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逆噴射小説大賞2024ライナーノーツ
逆噴射小説大賞。
ニンジャスレイヤーでゆうめいなダイハードテイルズ主催の、2019年から続くいわゆる『小説の書き出し』の面白さを競う唯一無二のコンテストである。
おれは文筆を趣味として一応二十年選手になるので、言ってみればロートルに近いわけだけど、このコンテストの盛況にはいつも驚かされる。読む側、書く側の熱量はどんなコンテストより高いだろう。
だからこそ、これまでは必要最低限『参加することに意義がある!』ということで、こういうライナーノーツというのは書いてこなかった。なんかギャグを解説するのは恥ずかしいからな、とか思ってたのだが、ここ数年見ていると「なんやみんな普通に解説を書いてるな……」と感じたので、書くことにした。続きを書くかどうかは分からないにしろ、今回の作品はオチまで書けそうなやつだからだ。
人生売買人生
高柳総一郎作品にはいくつかのシェアワールドというかバースが存在していて、これまで一番よく書いてるのが『アメリカ合衆国グリーンウェル州オールドハイト市』だ。
V.Dもこの奇妙で何でもありの犯罪都市で暮らす『異能犯罪者』の1人で、『人生を抜く→レトロ→カセットテープ』という結構安易なアイデアから生まれた。
彼女は他人の人生を肉体から抜き取ることでそれを金に替えているが、一方でそれは中身を抜いた外見に何の意味も見出せない、というパーソナリティに繋がっていく。
なので、彼女は黒テープでビッグオーのシュバルツバルトよろしく肌を完全に覆っているのだ。
このあとは、抜かれたテープの男(忘れられないという記憶障害を持っている男。多趣味のエリート研究者)との逃亡劇が描かれる予定。
ちなみにタイトルは英語に直すと『Life(by)Life』と『Life(buy)Life』で掛かっていてオシャレ。
歌舞伎町オーバーボディ
去年完結した『ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!』の流れで、極道を書くのは楽しいなあ、となった高柳だったが、いろんな作品に触れる中でわかったことがあった。いわゆる任侠作品って大半の作品がエロとか美学のないDQNシーンを避けて通れないのだ。
それが嫌で女子高生にヤクザをやらせるというアイデアが生まれたわけだが、今回の作品はその亜種と言える。
つまりは極道のソウルだけがあればいい。肉体を失くした極道達はおそらく、性欲とか肉体に付随する欲を失って一番プリミティブな衝動である『暴力という名の欲望』に突き動かされてずっと殺し合っているはずだ。
鋼の錬金術師のアルフォンスよろしく、ゆるキャラ着ぐるみに魂を定着させられた極道達がひたすら暴力と極道としてのマウントを行い、シマ争いを続ける――それが今作の歌舞伎町だ。
いわば純粋な暴力装置と成り下がった極道を止めるために、同じ着ぐるみに身を包んだ潜入捜査官『ニャン吉』が、同じく箱根会の極道になった同僚(こちらはむしろ極道に感化され、箱根会二代目を目指す)と歌舞伎町――ひいては極道社会を奪い争う物語になる予定。
そんなこんなで今年も撃つものを撃ちこんだ。パルプスリンガーとして、やるべきことはした。
あとは天命に祈るのみ。
他のスリンガー達の幸運を祈る。
ではまたMEXICOの荒野で!