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テントサウナ導入のススメ【2021】

2019年のちょうど今頃、テントサウナ購入のススメというnoteを執筆しました。「テントサウナのどのモデルが良い?」や「どんな薪を使ってる?」など、オーナーによる一次情報そのものが貴重だと思い、執筆したものです。

この頃のテントサウナ流通量は、日本全国で見ると数百台程度の市場規模。そして各地のテントサウナオーナー同士、お互い顔が見えていたような距離感でもありました。ほんの2年前のシチュエーションですが…。

湘南ひらつか太古の湯 グリーンサウナ。今でこそ珍しくなくなりましたが、温浴施設の屋外スペースにテントサウナを設置した先駆者でした。昨年惜しくも閉店してしまい、時代の変遷を感じずにはいられない出来事でした。

グラフ

これは前回記事のページビュー推移をまとめたグラフですが、2019年~翌年1月まではほぼ横ばいの状況でした。しかし2月に入ると数字が急変します。COVID-19の流行。以前の社会情勢がガラっと変わったのがこの頃です。

さらに2020年3月の緊急事態宣言発令が拍車をかけ、4月~6月のページビュー数が前年10倍以上に跳ね上がります。このとき筆者は宣伝施策等は行っておらず、この事象を外出自粛によるStay Homeが主な要因と判断しました。

Stay Homeによる在宅生活を余儀なくされ、大半の温浴施設がサウナ室自体をクローズしてしまいました。行き場を失ったサウナファンは自宅でととのう方法を自作するなど、三密を避けるためのサウナ入浴法を模索しました。

そういった時代背景と連動して、今日のテントサウナ需要は加速していったのではないかと考えています。日本のサウナ人口が増えたというよりも、いち利用者におけるプライベートサウナの需要が急増したという予測です。

前置きが長くなりましたが、「テントサウナは時代の流行り廃りに左右されうるもの」。これが2021年版noteでお伝えしたいことであり、ドラマで再度テントサウナが登場する今だからこそ、触れるべきテーマと考えました!

テントサウナの利用実態

筆者は前回記事をきっかけに、およそ数百名の導入相談を受けてきました。そして相談を受け続けてきた結果、テントサウナを検討する方々の悩みは概ね、以下の三点に集約されることがわかってきました。

✔ テントサウナの流通問題。欲しい時に、肝心の在庫が手元にない。
✔ テントサウナ設営時、必要となるアイテムの情報が不足している。
✔ テントサウナ実施時、どのようなリスクがあるのかが想像つかない。

まずテントサウナの流通問題について。以前まではテントサウナを海外から個人輸入するという選択肢もありましたが、最近では日本国内総代理店のルートが増え、海外からの個人輸入ルートは閉ざされるようになりました。

そして日本の総代理店に問い合わせると、入荷まで1ヶ月待ちはよくあるような状況。中には海外での税関手続きに時間を要するケースもあり、入荷に至るまで2ヶ月~半年ほどかかってしまうケースも発生している模様です。

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国内で引き合いが急増しているからこそ、上述のような問題が発生してしまっているのですが…。筆者の見立てとしてはそもそも、日本と海外との商文化ギャップが大きいのではないかと考えています。

海外のテントサウナメーカーは家族経営で成り立っている企業が多く、効率良く生産し、期限通りに納期を守るという日本の商文化とは前提が異なるということです。船舶であろうと空輸であろうと、この事実は変わりません。

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それと、至極当たり前なことを申し上げるのですが、海外産のテントサウナは、日本国のみに卸している訳ではないという事実を押さえておきたいところです。全世界に卸しているからこそ、在庫は枯渇しやすい市場なのです。

従って、ユーザー側では「テントサウナは流通量が少ない人気商品であるため、あらかじめ数ヶ月前から予約注文しておく」という前提を理解しておくことが重要になります。いや、本来は即納であるべきなんですけどね…。

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続いてよく聞かれた質問が、テントサウナ設営時のアイテムについてでした。こちらは「イスは何を購入したら良いのか?」「良い薪で何かおすすめない?」等、設営に最低限必要になるアイテムのことを指しています。

※テントサウナ本体の費用(15万円~)に対し、アイテムを揃えるための費用(数万円~)は不可避であるケースが多いため、テントサウナ運営のための総予算は、20万円~での予算組みが現実的なラインかと考えています。

この2年間の間に、テントサウナ初心者向けガイドのような情報が、もっと世に出回るのではないかと予測していました。が、意外にもその手のコンテンツが出てきていないため、今思いつく限りでのオススメを記載します。

まずイスですが、上述のアイテムを推します。テントサウナはそもそも足元が暖まりずらい構造なので、その弱点をベンチで補えます。高さのないイスだと、テントサウナの魅力半減と言っても過言ではありません。

薪に関してはこちらがオススメ。2年間で色々試しましたが、最もサウナストーブとの相性が良かったです。薪の選択一つで、テントサウナの熱の感じ方が断然変わりますからね。イスと共に絶対にこだわりたいポイントです。

余裕があれば、足元の断熱マットも検討したいところ。テントサウナは足元から空気が流れ込む構造になっているため、マットを導入するのも体験を変える一つの対策になります。※各モデルでシート取り扱い有無は要問合せ。

そしてこちらのストーンガードと天板はとても筋が良さそうです。当初はサウナストーンをストーブ全面に並べていたのですが、近頃は煙突周りのみで並べることが増えました。これだけでも全然気持ち良さが変わるので是非。

テントサウナ購入時は「あの川や海に飛び込めば最高…!」と水風呂のハード面を気にするケースが多いのですが、何度か体験を重ねたあとは、サウナ体験そのものをいかに気持ち良くできるかに視点を移したいところですね。

炭の処理に必須な火消し袋。残った炭はその場に埋めたりせず、火消し袋に投入して持ち帰るようにしましょう。耐火温度1000℃のため、炭はもちろん、なかなか冷えないサウナストーンの熱冷ましにも。※耐熱グローブ必須

サウナストーンに関しては、運搬前提なら20kgは不要かなと思っております。先のストーンガードとセットで、煙突周りにストーンを重ねたら10kgで十分。20kg級の運搬を繰り返していると、慢性的な腰痛を抱えかねません。

以上、テントサウナ体験をアップデート出来る、おすすめアイテムについて紹介して参りました。一酸化炭素チェッカー耐熱グローブ炭ばさみなどは必須アイテムになるので抜かりなく用意しましょう。

そして最後に、テントサウナ実施時のリスクについても取り上げていきます。こちらはテントサウナ購入時の説明書やガイドラインに記載されていない範囲で、ユーザーが盲点となりそうなポイントに絞ってまとめました。

✔ 風速を侮らない。テントサウナをロープとペグで四方八方固定しないと、テントそのものがダメージを受けてしまう。具体的にはポールが生地を突き破り、生地がサウナストーブに触れて熱で溶けてしまうケースも。
✔ 地面が斜めになっているところを設営場所にしない。ストーブおよびベンチがテント内で倒壊する恐れがあり、人的被害を生むリスクが高まる。
✔ テントサウナの常設はなるべく避ける。特に荒天時にテントサウナが転倒するリスクや、ストーブ内に燃え残った炭等の火災防止の観点で対応する。
※常設のダメージにより、テントの色落ちが目立つ事例も散見されます。

よくあるのがロープとペグの設置を面倒に感じ、テントのみを建ててしまうケース。ロープでしっかり引っ張らないと、生地がストーブに触れて燃えることがよくあるので、安全性の観点でもはじめからロープを張りましょう!

それと、紐をしっかり締めずに煙突と接触し、煙突カバーが燃えてしまうケースも散見されます。煙突カバーはしっかり固定しないと、ちょっとした風でも煙突に触れてしまいます。くれぐれも燃やさないようにしてください。

✔ サウナストーブ周辺の事故対策。可能であれば、サウナストーブ周辺にDIYでの防護柵を設営し、うっかりストーブに触れてしまうリスクを軽減。
✔ サウナストーブの変形リスク。ロウリュで過度に水をかけすぎたり、使用後に炭を放置することは避ける。足元のポールも乱暴に扱うと破損しがち。
✔ 煙突まわりのケア。テントサウナ実施後にススを残したままにしない。また、煙突カバーの紐はしっかりと閉め、煙突接触による火災防止に努める。
✔ 撤収時間には余裕を以て対応する。特に冬期は日が沈むのが早いため、視認性が確保されない中での撤収作業は、思わぬ火傷などのリスクが高まる。

ここまで利用実態に基づいた、テントサウナのリアルなお話を記載してきました。とはいえ、今のテントサウナ界隈の課題は、ユーザー側が不合理を被ってしまっているケースが圧倒的に多いと筆者は考えています。

購入初期から全てを完璧に遂行することは不可能に近い。だからこそ、自らの頭でモラルを考えるより、まずnoteやSNSで発信しているオーナー達を積極的に頼りましょう!テントサウナ持ってそうな身近な人でも良いです。

オーナー達は少なからず何かしらの苦労をされているはずで、その経験があるからこそ、皆さん優しく教えてくださると思います!(そこで生まれるサウナーの横のつながりも、きっと素敵なご縁となるはずです)

➀モデル別紹介 ~MORZH MAX~

さて、ここからは前回記事で取り上げたモデルの他に、いま日本で流通しているテントサウナの最新モデルを紹介していきます。MORZHは前回も取り上げましたが、今回はより大きいサイズの「MORZH MAX」を紹介します。

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MORZH MAXはMORZHの三層式生地はそのままに、より多くの人々がサウナを楽しむことができるよう、横に広い構造となっています。MORZHが2-3名程のキャパであるのに対し、MORZH MAXでは4名以上が入室可能です。

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MORZHは激熱とも言える程の熱さを誇る一方、空間が狭いために身体がテントに接触し、火傷リスクが高まるという短所がありました。しかしMORZH MAXの広さがあれば、そのリスクを大きく抑えることが出来ます。

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こちらがMORZH MAXの室内ですね。天井が高く横にも広いため、まるで温浴施設と遜色ない、リラックスした空間でサウナを楽しむことが出来ます。その点では、温浴施設に最も近い体験のテントサウナと言えるでしょう。

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またMORZH MAXの特徴として、中の仕切りをチャックで閉じることにより、前室を設けることができる点も見逃せません。こちらではオーナーが薪をくべたり、備品を使用するのに大変重宝するスペースとなるためです。

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MORZH MAXは煙突排気口が二つあり、サウナストーブを二台配置することが可能な構造になっていますが、熱さのみにこだわらず、オーナーの運営利便性を考慮しながら使用することで、真価を発揮することができそうです。

MORZHは得手不得手が激しく、オーナーの運営利便性を考慮するとMORZH MAXをオススメすることが多いですね。MORZH MAXの価格は253,000円(税込)のため、どちらかというと事業者向きのモデルかもしれません。

②モデル別紹介 ~EX-PRO~

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続いて2020年末頃に日本へ上陸した「EX-PRO」を紹介します。MORZHが日本で流通し始めたのが2019年末頃なので、およそ1年後に新しいモデルが登場するという流れが、現在のテントサウナ市場のトレンドになっています。

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EX-PROの室内は他のモデルより空間が広く、4名~6名でゆったりと入ることができるのが特徴です。さらにテント自体の設営撤収も容易で、わずか60秒で設置が完了します。初心者が選ぶにはオススメのモデルですかね。

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ただしEX-PROは、足元のブラックの生地がストーブに近いため、ちょっとしたことで燃えるリスクを抱えているのは気になりました。対策としては足元の生地を折り畳むなどして、ストーブから距離を置くことが求められます。

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EX-PROにはMORZH同様に、横長に広いタイプが存在します。こちらは神奈川県の温浴施設である、東名厚木健康センターに設置されているタイプですが、MORZH MAXに匹敵する程の空間の広さが目を引きました。

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MORZH MAXとほぼ同等の広さで、かつストーブが二台設置されている構造。三層式生地による熱さもさることながら、もはやテントサウナの次元を超え、施設型サウナの域に到達するのではないかという感想を持ちました。

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この記事の末尾でも取り上げますが、テントサウナ内に電気ストーブを設置するという新しい事例が出てきています。これまで薪を使用することが難しかった都市部などで、今後流行していくスタイルになるかもしれません。

③モデル別紹介 ~Terma~

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そしてMORZH、EX-PROに続き、今夏上陸予定のモデルが「Terma」になります。こちらはMobiba本社のメンバーがロシア国内で独立し、MobibaとMORZHの良さをそれぞれ取り入れたモデルになると聞いております。

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日本で主流となりつつある三層式生地であることを前提に、Mobibaの特徴であった半自動開閉ドアの仕組みが特徴とのこと。MORZHのジップアップは触ると火傷しそうになることが多く、安全性で評価に値すると考えます。

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「Terma」室内はこのようになっています。テント壁面に収納ケースがあり、MORZHとほぼ変わらない空間。そしてストーブはINTENTではなく、中で薪が燃えている様子が見えるALTAIというタイプが実装されるそうです。

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「Terma」のカラバリはグレーの他に、MORZHでみられるオールブラックとカモフラの展開になるとのこと。価格は150,700円(税込)で、MORZH(178,000円)やEX-PRO CUBE4(217,800円)よりも安価になるそうです。

以上がテントサウナの最新モデル紹介でした。ポイントとしては三層式生地が主流になりつつあることと、テントサウナの大型化が目立つようになったことですね。価格帯も販売事業者ごとで、少しずつ開きが出てきました。

テントサウナの新潮流

主に海外輸入を前提としたモデルを取り上げましたが、海外モデルはサイトをたどれば、本国での販売原価は安易に判別できますし、冒頭で申し上げたように、輸入環境含めた在庫課題がある状況は当面続くと考えています。

そんな中、新たな潮流として「国産テントサウナの登場」が今後予測されます。まずテントサウナのガワ、そしてストーブと段階を追う形になりますが、輸入前提のテントサウナ界隈に一石を投じることになりそうですね。

先月、まずはテントサウナのガワに関してのリリースがありました。昨今のトレンドである三層式生地を前提とした作りになっており、薪もしくは電気ストーブを拝借することで、従来のモデルと遜色ない体験が期待できます。

また日本各地で各領域の専門家が集い、テントサウナを製作~商品化に向けた動きも出ています。メーカーと連携した国産テントサウナ開発の噂が筆者にも届きますが、この流れが今後加速していくことは間違いないでしょう。

さらにストーブについても、従来とは一線を画するような商品もリリースされる見込みです。当面は実証実験段階とのことで、普及はもう少し先のようですが、バイオエタノール燃料の存在は新たな起爆剤になりそうです。

このあとの事例でも触れますが、家サウナを前提としたテントサウナ+ストーブを販売している事業者もありました。おそらくアルコール燃料を使用したものと思われますが、薪に代わるトレンドが生まれそうな兆しですね。

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情勢変化による在宅ニーズの増加で、自宅でのテントサウナ設置事例も出てきました。EX-PROの項でも取り上げましたが、煙が出る薪ではなく電気ストーブを導入し、市街地に配慮しながらととのうスタイルも登場しています。

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こちらが電気ストーブを設置したテントサウナの室内になります。煙突から火の粉を発する薪ストーブと異なり、火の粉でテントサウナを焼いてしまうリスクが少なくなるため、ガワを傷めないという観点では優秀と考えます。

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こちらの事例で設置されているのはMISAの電気ストーブ。MISAは何度か体験したことがありますが、小さな見た目とは裏腹にとてもパワフル。ロウリュ後のエレガントな音とともに、全身があっという間に蒸気で包まれます。

MISAの電気ストーブは泉興産が販売代理店をされており、サウナストーブに関する電気工事のプロフェッショナルとも言えるメーカーさんです。電気ストーブの値段は工事費含め50~60万円前後、詳細は要見積りになります。

MISAのほかに検討したい電気ストーブは、EX-PROの項でも導入されていたTYLOHEROがオススメです。こちらもMISAに負けじと優秀なストーブで、ストーブ単体の値段も30万円~と安価になります。同じく詳細は要見積り。

✔電気ストーブ導入の注意点
-欧州の電圧は概ね400V(ボルト)の電圧が通常基準であるのに対し、日本の電圧は100Vであることが殆どです。まずこの点を理解しましょう。
-日本の電圧は100Vが通常値ですが、電気ストーブ設置には最低200V以上の電圧が必要です。従って、どんな環境でもまず電気工事が必要になります。
-となると地元の電気業者の手配が必要ですが、サウナストーブそのものを触れたことのない電気業者が大半です。ここで導入までに矛盾が生じます。
-ゆえに電気ストーブの導入に関しては自身で判断しようとせず、必ず電気ストーブの販売業者もしくは専門家に提案を委ねましょう。

電気ストーブ導入のくだりに関しては、先月執筆したこちらの記事にもまとめておりますので、併せてご確認いただければと思います!

最後に

テントサウナは引き合いが数多くあり、かつ海外の流通状況に左右される市場であるため、日本国内では需要に対してのテントサウナの供給不足が顕著になりました。欲しい時にテントサウナが手に入らないのが今の現状です。

ただテントサウナ界隈の流れはとても早く、1年おきに新規の事業者が参入するような市場になっています。テントサウナは時代の流行り廃りに左右されうるものであり、来年また、大きく勢力図が変わっていると予測します。

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したがって、一個人としてはアンコントロールなことに躍起にならず、まずは利活用目的を明確にすることに努めていきましょう。目的が明確であればあるほどそれに応じたスタイルが、近いうちに必ず手に入るはずです。

テントサウナ導入相談でよくある例ですが、最初の1ヶ月使用したものの、その後押し入れで眠らせてしまう事例も数多く見てきました。せっかくの高価な買い物、まずは理想のテントサウナスタイルを想像してみませんか?


次回予告

今回は個人の目線に立ってnoteを執筆しましたが、次回は事業者向けのnoteをリリースします。こちらはまた違う切り口で執筆しますのでお楽しみに!

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