054 野球部とは眩しいものですね
野球部が県大会で初勝利を挙げた翌日、校内は野球部員に対するお祝いムードが流れていた。
それは前日、僕が県大会で準優勝した日のことだった。
「僕の方が凄いんだぜ。」
そう言いかけたけど、こちらは自転車競技部。
部活カーストで言えば、ホッケー部や相撲部あたりに続く三軍。
囲碁部とさして変わらない、そんな位置にいる。
野球部の控えキャッチャーであるTに「おめでとう」と伝えると「ゆうじも頑張ったんじゃろ?お疲れさん」と、どこかカースト最上位の余裕をもって、労をねぎらわれた。
控えのくせに。
心のどこかで毒づきながら「ありがとう」と笑顔で答えた。
Tとはそれ以上会話を広げることもなく、まるで逃げるように窓の外へ視線を移した。
そこには庭で揺れる、背の高いヤシの木がいた。
誰もがハワイを連想するあの大きな木。
ひょろひょろとしているのに、どれだけ風が吹いても倒れない不思議な木。
ヤシの木だろうと思いつつ、ヤシの実をみたことがないあの木。
記憶にはあるけど、だれも名前を知らないこの木の名前は「ワシントンヤシ」と言うらしい。
アメリカに自生していたことからジョージワシントンの名を取って命名されたというその木は、昔から誰もが見慣れた木であるはずなのに、どこか日本に馴染みきれていないような気がする。
大きく目立つのに、名前すら覚えてもらえない、そんなワシントンヤシに自分を重ねながら、その日僕は、強風すらもいなせる男になりたいと思った。
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-もの-
ほぼ日のアースボール
誕生日プレゼントに影響を受けている後輩に貰った地球儀。
一見普通の地球儀だけど、ARを使って様々な形に姿を変えることができる。
今の地球の姿を見たり、国々の特徴をしらべたり、月にする事だってできる。みんなの求める地球に変わるこの地球儀は、どこか僕たちが目指す未来のような気がする。それぞれにとってのははちょうどいい地球へ。
ところでWBC楽しいな。やっぱり見るなら野球だよね。
(カバー写真:ハワイのどこか街角)
-おまけ-