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長母趾屈筋(Flexor Hallucis Longus)
さて今回は、長母趾屈筋(FHL)について。
だんだんマニアックな筋になってきました。
長母趾屈筋はその名の通り、足の親指を曲げる筋です。
しかしその走行は下腿の後面から起こり、周囲の筋や関節の関係において足関節背屈時の制限にもなるなど臨床的にも重要な筋の1つです。
しっかり整理しておきましょう!
長母趾屈筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:腓骨後面
停止:母趾末節骨底
支配神経:脛骨神経L5~S2
作用:母趾の底屈、足の底屈・内返し
(基礎運動学第6版)
起始:腓骨体後面、後下腿筋間中隔
停止:母趾末節骨底
支配神経:脛骨神経L5~S2
作用:母趾の底屈、足の底屈・内返し
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:腓骨後面の遠位2/3、隣接する骨間膜、後脛骨筋の筋膜
停止:母趾末節骨底の足底面
支配神経:脛骨神経L5~S2
作用:母趾のMP・IP屈曲、足関節底屈、足部回外
(オーチスのキネシオロジー第2版)
母趾を屈曲し、足関節を底屈させることが主な作用であることは一致していますね。
また腓骨に起始部を持つ、外在筋であることもポイントの1つです。
距骨の後方を通るため、滑走性が低下することで距骨の後方滑りを阻害し、背屈制限となることも臨床上よく遭遇します。
筋機能
長母趾屈筋は、母趾の主要な屈筋であり唯一のIP関節の屈曲筋でもあります。
そのためMMTで母趾IP関節屈曲筋力を評価することで、長母趾屈筋単独の筋力低下を評価することもできます。
また、大きな足関節底屈モーメントを持ち、長趾屈筋や後脛骨筋よりも底屈への貢献度は大きいと報告されています。
足関節底屈は腓腹筋やヒラメ筋が主動作筋ですが、アキレス腱断裂患者における患側、健側ともにヒラメ筋よりも長母趾屈筋が大きな活動を示したという報告もあり、アキレス腱へのストレスが大きい足関節底屈の運動戦略にも関係があることが示唆されています。
(具体的な関係性についてはまだわかっていないことが多いようです)
実際にヒールレイズ(踵上げ)などで母趾を含めた足趾の屈曲が過剰に起こってしまう選手は、アキレス腱炎や足底腱膜炎の治療においてよく遭遇しますね。
過剰な収縮が足関節底屈を代償する一方、筋力低下が起こっていることもあります。
筋力低下は、足関節捻挫や下肢の骨折等で固定を行った後に起こりやすいです。
その他には後方重心でいつも踵側に荷重が乗っていて浮指傾向にある選手でも筋力低下が起こっていることがあります。
筋力低下が起こると歩行ではフォアフットロッカー機能が低下してバランスを崩しやすくなります。
また、長母趾屈筋の短縮によってもフォアフットロッカーで母趾IPの屈曲が起こり、安定性が低下することがあります。
槌指変形との関連も指摘されています。
さらに内側縦アーチの疼痛と長母趾屈筋の短縮との関連を示唆されています。
ランナーにおいては、踏み切りでの反復される伸張ストレスによって長母趾屈筋の走行に沿った疼痛を生じている可能性があります。
筋膜連結
筋膜としてはディープ・フロント・ライン(DFL)に含まれます。
後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋⇒膝窩筋⇒内転筋群⇒(中略)
DFLは後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋が遠位に付着する足底深層から起始しています。
そのため、ショパール関節、リスフラン関節など足部のアライメントも丁寧に評価する必要があります。
また、長母趾屈筋を含めた足底の筋群の短縮や滑走不全が股関節や体幹に影響を与える可能性があることも押さえておきましょう。
経絡
経絡としてはDFLとの関連があると考えられている腎経をチェックしてみましょう。
腎経については大腰筋で解説しているので、そちらもぜひご参照ください。
長母趾屈筋の周辺組織
長母趾屈筋は足底では腱として走行し、下腿後面になると筋腹が大きくなり、腓骨に付着します。
下腿遠位部でアキレス腱の深層で交差するように走行し、アキレス腱との間には脂肪体が存在しています。
また後脛骨動静脈、脛骨神経も並行に走行しているので、リリースなどで触診するときは圧迫などで組織をつぶさないように注意が必要です。
アキレス腱周囲はテーピングをよくする選手や、捻挫の後遺症などで皮膚や皮下組織が硬くなることも少なくありません。
そのような場合は高確率で長母趾屈筋も短縮やスパズムを起こしています。
まずはしっかり評価して、必要に応じて下腿後面の筋や神経、血管を触り分けられるようにしていきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
少しマニアックですが、足関節をみる上で非常に重要な、
長母趾屈筋についてでした。
あまりみれてなかったなー、という方はぜひ臨床で活かしてみてくださいね!
それではまた来週!
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