見出し画像

「子育て無理ゲー日本」から脱出できる? 高山村での子育てを考えてみる// 移住STORY10

「高山村ほど子育てにお金のかからない村はないよ〜」。
これは、高山村での子育てを終えたママの言葉です。この方は、東京で保育士をしていて、子育てをするために高山村を選び、移住しました。保育士という仕事柄、東京の子育て環境にはもちろん詳しいです。その上で、高山村を選んで移住してきたのだから、高山村には「子育てするのに良い条件」が確かにあるのでしょう。私自身も現在、1歳児を育てており、「高山村の子育て支援って、結構充実していない?」と感じる事が多々あります。その内容たるは、子育て支援が充実しているとして有名な兵庫県明石市の施策を越えると個人的には感じています。しかし、村が子育て環境のアピールをしている気配を感じません。なぜ? これは、もったいない。さらに、最近はこんな記事を目にしました。

子育てを取り巻く日本の経済的な環境が厳しいので、少子化なんか止まらないよね。という論調の記事。でも、私は思うのです。高山村という環境なら、私は2人目も3人目も前向きに考えられます(30代後半なので年齢的な難しさはあるものの)。日本のすべての自治体において、この記事でゆう「子育て罰」が当てはまるわけではありません。俗に言う「子育て無理ゲー日本」の中でも、小さな希望はある。そんな事が今回の記事で伝われば嬉しいです。

0歳から無料で保育所/こども園に入れる。所得制限もなし。

まず驚いたのは、高山村の保育所が完全無料なことです。親が働いていれば、生後8ヶ月から保育所に預けることができます。期間内に申し込みができれば、待機児童になることはなく、ほぼ100%入所できて、よくある所得制限はありません。しかも、保育所ではおやつと給食も食べさせてくれます。0歳から預けられるので、離乳食にも対応しています。おやつ代や給食費の徴収もありません(驚き!)さらに、最近話題になった「紙おむつの保護者持ち帰り」も廃止されていますよ!
保育所は0歳から2歳までが対象の施設で、高山村の保健センターの下にあります。園庭は、とても広いです! 東京に住んでいる時に見ていた保育施設と比べたら、田舎のため当然ですが、恵まれた環境です。車がびゅんびゅん走る国道の歩道でお散歩することもありません。虫や木や植物に囲まれています。
3歳から5歳まではこども園に移ります。保育所の隣にある施設で、畑なんかもあります。こちらも保育所と同じく、無料。働く親にとってはとてもありがたい環境かと思います。

子どもを産むと、20万円以上のお祝い金がもらえる

最近、国が新生児1人あたり10万円分のクーポンを配布するというニュースが話題になりました。「お金を貰えるなら産む」という思考はあり得ないと思いますが、貰えても貰えなくても、どちらにせよ産みたいという私のようなタイプにとっては、お祝い金は嬉しいものです。高山村では独自の出産お祝い金制度があります。
第1子には20万円、第2子には30万円、第3子以降は1人当たり50万円がもらえます。この額、一桁間違ってるわけではありません。実際、高山村の議会でも問題になるほど高額なのです。(以前の議会便りで、お祝い金制度の額が問題になっているのを読みました)高山村、頑張ってくれています。もし3人の子どもを持ったなら、合計100万円。4人なら150万円。長い子育てにかかる合計費用を賄えるものではありませんが、細々とした育児グッズを揃えたり、大変な出産を乗り越えたご褒美を得るのには十分な額です。

おむつ代が補助される

これは地味ですが、結構嬉しい制度です。毎日使う、赤ちゃんのおむつ代に対して毎月3000円の補助があります。毎月3000円ということは、高級おむつを使わない限りはおむつ代の90%くらいが補助されます。安めのおむつを選択すれば、ほぼおむつ台がチャラになると考えても良いのではないのでしょうか。毎月、必ず必要になる固定費の部分に補助があると、嬉しいですね。年間に換算すると、36,000円になります。おむつ代補助は、赤ちゃんが一歳になると終了します。我が家も今は自腹になっていますが、1年間ありがとうございました、という気持ちでいっぱいです。

中学2年生の希望者全員、オーストラリアに行ける

高山村の中学校では、「海外派遣事業」というかたちで、中学2年生の生徒が7日間、オーストラリアに滞在することができます。しかも、希望者全員が参加できます。英語の成績が良い子のみとか、選抜があるわけではなく「希望者全員」というのが、とてもとても公平で良い制度だと思います。この時期の海外体験は、何にも変え難い経験になるはずです。
海外派遣に向けて、高山村では英語教育にも力を入れています。村内の英語が堪能な方々が、小学生と中学生に向けて土曜日・月曜日に英語レッスンを開催しており、受講はもちろん無料。私もボランティアで小学生の英語クラスに参加しています。(英語が堪能ではないので、補佐役ですが……。)レッスンを受けている生徒を見ていると、学校の授業とは異なる場所、異なる先生、異なる雰囲気、異なる方法で英語に触れることができる機会を楽しんでいるように感じます。

小中学生の給食費、無償。医療費は中学生まで無料。

小学生と中学生の給食費はどうなっているのか、ここらへんを高山村の教育委員会に問い合わせしてみました。すると、なんと!「今年から村の全額負担になり、保護者負担はゼロ円です」とのこと。手厚すぎて感涙です。医療費については中学生までが無料。ただ、他の自治体では高校生まで無料というところも最近は出てきました。高山村もゆくゆく、そんなふうになる可能性もあります。

高山村にない制度:病児保育、ファミリーサポート制度


ここまで高山村に整備されている制度を紹介しましたが、他の自治体にはあって、高山村にない制度もあります。それが、病児保育とファミリーサポート制度。赤ちゃん時代は風邪や熱など、何かと体調を崩すのが常。その際、保育所に預けられないと、親の方は仕事がままなりません。病児保育があると、長引く赤ちゃんの「ちょっとの不調」の時期にも預ける事ができて、助かるのではと想像します。
ファミリーサポート制度も同様です。近所の方が子ども見てくれる制度ですが、あったらいいなぁと何度思ったことか。特に、自分の体調が悪くなって起きているのすらしんどい時など、頼れる人がいたら……と感じるのです。「いつでも頼っていいよ」と言ってくれる近所の人はいるのですが、実際にはお願いしづらいので、この制度があると助けになります。

番外編:村外からも子どもが集まる道の駅の公園


高山村の周囲にはみなかみ町や、中之条町、沼田市、渋川市があります。そんな、村外の子育て世代がわざわざ遊びに来るスポットが高山村にあるのです。それが、道の駅の横にある公園「高山ふれあいパーク」。
4種類の滑り台やターザンロープなど、キッズが大喜びする遊具がたくさんあり、とても綺麗に管理されています。子連れの友達が来た時に案内するとみんな喜んでくれて、評判は上々。まだ自分の子は連れていってないのですが、そろそろデビューさせようかな。

高山村での子育てまとめ


都心に比べると家賃は1/4程度で、生活費も下がります。子育ても高校生になるまでほとんどお金がかからず、経済的な負担が非常に少ない高山村。出産お祝いや保育所/こども園無料、オーストラリア派遣など嬉しい制度も整っています。加えて、都心と違って屋内でも屋外でも物理的なスペースが広く、子ども達は走り回りながら存分に体を動かせます。狭い部屋でテレビやゲームに夢中になるよりも、豊かな自然の中で、楽しい遊びがたくさんできます。田植えや稲刈り、野菜や果物の収穫も季節ごとに体験できます。私個人としては、そういう子育てがしたくて、ここに移住しました。なので、「子育て無理ゲー日本」からは脱出できたと今のところ、感じています。(子育ては、まだまだこれからですが)

画像2


しかしながら、理想の子育てに関しては価値観が様々。例えば、小学校や中学校のお受験をさせたいという友人は、東京では多かったです。お受験専用の塾も高山村にはないですし、お受験できる学校もないので、ここでは難しいです。多種多様な習い事を選択できる環境もありません。珍しい教育法の幼稚園や小学校に通わせるのも難しいです。外部の教育サービスを利用して子どもに教育を与えるのは、なかなか難しいのです。
そのため、私自身は家庭内でできるだけ教育機会を与えたいと、試行錯誤中です。偏差値の高い学校や、塾や習い事に通わせるだけが教育ではないはず。どこで、何を学ぶのが、その子にとって豊かな教育なのでしょうか。もしかしたら、自然豊かな環境の方が、豊かな教育になるかもしれない……そこらへんは、私の研究対象であるアーミッシュから、学びとっていきたいと思っています。
これから本当の意味で「子育て無理ゲー日本」から脱出できるかどうかは、自身の価値基準に合う子育てのイメージを具体的に抱いて、それを実現できるかどうか、かと思います。自治体が整えてくれている制度には感謝をして、存分に利用しますが、それはあくまで要素の一つ。自分の力で切り開き、整えていく部分の方がずっと大きそうです。私も我が子と一緒に考えながら、悩みながら、苦労しながら自分なりの「子育て道」を築いていきたいと思います。「子育て無理ゲー日本」でも、あきらめないぞ!

画像1


山中麻葉 Maha Yamanaka
1984年生まれ。30歳を機にサラリーマン生活に終止符を打ち、ワンピースのオーダーメードのお店を起業。
2021年夏、群馬県高山村に、夫と娘と移住。夢は、小さなアーミッシュ村をつくること。
Down to Earth アーミッシュワンピースのお店
> instagram @shop_down_to_earth
著書「アーミッシュカントリーの美しい暮らし」
【お知らせ】
2022年は全国でアーミッシュワンピースの展示販売会を開催します。ワンピースを試着して、その場でオーダーが可能です。ぜひご来場ください。
● 群馬県高山村
10月30日(日)群馬県高山村「カエルトープ」アーミッシュワンピースとマコモダケのランチ
◯Down to Earth アーミッシュワンピース展示販売会10:30~16:00
◯Rana’d’arcozzoo by MASHIMOマコモダケのパスタランチセット 11:00OPEN※数に限りがあり、なくなり次第終了となります。
会場:カエルトープ〒377-0701 群馬県吾妻郡高山村尻高107-1
● 熊本
11月12日(土)、13日(日)熊本県南阿蘇村 新OPEN予定のお宿「青い空と白い龍」
11:00~16:30
住所:阿蘇郡南阿蘇村1041-5(駐車スペースあり)
● 福岡
11月19日(土)、20日(日)福岡県糸島市「うみかえる」
11:00~16:30
住所:糸島市二丈深江2138-2(駐車スペースあり)

いいなと思ったら応援しよう!