位置まで捻れたが、一時間もしないうちにもとに戻ったのだ、という。

「この事件、警察は事故の一点張りで、捜査するつもりがないらしい。でだ。実は入院してる被害者に話を聞いてきたんだが、妙な一致があってな……全員同じ人間を見かけてるんだ。これは俺のスケッチだ」

 サイはそう言うと、床においていたビジネスバッグから書類フォルダを出して、そこから一枚の絵を取り出した。

 垂れ目の頭髪の薄い、下がり眉をした髭面の男──冴えない風貌だが、どこかで見たことがあるような気がする、なんとも不思議な顔の男だ。ドモンは絵から顔をあげると、サイと顔を見合わせた。

「ずいぶん絵が上手いんですね君は」

「紙面のカットが足らない時に結構役に立つんだよ」

「で。……まさか探しに行くんじゃないでしょうね、この男を?」

「そうだが?」

 ドモンは思わず眉間を指で押し上げた。どう考えても危険な気がしてならない。しかしこういい出したからには、止まらないだろう。彼の社会正義は、自分の命を粗末にするとかしないとか、そういうところでは決まっていないのだ。

「ギャラはどうなります?」

「編集長から既に確約もらってる。こいつが骨折事件に絡んでると分かって、正体も分かったらボーナス金一封千ドルだと。今回はそいつを山分けでどうだ」

 なるほど、口に糊するくらいにならなりそうだ。ドモンはビールを煽ってから、指を一本立てて言った。

「条件がひとつ」

「なんだよ?」

「個人的に更に五百ドル貸してくれませんか。そうすればアパート追い出されないし、飢えずに済みますから」



 東地区、アジアンストリート。

 人種のるつぼと呼ばれるオールドハイトでも尚更拍車がかかっているのはこの地域だ。エスニックな香りがそこかしこに漂い、英語以外の言語がネオンサインになって踊る。

「で、なんでアジアンストリートに?」

「骨折事件の発生区域はまっすぐ東に向かって連続で発生してる。で、ここが妙なんだが──発生区域もほぼ1キロ間隔なんだよな」

 前回セントラル・パーク内で発生した事件現場から東に1キロ離れてるのがこのアジアンストリートなのだった。

「そりゃなんだか妙ですが──とりあえず腹ごしらえでもしませんか。以前そこの店の肉まんがうまいって教えてもらいましてね。探すのはそれからでもいいでしょ」

「ま、そうだな」

 二人は駅入口からほど近い店──『HAO』と掲げられたネオンサインの下にある入口をくぐる。中には、中華風の制服を着込んだ若い女が直立不動でカウンターの中に立っていた。

「あのう、にく」

「いらっしゃい! うちの肉まんは絶品ですヨ! 一個3ドルネ!」

 食い気味にそう話す店員に、二人は少し違和感を覚える。しかし少々腹が減っているのには抗えない。

「じゃあ二つ」

「ありがとうございました!」

 お礼を言い終わるか言い終わらないかのうちに、暖かい肉まんがすぐにカウンターの下から取り出され、供された。

 ちょっとまて。せっかくだから話を聞いてみるか。背中を向けていたのを再び店員に向かい直って、サイはスケッチの写真をスマホで呼び出して、見せながら言った。

「すまない、店員さん。この男なんだが──」

「いらっしゃい! うちの肉まんは絶品ですヨ! 一個3ドルネ!」

「いや肉まんは今買ったろ。この男を知ってるか聞きたいんだが」

 女は笑ったまま直立不動のままで、微動だにしない。声も発しない。ただ虚しく時間が流れていくだけだ。

 妙だ。もう一度話を聞こうとサイは口を開こうとするが、ドモンがそれを遮るように肩を叩いた。

「出ましょう。知らないみたいですから」

 サイは首を傾げながら出口へと向かい、外へと出た。絶叫に近いくらいの声量で、女の声が響いた。

「ありがとうございました!」

 肉まんを齧る。なんだかすぐに力が湧いてきそうなくらい美味い。二人は無言で歩いていたがふと立ち止まり、同時に肉まんを飲み込むと顔を見合わせた。

「変な店員さんだったな? 肉まんは美味かったけど」

「ですよねえ? 実は一回行ったこともあるんですが、あんな接客じゃなかったような気がするんですけどねえ……」

 行き交う人々はまばらだが、その喧騒はいつもどおりだ。サイはあたりを見回す。雲一つ無いいい天気だし、さして変わったところは見受けられない。

「……ま、気を取り直してやりましょうか。何から始めます?」

「まずは聞き込みだな。アジアンストリートも、そこそこ治安がよくない区域だ。警戒はお前が頼りになるから、よろしくな」

「わかりました。そういうことなら、まずは一番人がいるところを目指すべきでしょうね。少しストリートを外れますが、ここを出て西に大回りして、中央に向かったほうが良さそうです。さっきの肉まん屋の脇から行きましょう」

 ドモンがそういうのへ、サイも同意し、人々をすり抜けて『HAO』の前へ。そこからストリートの外へと歩みを進めようとした。

「……サイ、君なんで足踏みなんかしてるんです?」

 HAOの隣のテナント、その境目に位置するマンホールの上で、サイは右足を踏み出していた。

「……何言ってんだ?」

 振り返ってドモンが怪訝そうな顔をしているのを見て、首を傾げる。たった今足を踏み出したところなのに、足踏みも何も無い。

「いやだから、その先ですよ。マンホールの上で足踏みしても仕方ないでしょう」

「はあ? だから先に行くつもりだよ。ほら」

 大股になってマンホールを越えようとすると、その中央に足を着地させている。右足。左足。何度やっても同じだ。

 足を踏み出しているのに、同じところに足が着地している。

「君らしくないですよ、おフザケなんて」

「フザケてない。断じてだ。なんだこれ? ドモン、お前もやってみろよ」

 そう言われれば、いつもならやれやれ言いながらやりそうなドモンが、今日に限っては動かなかった。彼の目が鋭く、虚無を宿した黒い瞳が何らかの異常を感知したようだった。

「僕もフザケちゃいないんですが──動けません」

「何?」

「正確には脳から指令が確かに行ってるんですが、途中で途切れちまう感じです。僕はそこに行けない。後数歩なのにです」

 なにかヤバい。

 毛穴から汗が吹き出したような気がして、サイは自分たちが乗ってきた地下鉄の駅への階段を見つけ、そこへと駆け出した。

 そこには、チェーンがかかっていた。階段の奥は黒で塗りつぶしたように深く暗い闇で覆われており──何より、サイはそのチェーンに触れられもしないのだ。

 脳がそれを乗り越えろ、という命令を拒否している。ならばと道路側に向き直り、山程走っているタクシーに対して必死に声をかけた。

「止まってくれ! 頼む!!」

 普段は出さないほどの大きな声も、虚しく行き交う車の喧騒へと吸い込まれていく。道路に飛び出してでも止めてやろう、という命令もまた、脳の中で消えていく。

「ヤバい。なんかヤバいぞ」

「ええ、これは──閉じ込められてるんですよ、僕らは! このアジアンストリートの中に!」

 人々の喧騒、エスニックな香り、色とりどりのネオンサイン。町並みのすべてがずれているような気がして、違和感を覚え始める。

「どうする。どうやったらここから出られると思う、ドモン」

「まずは『ルール』です。ルールを確認する必要があるでしょうね」

 ドモンはうんざりした様子で、静かに言った。事実うんざりしてしまっているのだ。

 この異常な街には、異常な人間、物事がサブスクの新着映画みたいに出てきては消えていく。そこに共通点はない──と思われがちだが、あるにはある。

 どんな異常な物事にもルールがある。それを踏み外せば死ぬ。

 このストリートは絶対に異常だ。それに、アジアンストリート自体がこのような異常空間ではなかったことを、二人は経験から知っている。

「となると、誰かがアジアンストリートを封鎖しちまったってことか?」

 サイは思わず、いつも吸っている安タバコ──ラッキーストライカーを取り出して咥えていた。火を点ける気にもなれなかったが、落ち着かない。

「可能性は高いと思いますが……ストリートをまるまる一本封鎖するなんてありえませんよ。いくらなんでも大規模すぎます」

 ドモンは停めてあったトラックの荷台に手を掛けようとした──が、妙なことが起こった。

「えっ?」

 彼の体勢がまるでバランスを崩したみたいに、思い切り傾いたのだ。原因はサイの目から見て明らかだった。

「おい、ドモン。そのトラック変じゃないか? なんで地面にタイヤが埋まってるんだ!? 液状化でもしてんのかよこのストリートは?」

 ケーキに指を沈めるみたいに、トラックが傾きタイヤが埋まっていく。考えられないことだった。ではこのストリートに立っている自分たちは一体なんだというのか。

「あまりモノに触れないほうが良さそうです。……しかしなんなんでしょうね、この状況。何だか見覚えがあるんですけどね……」

 手を離したドモンは、そのまま歩きつつ唸り、こめかみを指で叩き記憶を深堀りしようとする。先程のトラックは埋まったまま妙にガタガタと小刻みに震えていた。

「そう、このトラックもなんか……」

「トラックに見覚えがあっても仕方ないだろ」

「いえ、そうではなくてですね」

 と言いつつ、やはり首をひねる。喉まで出かかっている。ドモンは自分が『この異常』を見たことがあるのを確信した。

 その時であった。

 ガタガタと小刻みに震えていたトラックが、通行人の男性に僅かに触れた。途端にその男性は『頭の位置だけそのままで』、全身の手足がすべてありえない方向に曲がり、バキボキと骨が砕ける音を辺りに撒き散らしたのだ。

 今まさに謎の複雑骨折を目撃した二人は茫然自失とそれを見つめるばかりだったが、奇妙だったのはそこからだった。

 その男は、何事もなかったかのようにゆっくりと浮遊したまま移動しはじめたのだ。

「ちょ、ちょっと待っ……」

「触るな◎」

 深い海を思わせるような、落ち着いた声だった。サイはその奇妙な骨折者の肩へ手を置こうとしていたところだったのを止めることができた。

 振り向いた先にいた男もまた、奇妙だった。垂れ目の頭髪の薄い、下がり眉をした髭面の男。革ジャンに白いシャツ、ジーンズというラフな格好だ。足元は、地面に足首より上まで埋まっていたので伺いしれなかった。

「触るな。『それ』はあんたらが触っていいものじゃない。あんたらが触れば、全身がプレッツェルみたいに砕けるぜ。理解したか? ならクールだ◎」

 最初に声を上げたのは、ドモンであった。ようやく記憶が繋がったのだ。

「思い出した! あんた『グラント・セイフティズ』のキール・カールズじゃないですか!」

「なんだよそれ?」

「あ〜、そういや君、ゲームはあんまやらないんでしたっけ? でもホラあの……動画アプリの実況とかでもよく見るでしょ、彼の作品の動画!」

「おれはああいうのは控えてるんだよ!

 以前動画配信で恐ろしい目にあってから、あの手のアプリは全部消してしまった。それが今回に限ってはマイナスだ。

 髭面の男は構わず、なぜかサイの肩を組んでキザったらしく話を続けた。

「おいおい、クールじゃねえな。まあ落ち着きな。お前らは結構ヤバい状況なんだぜ?◎」

「はあ?」

 キールが掌を顔の前で上に向けると、彼の眼の前でドーナツ型のホログラフのようなものが展開されて、勝手に光り始めた。

「まあイッパイ飲めよ◎」

 彼の掌には見たことのないブランドのコーラが載っていた。それもキンキンに冷えていて、雫まで落ちている。

「……あんた、今何やったんだ?」

「まだわからんかね。相棒くんはどうだ?◎」

「検討はつきます。サイ、君にも分かるように言いますが、さっきのはゲームと同じです。アイテムウィンドウを使ったんですよ」

「は?」

 何も理解できなかった。サイもそれなりにゲームをやったことはあるが、それも昔の話だ。最近のゲームには疎い。

「全然わからん。噛み砕いて説明してくれ」

「おいおいまだわかんねえのか? しかたねえ、もっとわかりやすくしてやる。このストリートは、ゲームの世界になったんだ◎」

「『グラント・セイフティズ』は、所謂オープンワールドゲームなんです。正確には、ミッションをクリアすると行ける場所が増えるサンドボックスゲームってやつですが」

「あー……続けてくれ」

「このゲームの特徴は、実在の街を舞台にしてるところなんです。シリーズ最新作の6……っつっても、もう八年前くらいでしたけど、オールドハイトが舞台になったんですよ」

 なぜかキールはドモンの講釈を痛く気に入ったようで、うんうんと頷いていた。しかしそれでもサイには理解しかねた。肝心な疑問は解決していないからだ。

「いや、だからなんなんだよ。なんでそのゲームの主人公が俺達の前にいるんだ?」

「簡単なこった。お前らはおれの作品の世界に閉じ込められたんだ。それもかなりヤバい設定でな。全くクールじゃねえ◎」

 設定。ゲームの登場人物に言われるとなんだか余計に不安に感じて、サイはその続きを促した。

「グラント・セイフティズはただのゲームじゃねえ。俺がその証だ。お前ら、並行世界についてはどうだ?◎」

「ああ、そういう映画はよく見る」

 いくつかタイトルが思い浮かんだが、今ここでそれをひけらかすのは違うだろう。

「ならわかるだろ。グラント・セイフティズは、『俺という人間を観測する』並行世界を覗くためのツールなんだよ◎」

「なんかデカイ話になってきましたね」

 その時だった。世界が止まった。

 雲が止まり、人が止まり──あらゆる音と匂いと──とにかく全てが止まった。おかしかったのは、それでもサイとドモンの二人、そしてキールの時間は止まらなかったことだ。

「俺という人間は観測者によって、グラント・セイフティズ側に用意されたシナリオの枠内で動く。今俺という人間が死んだらそれまで。別のキール・カールズがそれを引き継いでいく。どうだい、クールだろ◎」

「ちょっと待てよ。じゃあお前はなんなんだ。その理屈なら、あんたらはこの世界の全てを知ってるとでも言うつもりか?」

「そりゃそうだろ。シェイクスピア観たことねえのか? この世は舞台、男も女も役者だ。当たり前だろ。……まあ舞台上でそういうネタバラシをするのは御法度だがな。理由がある。それが、あんたらを引き止めた理由だよ◎」

 キールは、時が止まった中──『この街を自由に楽しもう』と記載されたメッセージウィンドウを押しのけながら、震えていたトラックを指さした。

「この世界にも物理法則ってもんがある。黒髪の兄ちゃん、わかるだろ?◎」

「ドモンです。あっちの赤毛はサイ。……確かに、グラセイの世界じゃ常識でしたね」

「どういう意味だ?」

「このゲームには物理エンジンってのが使われてるんです。要は、僕らの世界の物理法則を再現するソフトのことですね。で、グラセフのそれはなんというか……バグが多いんですよ」

 バグ。文字通りの虫の話ではなく、いわゆるコンピュータ上の誤動作のことだろうと、サイはあたりをつけた。

「……なんか話がわかってきたぞ。このトラックがバグったみたいなことが、人間にも起こるっていいたいのか」

「クールだぜ、サイ。その通りさ。要は並行世界がバグって、俺達の世界とお前らの世界が重なっちまったってわけだ◎」

 時間がまた動き出した。メッセージウィンドウは消えて、また先程までの喧騒を世界が取り戻す。サイもドモンも、困惑する他無い。世界がバグって重なる。理屈はわかるがそんな事が起こるなんて、到底信じられなかった。

「俺は『ヤツ』を追ってここまで来た。もう五回もとり逃してるが、今日で最後だ◎」

「ヤツって誰です?」

「決まってんだろ。バグの温床──『グリッチマン』さ◎」



 グリッチマンは、キール・カールズの残骸だという。彼が死ぬと、墓場から蘇る──という演出が計画されていたが、6ではボツになり、そのテクスチャと何らかのアセットが組み合わさって完成した『没データ』。

「やつの名前は叙ン◎」

 キールはストリートを連れ立って歩きながら、全く聞き取れない言語でそう言った。なぜか聞き取れないのに頭で理解できるのが不思議だった。

「叙ンねえ……あんたと同じ顔ならすぐ見つかりそうなもんだが」

「まあな◎」

「それにしても、ストリートの皆さんは一体どうなったんです? どうもフラフラしてるだけに見えるんですが」

 人々はもはや自我を持たずにふらつくおもちゃのように、喧騒を再現するための道具になっている。後付されたような喧騒の音が不気味に感じて、ドモンは忙しなくあたりを見回していた。

「ただプログラムされたとおりに動くNPCになっちまってるのさ。それが叙ンのやり方だからな。あんたらは偶然その網から漏れた。俺はあんたらに接触することにした……◎」

「なるほどな。それで、叙ンは一体何をするつもりなんだ?」

「叙ンの中身は俺と殆ど変わらん。やろうとすることも検討がつくさ。グラセイ6のストーリー最終ミッションはここが舞台でな。まさにこのストリートを、敵の大群を蹴散らして進む。そうするとエンディングに突入する◎」

 エンディング。映画であれば、エンドロールが流れて終了といったところだろう。サイは自答してすぐに、それに違和感を覚える。

「エンドロールを迎えたらどうなる?」

「終わりだよ◎」

「終わりって、何がです?」

「決まってんだろう。世界が終わるのさ。ゲーム機やPCの電源を落とすみたいに、ぷっつり全てが『切れる』◎」

 蟻が背中に登ってくるように、ぞぞ、と悪寒が二人を襲った。世界が終わる。単純な生死ですらなく、この世の全てが消滅するなんて、いくらなんでも想像がつかない。

「気分が悪くなってきた……」

「じゃあ、叙ンを止めるにはどうすればいいんです?」

「そいつはクールな質問だ。なあに簡単だ。バグであるヤツが通常通りに俺をなぞるから、エンディング後の世界が来なくなるんだ。逆にいえば、この世界をバグらせて再起動させれば、叙ンも俺も、このストリートの異常も無かったことになる◎」

 世界をバグらせる、と言っても、現実世界に住むサイやドモンにとってはあまりにもかけ離れた表現過ぎた。バグとは予期せぬ挙動の異常を指す。それを人間である自分たちが起こすなんて。

「俺はゲームキャラクターだ。世界の法則をなぞることしかできない。お前達の力が必要だ◎」

「はあ」

「例えば、そこの店の鉢植えに草が生えてるだろう◎」

 サイはその鉢植えをしゃがみこんで観察する。独特の匂いが漂ってくるのを感じて、記憶の中から植物の名前を検索した。

「……パクチーだな」

「よし。サイ、それ食え◎」

「は?」

「食うんだよ。直接。手を使うなよ◎」

 キールが真剣な面持ちなのを見て、サイは察してしまった。これは、やらないと終われない。

 意を決して、彼はパクチーを直接口を開けて噛みつき、そのままむしゃむしゃと口へ運んだ。独特という単語が直接口にねじ込まれているような味と匂い。それを我慢して立ち上がると、空が市松模様に色が変わっている。

 こんなことで世界に影響が及んでいる。

「……これ、バグってんですかね?」

「クールだぜ。ドモン、お前もなんかやってみろよ◎」

 ドモンはあたりを見回して、八百屋の隣に輸入家電の店を見つけ、その店頭に陳列されていたドライヤーを手にとってみた。キールはそれを見て、少しだけ笑みを浮かべていった。

「八百屋にブロッコリーがあるだろ?◎」

「はあ、ありますが……」

「かけてみろ◎」

「……何をです?」

「ドライヤーをだよ。スイッチ入れてみな」

 言われたとおりにオンすると、電源が繋がっていないドライヤーが動き始め、温風を吹き出し始めた。ブロッコリーはその風に揺られている。

 ドモンが振り向くと、壁の色が全てどどめ色に置き換わっていた。


スキップ ◎


 キールに言われるがまま、ふたりは普段だったらしないようなことまで色々やった。ストリートの自販機のコイン投入口のスリットに延々とギャグを放つと歩いている人々が十字架の形になったままふわふわ浮かび始めた。ものすごく躊躇しながら二人で情熱的なハグをしたら、視界にスキップ◎。

「一体どこまでやれば気が済むんだよ……?」

「わかりません。……というか、キールはどこに行ったんです?」

 二人が気付いたときには、世界は更にバグっていた。

 ドモンもサイも、泥に突っ込んだみたいに足首が地面にめり込んでいる。何個目のバグ誘発行動だったのだろうか。それも覚えていない。

 今やストリートは人々が十字架姿で空を飛んで行き交い、あらゆる構築物の色は極彩色に変わった。正しく世界はバグっている。

 しかし、世界が再起動する、なんて大層なことが起こりそうな気配は一向に見えなかった。

「……なあ、ドモン。あんまり考えたくないんだが」

「ええ。……担がれたのかもしれません。世界は確かにバグってる。それは間違いありません。でも僕らは肝心の『再起動のやり方』を教わってない。もう何時です?」

 サイはスマホを取り出して時間を確認する。時刻はすでに、十六時になっスキップ◎


「あとたまに視界の端っこに出るスキップってなんだこれ?」

 視界に出たそれに集中すると、なぜか末尾のリングがぐるりとまわって色づいていく。ドモンは異変を感じたのか肩を叩くと、リングが止まった。

「……君、もしかしてスキップって出るたびになんかやってません?」

「なんかっつっても、それに集中するっていうか……意識を向けてるだけだが」

「ちなみに、今何時です?」

「十六時だろ? 画面見たばっかりだ」

 もう一度スマホに目を落とすと、既に時刻は夜中の二十三時になっていた。

「は?」

 確かに先程画面に目を向けたときは、十六時だった。周りがバグっているのと、このスキップのせいでうまく感覚が掴めていなかったが、明らかに時間が飛んでいる。おかしい。キールの姿は見えない。今なお時間は飛ばされていっている。

「おいおい……これじゃ明日になっちまうぞ。零時超えちまう」

 サイがぼやくのへ、ドモンはバグった料理店の軒先に設置されていたアナログ時計をじっと見つめていた。眉間に皺を寄せて、何か思い出そうとこめかみを押し上げている。

 そして、彼は思い出した。

「……最終ミッションですよ!」

「いきなりなんだよ」

「最終ミッションです! キールは、アジアンストリート中央広場で深夜零時に宿敵と決闘するんですよ! やばいです!」

「エンディングが来ちまうってことか!?」

「このゲームの最終ミッションは時間制限があるんです。『零時になったら自動的にクリア扱いになって』、エンディングに突入するんですよ!」

 既に夜はどこかへ去っていってしまった。月も太陽も出ていないのにどこまでも真っ白な空が続き、建物は不規則な形に組み変わっていく。辛うじて方向はわかる。世界がこんなことで終わるなんて、全くクールではない。



 中央広場に近づく度に、地面に半分埋まっている車やゴミ箱、街灯が増えていく。二人の背後では、世界が巨大な闇に侵食されつつあった。

 理屈はわからないが、直感はある。バグに侵食された結果、世界そのものが存在し得なくなっているのだ。

「もうすぐです!」

 広場の周囲はもう現実と同じところを探すほうが難しかった。車が地面から生えるように埋まっていたり、人々が十字型のポーズを取ったまま空を飛んでいたり、ありとあらゆるストリートのモノが、風もないのに得体のしれない力で巻き上がって渦を巻く。

 なるほど、世界の終わりを予感させた。その中央にいるのは、キールだ。

「おい、見ろ!」

 サイが指差す先には、確かに彼らしき人物が立っている。しかしその姿は『バグ』としか言いようがなかった。彼の顔はもはやカクカクとした多面体で構成されており、そのいくつかは剥がれ落ちて意味を成していない。

「待たせたな! ブリード!◎」

「誰だよそいつは」

「キールの宿敵です。まずいな……エンディングが始まってるみたいです」

 キールは──キールだったものは、表情を失い、地面に足が埋まったまま、突然指を広げた。サイの時間間隔ではついさっき──彼がアイテムウィンドウを開いた時と同じく、世界が灰色に止まる。メッセージウィンドウには『最後の戦いだ!』の文字と、名前欄には『叙ン』。

 灰色の世界が極彩色を取り戻し、再びあらゆるものが渦を巻いて巻き上がる。サイは周りを見渡し、足元がミルクに浸したクッキーみたいに崩れているのを見た。途端に彼もそれに足を取られ、身体が底へ引きずられる。

「うおおっ!」

「サイ! 大丈夫ですか!?」

 彼は世界の『端』になんとか手を引っ掛けてぶら下がっていた。地面は崩れ、虚空としか言いようのない『白』がその眼下に広がっている。世界が消滅する前に、自分が存在しなくなる──そんな直感がサイの脳裏をよぎった。

「ドモン、俺はいい! 叙ンを止めろ! 世界が終わる前になんとかするんだ!」

「……分かりました」

 ドモンはどこか他人事に感じられるほど冷静にそう言うと、ずいと一歩──沼の中を歩くが如く埋まった足で地面を掻き分けながら、叙ンの前へと踏み出した。

「こうなったらタイマンです。キールと──いや叙ンと決着つけてやりますよ」

 そういうと、真剣な面持ちで叙ンを睨みつける。頼もしい。殺すという一点において、これほど頼りになる人間もいないだろう。

「どうする気だ!?」

 サイは上半身をなんとか乗り出すが、そこまでだった。これ以上動けば地面ごと崩れてしまうかもしれない。

「キールは、宿敵ブリードと夜の広場でロシアン・ルーレットをやるんです。簡単な話、それに勝てばいい」

 崩れていく世界。そして叙ン。彼もまた終わりを感じ取っているのか、銃──らしきものを差し出した。ドモンは迷いなくそれを取る。

 グラセイ6のエンディングムービーは、カメラが二人から外れて深夜零時に銃声が響き渡るところで終わっている。キールも、ブリードも、生死不明のままだ。

 つまり、深夜零時までにロシアン・ルーレットで勝てば、間違いなくエンディングにはならない。

「ちょっと待て! いくらなんでも、分が悪すぎる!」

「分が悪くてもやるしかないでしょう?」

 振り向きざまにそう笑う彼は、どこかサイの目には寂しげに見えた。

「ルールは知っているな◎」

 叙ンは対照的に生き生きとした口調でそう言った。

「知らない人がいるとも思えませんが」

「そうか。なら先に引け。弾が出なければお前の勝ち◎」

「僕が死んだらあんたの勝ち。世界はエンドロールに突入する。わかりやすくてありがたいですねえ、涙が出てきますよ。ひとつ聞いてもいいですか」

 スマホの時刻は二十三時五十五分。世界の終わりはもうすぐだ。悠長にしている暇はないのに、一体何を聞くつもりだろう。サイはそれが打開策になるように祈りながら、親友の話を聞いていた。

「いいだろう」

「あんたはいつから叙ンだったんです? 僕らと出会ったときからそうだったんですか?」

「この世界は創造主が観測する架空の世界だ。おれは彼によって『世界を楽しめ』と言われた。キール・カールズは俺だし、創造主がそうあれと言えば逆もしかりだ。はじめからキール・カールズと叙ンに境目など無い◎」

 グリップを握る手が湿る。ドモンは迷っていた。相手を殺せば全てが解決する世界で生きてきた彼にとって初めての『殺しても解決しないかもしれない』対決だった。

「……俺も問おう。もしお前も同じであればどうする? 他者から観測され、用意されたシナリオでしか動けない存在だったら? お前は一度たりとも『世界を楽しんだことがなかった』としたら、お前はどうする◎」

 白い闇がすぐ後ろまで迫っている。世界の端がボロボロとくずれていって、この世界が観測できるのは今この広場の中だけだ。

 ドモンは笑みを溢して、もはやテクスチャが剥がれ落ちそうな銃を前に構える。視線の先には、外見も崩れて格子状の人影に成り果てている叙ンの姿。

「さあ、どうでしょう?」

 トリガーを絞る。銃口から虹色のテクスチャの破片が散らばって、何かが叙ンの身体を捉えた。

「僕にとっての世界のルールは、命あるものは銃で撃たれたら死ぬ──それだけです」

 世界が白に飲み込まれていく。叙ンに空いた風穴から風が渦を巻いて全てを巻き込んでいく。視界が閃光と共に空白になって、そして暗転した。


スキップ ◎


 気づくと二人はレッドドラッカーのいつもの席に腰掛けて、冷えたビールが載ったテーブルの前でお互いの顔を見合わせていた。

 同時にスマホを取り出して時刻表示を見ると、昨日の時刻──それもちょうどサイがやってきた頃の時刻であった。

 信じられないが、理解する他無い。時間が巻き戻っている。

「……お前も記憶あるか?」

「あります。君もですか」

「ああ。ドモン、お前がじ……なんかうまく発音できないな。キールを撃ったことでエンディング条件がバグって『世界が再起動』したってことか?」

 ドモンはビール瓶を引き寄せ、口をつけて呷った。驚いたことにそれはまだ冷えていた。本当に時間が巻き戻っているのだ。

「ヒントはキールが出してましたからね。要はエンドロールに行かなければいい──つまりキールにとってのゲームオーバーになればいいと思ったんです。……さて、世界が再起動したってことは、君はまたあの事件を追うことができるってことですが」

 うんざりしたようにサイは手をひらひら振った。こんなの、記事にもできやしない。確かに社会正義は大事だが、取材しない自由だって記者は持っている。

「……やめとく。ドモン、しばらくうちに泊まれよ。バイトは新しいの見つけてやるから。編集長には詫びをいれるさ」

「それなら良かった。ところで……キールは妙なことを言ってましたね」

「妙?」

「僕らが他者から観測される存在だったらどうするって。……僕らなんて観察しても面白くもなんとも無いでしょうに」

 ドモンはそう言うと、店のガラス越しに夜の十字路にきらめくヘッドライトを見つめていた。サイもまた同じように外をみつめていたが、ふと口を開いた。

「出演料を弾んで貰えるなら、考えてもいいな」

「それは違いありませんね」

 二人の男が窓の中で笑う。行き交う人々はそれを気にも留めず、夜の街を彷徨う。彼らにとっての普通の夜が、静かに過ぎていく。


グリッチマン 終














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明日のパルプアドベントカレンダー2023はとうとう大トリ。
素浪汰 狩人さんの魔女と黒雪姫と冬の燕をお送りします。
良いクリスマスイヴを!