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#不良
ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!(39)
中学生の世羅伊織は、空手以外にあまり興味がない人間だった。
おしゃれもしないし、勉強も自主的にはしない。SNSなぞやってるヒマがない。そんな彼女が、ヒロシマ現代美術館にやってきたのは、夏休みの宿題で美術館の作品についての観察とその感想を述べるという、実に面倒なものがあったからだ。絵には殊更興味がなかった。空手をしないクラスメイトにも、同じく興味がなかった。
さっさとグルっと回って、明日の
ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!(38)
ヒロシマ市内のど真ん中に、堀で囲まれた天守閣を備えた城──ヒロシマ城がある。南側には神社があり、実際に通行できるのは東側にある橋だけだ。
「いいかい。蟻一匹ここを通しちゃならない。紙屋連合が狙ってくるとすれば今日だからね」
世羅は天神会下部組織から集めた人員に、発破をかける。小網会と長楽寺組は動かなかった。辛うじて、不動院は手打ちを望んでいるという真偽不明の情報を提供してきただけだ。
ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!(37)
「急に言われても困りますよ、不動院さん」
安奈は放課後、学校に乗り付けられたベンツの中で、困惑したようにそう言った。
「高子さんが言うならまだしも、あなたに言われても困ります」
「何故です? あなたも会長の姉妹分になったんですから、てっきり協力してくれるものだと思ってましたが」
天神会会長の白島を暗殺しろ──不動院を経由したその指令に、安奈は反発せざるを得なかった。
直接言ってくれ
ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!(36)
事始めリハーサルの日は着々と近づいてきている。それを示すように、ヒロシマは荒れていた。
紙屋連合の下位組織が、天神会によって襲撃されるようになったのだ。
事務所のガラス割りや、小さなシノギへの介入──はたまた、下校中のこくどうへの襲撃など、攻撃の種類も多岐にわたった。
サンメン上でも、天神会かそうでないかを問わず、あらゆるこくどうたちが、ヒロシマの空気がピリついてきているのを感じ取っていた
ヒロシマ女子高生任侠史・こくどうっ!(35)
「上島さん。日輪会長からお聞きしましたよ。姉妹になったとか」
病院から出た直後、安奈は不動院に呼び止められ、一緒のタクシーに乗ることになった。気まずい。紙屋連合になった経緯もよく知らないし、ましてや彼女とは話したことがない。
「えっと……そう、みたいです」
「すごいことですよ」
穏やかに──それでいて、歴戦のこくどうらしい意志の強さを感じさせる声で、不動院は続けた。
「我々は、天神会