映画「あるく小鳥」の音楽に寄せて
あるく小鳥という映画に、音楽を書いた。
僕と同い年でもある監督の岩田くんとは、もう10年以上の付き合いになる。
彼の映画に音楽を乗せたのはこれが二度目で、最初はまだ僕らが20代半ばの頃だった。
まだ何者でもなかったあの頃から(別に今もか?)、10年経った今もお互いが映像と音楽の世界に居座り、またこうして一緒に仕事ができるということがとても嬉しい。
そして当たり前だけど当時よりも納得のいく仕事ができて、この10年、曲がりなりにも自分が積み重ねてきたものは確かにあったんだと知ることができた。
最初の映画の時は、制作スケジュールも厳しかったので、映像が出来上がる前にいくつか曲を作って送り、その中から彼が気に入ったものを選んで使う、という形だった。
だから映像を見ながら曲を作るのは実は今回が初めての経験で、それがすごく新鮮で楽しかった。
美しい琵琶湖の映像を見ながらピアノを弾いていたら本編オープニングのメロディができ、2人の少女の歩み(あるく小鳥)をイメージして、掛け合いのフレーズを足した。
その曲はWalk(そのまま。笑)と命名した。
僕は当時から彼の撮る自転車が好きだったが、今回もやはりそのフェティシズムは存分に発揮されている。
予告編冒頭に使われているシーンでも、自動車のシートベルトと同じように、普通ならコンプライアンスが前景化してしまうヘルメットの装着シーンが、彼が撮るとどこか神聖な作業のように見える。
走り出したあと、自転車のアップから少しずつ漕ぎ手に向かうカメラもいい。
そこに添えた音楽にはRollと名付けた。
僕は道を歩いていても、制服を着た中学生が走っているだけで涙腺に来てしまうタイプの人間なのだが、今回の仕事でその訳が少しだけわかった気がする。
あまりにもありきたりすぎて恐縮なのだが、それは、彼らには未来があるからだ。
まだ何色にも染まっていない未来に向かって走っている気がするからだ。
いいこともわるいこともきっと待ってる。
でも当人はそれを知る由もなく、ただ今だけを駆け抜ける。
それが抗いようも無いほどに眩しい。
そんな安易になりがちなテーマを彼は繊細に、丁寧にキャプチャーしている。
自分の音楽がその一助になっていたら嬉しい。
ぜひご覧ください。
本編
https://youtu.be/KijkmIUFmzE?si=cyymWHe0hwZ_fSpQ
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