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上腕三頭筋(Triceps brachii)
今回は肘を伸ばす、上腕三頭筋について。
以前上腕二頭筋については解説しております。
上腕三頭筋はその名の通り、3つの起始を持つ筋です。
長頭は2関節筋、内側頭と外側頭は単関節筋となるので、作用も多少変わってきます。
野球等のオーバーヘッドスポーツ、肩関節術後には特に重要となる筋ですので、しっかり整理していきましょう!
上腕三頭筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:
長頭:肩甲骨関節下結節
内側頭:上腕骨後面(橈骨神経溝より下方)
外側頭:上腕骨後面
停止:肘頭
支配神経:橈骨神経C6~8
作用:肘関節の伸展
肩関節の伸展・内転(長頭)
(基礎運動学第6版)
起始:
長頭:肩甲骨関節下結節
内側頭:上腕骨後面と両側の筋間中隔
外側頭:上腕骨後面で橈骨神経溝の上方
停止:肘頭
支配神経:橈骨神経C6~8
作用:肘関節の伸展
(内側頭が先に働き、十分に伸ばすときには外側頭と長頭が働く)
補助的な肩関節の内転(長頭)
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:
長頭:肩甲骨関節下結節
内側頭:上腕骨後面橈骨神経溝の遠位・内側
外側頭:上腕骨後面橈骨神経溝の近位・外側
停止:肘頭、前腕の内外側筋膜
内側頭は肘関節の関節包後面と線維結合あり
支配神経:橈骨神経C6~8
作用:肘関節の伸展
肩関節の伸展・内転(長頭)は十分に立証されてはいない
(オーチスのキネシオロジー第2版)
まずは三頭の起始を整理しておきましょう。
内側頭が最も大きく、肘屈曲位からの伸展に強く作用します。
さらに内側頭は肘関節の関節包にも付着するため、
伸展制限がある場合や肘の術後などには注意して評価する必要があります。
長頭は肩甲骨にも付着するので肩甲骨のアライメントや肩関節の運動にも関与してきます。
筋機能
橈骨に付着する上腕二頭筋とは違い、
尺骨に付着する上腕三頭筋は前腕の回内外には関与せず、肢位の影響も受けません。(研究上は)
肘の伸展作用があり、肘屈曲70~90°で最も大きい伸展筋力が発揮されます。
長頭の肩関節伸展作用については、筋電図的に明確にした報告が少なく、
さらなる研究が必要な現状です。
上腕三頭筋の筋力低下は肘伸展筋力の明らかな低下を示します。
これは、他の肘伸展筋群がすべて補助的な働きしか持たないことに由来します。
そのため、C6の頚髄損傷患者においては上腕三頭筋の収縮が不可能であり、
座位で姿勢を支えたり、車いすを漕ぐ動作ができなくなります。
しかし実際には肘を伸展位で他動的に固定することで上記の動作を行うことができるようです。
スポーツにおいては、投球動作を必要とする競技の選手で上腕三頭筋の短縮は比較的起こりやすいです。
腋窩部の小・大円筋や広背筋とともにストレッチをよく指導します。
また、肘関節伸展時に後方でつまり感がある場合には関節包のインピンジメントが起こっていることもあります。
橈骨や尺骨のアライメント不良や、
関節包に付着を持つ内側頭の収縮不全などが背景にあることが多いので、丁寧に評価しておきましょう。
筋膜連結
筋膜としては、ディープ・バック・アーム・ライン(DBAL)に含まれます。
菱形筋・肩甲挙筋⇒肩回旋筋腱板⇒上腕三頭筋⇒尺骨骨膜に沿った筋膜
⇒尺骨側副靱帯⇒小指球筋
小指球から肩甲骨内側へ続くラインです。
これは臨床的にもかなり実感と一致しますね。
肩甲骨のアライメント不良や肩の痛みがある場合には、
小指球に硬さがあったり、前腕の硬さがあることが多いです。
上腕三頭筋をゆるめたいときには、肩甲骨や小指球をチェックしてみてください。
経絡
経絡としては小腸経がDBALと似た経路を通ります。
小指から前腕の外側、肘の後ろを通って肩に続きます。
筋膜や経絡をたどると、
問題の原因となっているポイントが見つかることがあります。
もちろん小腸や腹部臓器の硬さをチェックしたり、
食事の内容などを見直すきっかけにしてもらうことも必要ですね。
上腕三頭筋の周辺組織
(Visible bodyから引用)
上腕三頭筋を治療対象にする場合には、この周辺組織の理解は非常に重要です。
上図のように、上腕三頭筋長頭が小円筋と大円筋の間を走行し、
腋窩神経もQLS(Quadri lateral space)から出てきます。
また、図では三角筋が上にかぶっているので、上腕三頭筋と三角筋間の滑走不全もよく問題となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
上腕三頭筋は肘を伸ばすだけではなく、周辺組織や筋膜連結、経絡によるつながりが多い筋です。
ただ肘を伸ばすという認識でなく、周りの組織との関係性からしっかりと理解を深めていきましょう!
それではまた次回!
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