TOO FAST TO LIVE,TOO YOUNG TO DIE #8
※この物語はファンタジーを含んでいます
理解された方のみ読み進めて下さい
「やべっ!寝過ぎたー」
若者はよく寝るそう簡単には起きれない
そんなもんだ
それだけ体力がある証拠
寝起きでサッと用意してすぐ家を出れる
若者に女子力なんていらない
今思うと羨ましい限りだ
「ギリ写真屋には寄れるかな?」
CD50(原チャリ)に跨りキックでエンジンをかけた
無事に写真を受け取りスタジオにも間に合った
リハでは無心に歌うだけ
今でも一番好きなのは歌うことかもしれない
だが長年による喫煙習慣や口腔内手術での失敗による後遺症で声が出なかったり上手く口が動かせなかったりで頭で描く歌は歌えなくなってしまった
もちろんこの頃の様に無心で歌えばある程度は元に戻るのだろうが、、、
だが鼻歌は今でも延々と歌っている
やはり好きなのだろう
歌う事、オシャレをする事、ロックを聴く事、プロレスを観る事
好きなモノに対して一途なのか只々成長してないのかこの頃からずっと変わってはいない
リハからのミーティング
それが終わって家に着いたのは22時を回ろうとしていた頃だろうか
ひと息つきシャワーでも浴びようかと思ったところだった
電話が鳴った
この頃一般的にも携帯電話が普及し始めてはいたがまだまだ料金も高く、後はそんなもんに縛られるなんてロックじゃねーぜ!というこだわりから家に電話を引いてるだけだった
電話の主は上田くんだった
「どしたん?めちゃ久しぶりやん元気してるー?」
久々の地元の友人からの電話に声のトーンも上がった
「え、あ、うん、元気やで、、、すがぴょんはバンドええ感じなん?」
「がんばってはいるけどやっぱなかなか難しいよねー。上田くんもええ感じでやってんねやろ?」
「あ、そやなまあまあ好調かなー、、、うん」
何か歯切れが悪い
普段の上田くんは快活な話し方で喋りも上手い
何か話しづらいことでもあるのだろうか?
少し沈黙があったが意を決したのか上田くんが話始めた
「あんな、昨日ドリチンが家に来てんかぁ、、、」
「お、おん」
いつもならドリチンの名前が出てきて嬉しくて「あいつ元気にしてん?」と言葉が続いていたはずだが少しトーンの下がった上田くんの声にそんな言葉を呑み込んでしまった
「、、、TAKAKIな、、、死んだんやって、、、」
「え?!」
頭の中が真っ白とかそういうことでもなく上田くんが何を言ってるのかが全くわからなかった
「、、、もう1ヶ月くらい前くらいの話らしくて、、アイツ東京でメンバー探しながら現場仕事してたらしいねんけど、、高いとこから落ちてもうたんやって、、、」
話声だけで上田くんの落胆した様子が窺い知れた
「ほんで葬式とかもやっぱそういう感じで亡くなってもうたから損傷もかなりあったみたいやし、、おばちゃんもやっぱショックもデカいし、、ほんとの身内だけでやらはったみたいやわ、、、」
「、、、そうなんやぁ、、、」
事実を受け止めるというより只々、受話器から聞こえる言葉の羅列を頭に入れているような感覚だった
お互い無言が少し続いたが
「、、んー、まぁ一緒にプロレスとかも行ってたし、そっち行ったメンバーの中やったらすがぴょんがアイツと一番仲良かったし一応耳に入れとこうと思て、、、」
「、、せやなぁ、、なんか、、、まぁでもありがとうね」
「、、うん、まぁ元気でがんばってや」
「、、そっちもがんばってな」
「わかった、じゃあ、、また」
「うん、ほなまた」
電話を切った
まだよく理解していない
仲は良かったとは思うが溜まり場や深夜のファミレス、ライブハウスでみんなで遊んでいたので二人だけで遊んだのは3回だけだと思うその内の2回は長々と語ったように全女の観戦だった
そしてその普通に遊んだ夏の日が思い出されていた、、、
続く